具体的な形に変えていくデザイン思考が重要!

今回は、2026年4月22日に開催された富士フイルムグラフィックソリューションズ株式会社(以後、FFGS)のオンラインセミナーで、株式会社H.Y.D.の代表取締役林雄三氏が「顧客の課題解決-期待を超える仕事・期待を超えるデザインとは」をテーマに話された内容を紹介する。セミナーはFFGS広報宣伝部の前田部長の進行で行われた。林社長は株式会社Kenmaを共同創業した後、香川県にUターン移住し株式会社H.Y.D.を設立。デザイナー視点で多業種のビジネス支援を行っている。案件では、デザイン思考で顧客の本質的な課題、潜在的なニーズを把握し、それを具体的な形にしているのが同社ビジネスの特徴だ。多くの印刷会社に参考となるテーマと言えよう。

レクチャーズ・ルーム 78
株式会社H.Y.D.代表取締役
林 雄三 氏(講師)
林氏は、企業の製品ブランディング、新規事業のデザインディレクション、新製品の開発など幅揃いデザインを手掛けているが、一級建築士でもあることから家や店舗の設計も行っており、他業種のビジネスをサポートしているのが特徴である。
これまで、GOOD DESIGN賞、東京ビジネスデザインアワード最優秀賞、IAUD国際デザインアワード銀賞、日本文具大賞機能部門優秀賞など数々の賞を受賞している。「先輩のデザイナー 今井裕平氏と設立した株式会社Kenmaでは、顧客のビジネスを意識してプロジェクトに取り組み、誰のために、何のためにつくるのかを考えて、顧客のためだけでなく、顧客を通して消費者や社会に貢献していくものをつくっていくことを意識しています。インパクトがあって、ブランディング視点でデザインを考えてつくるようにしています」というデザイン思考で取り組んでいる。
Kenmaで、機能性フィルムメーカーの株式会社コスモテックが開発したウェアラブルメモ『wemo』のデザインに携わった時は、同社のコア技術であるコーティング技術を活かして、看護師が手に直接メモをする習慣に目をつけ、ボールペンで繰り返し書いて消せる商品を開発した。「看護師さんたちの腕に巻いて、手や腕を汚さずに何度でも書けて消せるシリコン素材のリストバンド型をデザインしました」と、医療従事者や現場で仕事をしている人たちのことを考慮した商品をつくって好評を博している。
また、金属調に見える印刷技術を得意としている株式会社技光堂の樹脂素材「METALFACE」では、「当時、5G機器が普及し始めた頃、電波は金属と干渉してしまうため、携帯電話のボディ素材に金属が使用できないということで、光を通す金属調印刷を同社に提案しました」。金属が光を通しているように見える世界初のプロダクツとなった。5G時代の新素材というコンセプトで打ち出したところ、企業から問い合わせが増えたという。
また、株式会社H.Y.D.では高松市内の予備校の販促プロデュースを請け負った。予備校が配布していたチラシやパンフレットの表紙に、同予備校に実在する名物講師を前面に出した媒体をデザインした。林氏は「人気のあるカリスマ講師で呼び込むことにしました。また、この予備校では自信を持って『本気の1年』で進学させるという気概を持っていましたので、その気持ちを汲み取った媒体を制作しました」とのことで、実際に同校ではアクセス数や新規問い合わせが急増したという。
このように、顧客の課題や潜在的なニーズを把握して新たな提案をしているわけであるが、その際に顧客の技術に着目し独自のコンセプトを打ち出して、これまでになかったデザインを考えて、顧客に開発を促していくのである。そして、期待を超えるデザイン・仕事をしていくことで顧客の売上だけでなく、社会に対しても貢献していくという点が、林氏のデザイン思考となっている。
「どんな案件でも、これまでと違う価値をつくることは難しいことですが、価値を高めるためには『価値をひらめく』ことが大切だと思っています。ひらめきは、『それ』に集中していない時に生まれやすいものです。ふとした時に浮かんだアイデアを見逃さないようにすることが大切です。次に『かた』が必要だと考えます。その際に、ペルソナではなく実際の顧客からデザインしていきます。そして『かたち』で価値を形にしていきます。そのためには、センスを習得していくことが求められます。リサーチしていくことが苦にならない状況をつくることができるようになれば、センスは習得できる技術であると考えています」と、価値をつくるために必要な要素を説いた。
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