IPビジネスへ参入するための方策

ビジネス講座 @Random
業界関係者に贈る (58)

営業ではサンプルを作れる印刷会社としての強みを活かす

 近年、アニメやマンガ、ゲーム、キャラクターグッズ、VTuberなどのIP(知的財産)ビジネスに価値を見出し参入している企業が増えています。市場も拡大していくことが予想されていますから、持っているデザイン力、編集力、特殊加工技術などのコンテンツ制作と相性が良く、IPビジネスに参入しやすい面があります。そこで、まだIPビジネスに関わっていない印刷会社は、版権を持っている企業とコラボを行い、事業へ参入してみてはどうでしょうか。
 1つは、地域の伝統工芸や観光地とコラボし、AR技術を仕込んだ観光ガイドや、ストーリー性のある限定パッケージを共同開発するのです。製造受託だけでなく、企画・販売も行って利益を得るビジネスモデルを目指します。
 マンガやアニメ、キャラクターの版権を持つ会社(ライセンサー)は、「ファンが喜ぶか」「作品のブランド・世界観が守られるか」「監修の手間が減るか」を重視するものです。単に「印刷ができます」という営業では門前払いされてしまうため、印刷会社としての強みを活かした独自の営業アプローチと業界特有のノウハウが必要になります。
 営業手法としては、ファン目線の企画書を実物サンプル付きで持ち込むことです。ただし、どの作品でも使い回せるような汎用的な提案は、版権元が最も嫌いますから、ターゲットにする作品を徹底的に研究し、「この作品のこの名シーンなら、特殊印刷を使うと、これだけファンの収集欲をくすぐるグッズになります」と言って、箔押し、ホログラム、浮き出し加工などを提案し、具体的な企画書を作ります。
 版権の許諾前なので実際のキャラクターは使えませんが、世界観や色味を似せたダミーの綺麗な実物サンプルを持参すれば、言葉で説明するよりも何倍も担当者の心に刺さるはずです。
 また、版権元の手間を減らす提案も行うのが良いでしょう。版権元は、グッズの色味やデザインが作品の世界観を壊していないかチェックする監修業務に時間を追われていますから、「カラーマネジメントに精通したプリンティングディレクターが在籍していて、肌の色や髪のグラデーションの再現性に絶対の自信があります」といったアピールをしましょう。
 さらに、小ロット・短納期による在庫リスクゼロを提案するのも良いでしょう。グッズビジネスは在庫リスクとの戦いでもあります。興味を示してくれるはずです。
 「まずはデジタル印刷で小ロットの限定生産からスタートし、売れ行きに応じて即座に追加生産する体制を提供できます」という提案をしてみてはどうでしょう。版権元にとって魅力的な提案になるはずです。
 その他、ライセンス契約の知識は不可欠です。業務提携の形には大きく分けて2 つあります。1つは製造受託型です。版権元やグッズメーカーから製造だけを請け負うもので、リスクは低いですが利益も低いのが特徴です。もう1つは、ライセンシー型(自社販売)です。自社が版権元からライセンスを借り受け、グッズを企画・製造・販売する方法です。粗利は高いですがリスクもあります。

コンテンツの価値を最大化するパートナーシップを提案する

 自社販売を目指す場合、ミニマム・ギャランティが発生するケースがあります。これはライセンス契約において、権利を使用する側(ライセンシー)が、権利を保有する側(ライセンサー)に対して支払う最低保証金額のことです。この仕組みを理解しておく必要があります。
 契約において最低保証金額は重要な要素になりますから、支払額を総売上ベースにするのか、あるいは純売上ベースにするのか、また、どのタイミングで支払うのかなど、条件を決めておくことが重要です。
 また、印刷会社がライセンサーへ「御社のこのキャラクターでグッズを作って売っていきたい」という企画書を持って営業した場合に、許諾を得るためには、前述の最低保証金を先払いで支払うリスクが生じます。従来の印刷営業とは全く違ったルールになりますから、考え方を変えて臨まなければなりません。
 さらに、IPビジネスでは徹底的なセキュリティとデータ管理も万全でなければなりません。アニメの公式イラストや、アニメ化前のマンガの生データは、流出が絶対に許されない最重要機密です。データの送受信経路、作業現場の入退室管理、印刷ミスをしたヤレ紙の処分の徹底など、情報セキュリティ体制の見える化ができていないと、特に大手版権元は契約を結んでくれません。「プライMeasure for entering the IP business.バシーマーク」「ISO27001」の取得は必須です。
 では、実際にIPビジネスに参入するために、どのような営業をしていけばよいのでしょうか。大手版権元にアプローチしても、実績がないと門前払いされる可能性が高いですから、最初は、地域のゆるキャラや中小規模のVTuber事務所にアプローチしていくのが現実的です。ハードルが比較的低く小ロットでの成功体験を積んでいくことが肝要です。
 また、同人誌即売会の印刷やクリエイター支援は、人気イラストレーターや漫画家と直接繋がることができます。彼らのオリジナルグッズの製造・販売を手掛けて実績を作るのも得策です。さらに大手グッズメーカーの下請けから入る方法や版権元とパイプを持っている会社から印刷を請け負って、IP業界の事情を学びながら、業界内での信頼を獲得していく方法も考えられます。
 印刷会社の再現力と形にするスピードは、コンテンツ業界にとって優位性があります。印刷機を動かすための営業ではなく、コンテンツの価値を最大化するためのパートナーシップを提案するという姿勢で臨むことが、成功の鍵となるでしょう。〝事業ではデジタル化自動化で、効率的な作業が重要になる〟 具体的な事業展開としては、印刷したパンフレット、カタログ、DMを、ノベルティグッズと一緒に袋詰めして発送するという「販促・ノベルティセット」が真っ先に挙げられます。
 次に、出版社向けに、付録の取り付けや梱包作業をする「書籍・雑誌の付録セット」があります。さらに、工業製品メーカーに向けた取扱説明書、保証書、付属品をセット梱包する「マニュアル・キット作成」もあります。
 アッセンブリーを外注に出したい企業は多く、印刷・販促・出版業界以外にも、輸送機器メーカー、電気・電子機器メーカー、産業機器・FA機器メーカーなどの製造業をはじめ、食品・化粧品・日用品メーカー、EC事業者、通販業者、小売業者など多岐にわたっています。ですから、市場そのものは大きく事業化しやすい面があります。要は営業力次第になりますが、まずは既存顧客への営業、また顧客からの紹介という紹介営業で、新規開拓に取り組んでいくのが得策と言えるでしょう。
 手作業だけでなく、封入封緘機などの自動機を導入することで、大量受注や短納期対応を実現することが重要です。そのため、労働環境と労働力の確保が最大の課題になるかもしれません。体力を使う作業が増えるため、作業負担が軽減できる自動化ラインの構築、工場内の温度管理を徹底して働きやすい環境を整える必要があります。
 新規に人材を雇用するのが難しい場合は、現在の人員構成でローテーションを組んで事業に臨む方法も考えたいものです。
 人件費率が高くなる傾向があるため、原価管理の徹底と効率的な作業、適切な価格設定が必須です。単なるセットアップだけでなく、顧客のマーケティング活動を支援する「物流(ロジスティクス)」や「デジタル技術」を組み合わせることで、高付加価値型のサービスを目指すのがよいでしょう。
 あるいは事業を拡大するにあたっては、従来の印刷とは異なる物流・サービスの視点が求められます。
 既存の印刷技術とスペースを活用しつつ、クライアントの手間とコスト削減を解消するサービスとして、アッセンブリー事業は非常に有効ではないでしょうか。

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