最新技術が集結した「CONTENTTOKYO2026」をレポート

印刷会社が注目すべきコンテンツ制作・運用の潮流とは

印刷会社が注目すべきコンテンツ制作・運用の潮流とは

コンテンツビジネスを支える大規模国際総合展「第19回 CONTENT TOKYO」が、6月17日(水)~19日(金)の3日間、東京ビッグサイト(西展示棟)で開催された。同展は、「第19回 ライセンシングジャパン」「第18回 クリエイターEXPO」「第17回 映像・CG制作展」「第15回 広告クリエイティブ・マーケティングEXPO」「第15回 コミュニケーションデザインEXPO」「第2回 イマーシブテクノロジーEXPO」「第1回 ファンコミュニティマーケティングEXPO(初開催)」と特設エリアの「CONTENT Hub」から構成されており、1,100社余りが出展するコンテンツビジネスのあらゆる要素が一堂に会する日本最大級の国際総合展である。今回、コミュニケーションデザインEXPOと広告クリエイティブ・マーケティングEXPOの特徴を述べつつ、印刷会社と関係性がありそうな、またビジネスのヒントになると思われる出展内容をいくつかピックアップして紹介する。

「誰に・何を・どのように伝えるか」が重要

 第15回コミュニケーションデザインEXPOは、ブランディングやデザイン、プロモーションの最新ソリューションが集結した印象があった。出展している会社は、企業や商品のブランド価値向上、顧客体験(CX)の設計など、伝え方のプロフェッショナルという立場でPRしていた。例えば、DTP制作、Web制作を展開する株式会社アドバンプレスは、顧客のターゲットに応じた効果的な伝達手段を追求し、成果に繋げていこうという経営方針が見て取れた。この動きはDTP制作を主体にしているGCJの組合員には参考になると言えるだろう。
 アピールしたのは、オリジナルキャラクターのラフ案1体やWebサイトのデザインカンプをそれぞれ無料で作成する(共に先着10社限定)キャンペーンである。同社では、新規顧客を増やしていくには自社の優れたデザインに注目してもらう必要があるとし、無料で作成するという営業戦略を打ち出していた。
 「豊富な経験と実績を持ったスタッフのデザイン力を知ってもらうことが大事だと考え、無料で作成するキャンペーンを始めました。いわゆるきっかけづくりが必要だと思ったのです。そこから確固たるビジネスに繋がればと考えています」(明欣彦社長)とのこと。人と人との繋がりを大切にする顧客エンゲージメントで顧客第一主義を理念にしている。この“損して徳を取れ”という考え方は、長期的な視野に立った顧客との信頼関係を築く上で、印刷会社にとっても1つの営業戦略になるかもしれない。
 その他のデザイン制作会社では、「コトバとデザイン」に注力している広告制作会社の株式会社アイムは、AI制作が主流になりつつある今日、あえてAIに頼らない心のこもったコピーやアイデアを提案しているとのことだ。
 「経験豊富なデザイナーとコピーライターが在籍しています。唯一無二のキャッチコピーを考え、お客様の媒体を引き立てる最適なデザインを制作し、CIやブランディングをさせていただいています」(担当者)とのことだ。
 同じくデザインに注力している株式会社そうさすでは、ロゴ、Web、印刷物、コンテンツ制作まで一貫対応でブランディングを展開している。同社の特徴は、日本語の言葉と文字を大切にした設計にある。明朝体や縦組・横組、余白や構成といった日本語タイポグラフィの知見を生かし、上質で信頼感のあるブランド表現をつくっている。特に、教育、医療、工業など信頼性が重視される分野を中心に、内容が正しく伝わるデザイン制作が強みになっている。
 これらのデザイン会社に共通していることは、顧客の広告・販促媒体を手掛けるに当たって、「誰に・何を・どのように伝えるか」という点を重要視していることだ。そして、すべてのコンテンツ制作を請け負って顧客をブランディングすることを目指している点が窺える。
 クリエイティブと科学の両面からコンテンツ制作を手掛けている株式会社アートフリークは、自社開発のデータ解析ツール「おもたす」を活用し、展示会やイベントの成果を可視化し、来場者の動きや関心を数値化。それをもとに最適化された空間・演出を、自社工場を含むワンストップ体制で形にするというものだ。営業から企画・デザイン・コンテンツ制作・木工製作・現場運営まで、すべての工程を一気通貫で対応していた。
 高島屋グループの総合広告会社である株式会社エー・ティー・エーは、その実績を活かしてデザイン・撮影、企画からコンテンツ制作、サイトアップから解析・運用・マーケティングまでフルサポートで請け負うことを訴求していた。百貨店で培ったノウハウで顧客のビジネスをサポートする手法は優位性があるといえよう。
 毛並みが異なる出展では、株式会社東具の「ギフトゥール」である。IP・キャラクター・施設の世界観を親子で遊べるリアルイベントへ展開。今回、親子で“見つける・探す・驚く”新しい発見型コンテンツを初公開した。メイン展示のギフトゥール『チャレンジミュージアム』は、子どもが挑戦し、親が応援し、親子で楽しめるリアルイベント。「もっと驚かせたい、もっと喜ばせたい、という気持ちで他社にないアイデアと型にはまらない遊び心のある企画・制作で取り組んでいます」(ギフトゥール事業部体験統括プロデューサー)とのことだ。
 商業施設や地域イベントでの運営、イベントキットのレンタルに加え、IP・キャラクター・企業ブランド・水族館・博物館などの世界観と組み合わせたオリジナル企画・制作にも対応している。デジタルが当たり前になった今日、あえてこのようなアナログ体験型を選ぶ動きが広がりつつあるのかもしれない。印刷業界もアナログの体験型コンテンツの企画を模索してみてはどうであろう。
 映像制作で多くの実績を持つ株式会社エレファントストーンは、「象る、磨く、輝かせる。」をコーポレートスローガンに掲げて映像制作を手掛けている会社。ただ良い映像をつくるだけではなく、潜められた真の魅力にフォーカスを当てて一緒に磨き、世の中に向けて広めていきたい。この想いを軸に広告映像、ブランディングムービー、採用動画、観光映像等、お客様のパートナーとして多種多様な想いに寄り添った映像制作を実現している。
 専任プロデューサーを配置し、低価格からサービス重視といったあらゆる要望・課題に応えられる体制を構築しているのが特長である。

