クリエイターの気持ちに沿った製作が重要!

 今回は、8月4日に開催された富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社主催の「拡大する『推し活市場』をビジネスチャンスに!」をテーマに行われたオンラインセミナーで、まるみ株式会社 代表取締役の倉又美樹氏が講演した内容を紹介する。倉又氏自身もクリエイターとして推し活グッズを製作しており、その立場からファンが実際に価値を感じる表現・仕様・加工について解説するとともに、推し活グッズづくりのポイントとして世界観の再現、質感、SNS映え、限定性などが大切だと話す。また、クリエイターは感情を起点に活動しているとし、クリエイターの気持ちに寄り添った製作が重要だと語った。

レクチャーズ・ルーム 81

まるみ株式会社 代表取締役
倉又 美樹 氏(講師)

 まるみ株式会社は、推し活市場に寄り添う形で、紙で体験する企画・デザイン・製作を手掛けている会社である。倉又氏は、印刷物やグッズを発注する側の立場から、推し活はなぜものづくりを生むのか、発注者は仕様をどう選ぶのかに焦点を絞って解説した。
 クリエイターがものづくりを始める瞬間は、感情が起点になるという。「推し活とは『感情駆動開発』と考えています。推しのことが好きだからもっと知りたいと考え、意味を与えて手元に残る形にしたいという感情になります。さらに誰かと共有したいと思うようになり、本、グッズ、イベント、コミュニティという市場が生まれるのです」と述べ、感情が商品を生み、共有が市場を育てると説く。
 推し活市場については、「所有するモノだけでなく、体験を可視化するものに移行しています。つまり、持ち歩く、撮る、組み合わせる、記憶を残すという体験によって、他者に見せたい、自分の感情を貸し出したいとなっています」と、実態を話す。完成品そのものだけでなく、「使う」「撮る」「共有する」ところまでが商品体験になっているというのだ。
 同社では、透明アクリルのチケット型キーホルダーを製作し、アート系のイベントで販売している。倉又氏は仕様が重要だとし、「推し活するクリエイターは最終的に体験にしたいわけです。消費者と制作者の垣根が低くなっており、特色印刷を分かっていないクリエイターもいます。そのため、クリエイターには、完成したモノを見せてほしいというニーズがあります」と、クリエイターの気持ちを代弁する。
 倉又氏の製作では、ホログラム・箔・PPを使うことを重要視しているとのこと。「これはSNSでの拡散を踏まえて、テンションが上がるような『撮りたくなる画』が欲しいという体験価値を求めているからである。クリエイターは完成されたモノがどのような体験価値をもたらすのかを見ており、仕様に価値を与えてほしいと考えている」と、クリエイターが望んでいることを指摘する。
 倉又氏は、製作の発注先を決める条件として、「価格が安いという点ではなく、表現したい世界観を再現できると確信できた会社に発注している」と、自身の発注先の決め手を述べる。
 完成品のイメージは、「使われる・撮られる・投稿される」状態から逆算するとし、世界観の再現の他に、質感の情報量・差別化、SNSでの見え方、限定品であるかどうかなどをチェックするという。
 クリエイターにとっては、データを渡した製作側が「データチェックを人が見て行うことで、不備に気づいたり、意図を汲んだり、確認の形で伝えてくれたりすることで、安心して任せることができます。信頼関係を醸成する営業接点になり得ます」ということで、このような対応がリピート発注に繋がると言う。
 また、「印刷会社は小ロットでも発注できる価格と条件を明確にしていただけると、クリエイターは検討のテーブルに載せやすいです。さらに、再発注し継続できる仕組みづくりも行い、一緒に仕様を作るという視点に立っていただきたいです。見本の相談やテストマーケティングの形で検討できるブランディング展開が可能となれば、クリエイターはその印刷会社に頼んでみたいと思うでしょう」と、選ばれるための方策を指摘する。
 最後に、「クリエイターは印刷そのものを買っているのではなく、感情が物質になる瞬間を買っています。印刷会社は、その感情を加工・翻訳できるような形で、クリエイターと一緒に作り、世界観を伴走していただける会社になっていただければと思います」と、締めくくった。

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