「制作受託」から「マーケティング支援」へ

 広告効果の最大化に繋がるクリエイティブサービス企業が集結した展示会の広告クリエイティブ・マーケティングEXPOは、生成AIを活用した最新の広告手法やコンテンツ制作、SNSマーケティング支援、広告運用代行などを展開する企業が集まっていた印象だ。
 単なる制作会社ではなく、SNS運用、コンテンツマーケティング、効果測定まで提供する企業が多いように思えた。注目を集めていたのは、生成AIを活用して画像や動画、テキストなどを効率的かつ高品質に生成するサービスである。広告代理店や制作会社を中心に、AIによる作業効率化だけでなく、これまでにないクリエイティブ手法としての活用法が多数提案された。
 印刷会社からの出展はほとんどなかったものの、デザイン制作・DTP会社の出展はあり、コンテンツ企画、SNS運用支援、Web解析まで含めた提案を行っていたのが目についた。
 また、企業PR動画、採用動画、ブランディング動画、AI動画活用などを提案する出展企業も目立った。例えば、会社案内冊子、採用サイト、採用動画をセット販売するモデルが提案されていて、今後は複数のコンテンツをセットで企画・提案していく営業が不可欠になっていくのではないだろうか。
 小規模印刷会社にとっては、動画制作は門外漢なところがあるため、そのような動画制作会社と接点を持ちコラボレーションするのもよいだろう。動画制作を行っている出展社に尋ねると、印刷会社とのコラボは十分考えられるとのことで、印刷会社から業務提携を持ち掛けてみる価値はあるが、印刷会社としては既存顧客に営業をかけて動画を必要とする場合は、動画制作会社の主導で進めていくというスタイルが望ましいかもしれない。内製化したいところであるが、リソースやコストの問題を考えると、棲み分けたほうがよいと言えるだろう。
 インターネット広告を提供する広告代理店も増えており、いわゆるデジタルマーケティング展開であるが、株式会社グローバルマーケティングは、同社独自の広告配信プラットフォーム「Info’z DSP」の運用・販売を行っていた。顧客は多種多様な業種にわたっており、人材会社や不動産業界だけでなく、大学や官公庁等の行政・自治体などとも取引している。中間マージンを削減することで、顧客の手数料を大幅に抑えて低コストでの配信を行っているのが特徴だ。
 印刷会社が同社のような広告配信プラットフォームを構築し運用するのは、リソースを考えるとかなり難しいが、地域密着型や特定業界向けの小規模なものであれば不可能ではないだろう。地元企業や不動産会社、医療機関、学習塾、観光事業者に向けて提案営業をすれば、広告配信プラットフォームの運営が可能かもしれない。まずは小規模な運用からスタートするのがよいだろう。広告主を集める営業力が問われるが、普段から訪問営業をしている印刷会社であれば、長期的視野に立って取り組んでみる価値はあるのではないだろうか。
 デザイン・広告制作業とは全く毛並みが異なる事業としては、フロンティア株式会社が紹介していた企業と企業をつなぐビジネスマッチングエージェントサービス『レディクル』がある。これは「外部の発注、委託先を探している企業」と「各分野に強みを持つ企業」をマッチングするビジネスで、グラフィックデザイン、Web制作、映像制作、マーケティング、イベント・プロモーション、システム開発等幅広い領域に対応している。GCJが行っている『GCコミュニティ』と似通った事業と言えるが、外注先、発注先での利用は完全無料とのことだ。
 ただし、企業間を取り持って仲介手数料を受け取る仕組みは、決済トラブルや中抜きされない付加価値の維持、マッチング後のリピート性の低さなどの課題があり、ビジネスの難易度はかなり高いようにみえる。
 DTP・印刷業界にシステム提供している株式会社ビジュアル・プロセッシング・ジャパンも出展していた。同社のデジタルアセットマネジメント「DAM」を導入している印刷会社は少なくないだろう。「DAM」を基盤に、商品情報管理(PIM)を統合した「CIERTO」を中核のソリューションとして展開していた。
 「CIERTO」は、各種媒体の制作ワークフローの中核を担い、コンテンツ制作や配信における生産性向上とブランディング強化を支援するシステム。さらに、各種媒体・コンテンツ制作におけるプロジェクトマネジメントを実現するワークマネジメントやオンライン編集とマルチチャネルパブリッシングを実現する「MCP」により、コンテンツの制作・管理・配信業務のすべてをサポートできる点を訴えていた。 
 生成AIによる動画制作に加え、構成・演出・編集まで一貫対応している株式会社ツードットブイは、用途に応じた映像設計により、広告・プロモーション、エンターテインメントなど幅広い分野の映像制作が可能なことを訴求していた。
 幅広い事業を展開しているデジタルソリューション企業の株式会社ワンゴジュウゴは、Web制作・運営支援を主体に業務効率化や顧客体験向上を目的としたシステム・アプリ開発、IT人材の常駐支援、セキュリティ体制の強化支援を行っている。
 ブースではエンタープライズ運用に適したCMS「PowerCMS」、顧客の課題を解決するデジタル人材サービス、業務アプリをノーコード・ローコードで構築できる「SPIRAL®」などを訴求していた。同社のように顧客のデジタル課題に総合的に取り組む体制を構築するのは非常に難しいため、今後はこのようなデジタルビジネスがますます増大し、それに伴い印刷物の需要の減少が広がっていくことは念頭に置いておく必要があるだろう。
 ビッグデータ分析と人工知能領域で革新的な事業を展開するベンチャー企業の株式会社ユーザーローカルは、生成AIを活用したWeb・SNSマーケティングを前面に打ち出していた。同社の「User Insight」は、生成AIでコンテンツ作成、分析、Web接客を行うデジタルマーケティングツールである。データ収集・分析からWeb記事作成まで一括で行える「Social Insight」はSNS分析・運用ツールでクチコミやSNSアカウントの分析、予約投稿やキャンペーン実施が可能だ。担当者の業務効率化をサポートするもので、ブースでは製品概要や活用例も紹介していた。また、SNS分析ツール「ソーシャルインサイト(SocialInsight)」は、生成AIでコンテンツ作成・分析・キャンペーン運用を可能にすることを訴えていた。

IP・キャラクター市場への参入

 また、キャラクター、ブランドIP、アートIP関連企業の出展を見ると、グッズ製作、同人誌製作、ノベルティ製作のノウハウを持っている印刷会社にとっては、「印刷受託」ではなく、知的財産を活用して収益を生み出す「IPビジネス」を支援していくのが適しているといえよう。顧客のキャラクターグッズ企画、EC販売支援、イベント販売支援などを行うビジネスに携われば、利益率が大きく向上する可能性がある。

デジタルサイネージ・体験型コンテンツ

 イマーシブテクノロジーEXPOでは、超高精細ディスプレイ、マルチビジョン、3D映像、立体音響などが大きなテーマとなっていた。いわゆるデジタルサイネージ市場に関しては、画像処理・加工している製版・印刷会社にとっては相性の良い分野である。高額なLEDビジョン販売ではなく、商業施設案内、工場見学システム、企業ショールーム、観光施設案内などを中心に、「コンテンツ制作+運用」に特化したビジネスは今後も拡大していくことが予想される。
 今回の「CONTENT TOKYO2026」を振り返ると、月並みではあるが、改めて「印刷物をつくって売る会社」ではなく、「コンテンツをつくって、届けて、運用する会社」へ業態を変化させていくことが重要だということを再認識する展示会だったと言える。紙媒体への拘りは大切であるが、顧客の真の目的を探ると、販促やマーケティングを行う上で、それだけでは不十分だということを再認識させられた。

キャラクター CONTENT TOKYO2026 AI デジタルサイネージ