訪日外国人旅行者のインバウンド消費のポイント
リーダーとなるデザイナーを採用し、デザインを軸に変革する
リーダーとなるデザイナーを採用し、デザインを軸に変革する
国土交通省観光庁の調査によると、2024年の訪日外国人旅行者の消費額は8兆1,395億円とのことです。今年はそれ以上の消費額になることは間違いないようで、インバウンド市場は好調に推移しています。今回はインバウンド市場の中で、訪日外国人旅行者をターゲットにしたお土産品に焦点を当て、お土産品の新規開発や販売戦略をどのように進めていくべきかについて述べてみました。印刷会社としては、地元企業とコラボレーションして訪日外国人旅行者向けのお土産品を開発し、地域の活性化や自社の売上増に繋げていきたいものです。
地元の企業や小売店とコラボを
日本政府観光局(JNTO)の調べによると、2024年の訪日外国人旅行者数は3,687万人となり、コロナ禍前を超えて過去最多を記録しました。2025年7月時点で既に2,495万人以上を記録しており、前年同月比18.4% 増となっています。この調子で推移すれば、今年は4,000万人近くに達する見込みです。
「国籍・地域別にみる訪日外国人旅行消費額と構成比」では、2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆1,395億円となり、コロナ禍前の2019年比で69.1% 増と過去最高を更新しました(グラフ1参照)。
2025年の旅行者数は2024年よりも増加していることから、インバウンド消費額も当然増加することが見込まれるわけですが、このように訪日外国人旅行者を対象としたビジネスは、今後も安定的に拡大していくことが予想されます。そのため、印刷会社においてもインバウンド消費を対象にした商品開発に取り組んでみるのはいかがでしょうか。
具体的な商品としては、多言語に対応した印刷物やデジタルコンテンツと連携した観光地ガイドなどが挙げられます。確かに、媒体制作を通じて需要を喚起し、消費に結びつけていくのは一般的であり、印刷会社であれば当然考えられる事業領域と言えるでしょう。しかし、新市場の開拓としては観光地のお土産品もビジネスとして考えたいものです。地元の企業や小売店とコラボレーションし、訪日外国人観光客をターゲットにした新たなお土産品を開発・販売すれば、地域の活性化に寄与すると同時に、当然、印刷会社自体の売上増にも繋がりますから、チャレンジしてみる価値はあると言えます。
訪日外国人観光客の買物場所
訪日外国人は、どこで買い物をするのでしょうか。国土交通省観光庁が、訪日外国人が観光・レジャーで買物をする場所を調べたところ(複数回答)、「コンビニエンスストア」(85.8%)が1位で断トツに高く、次に「百貨店・デパート」(61.6%)でした。次に僅差で「空港の免税店」(60.3%)、「ドラッグストア」(60. 1%)、「スーパーマーケット」(49. 1%)と続き、6 位に「観光地の土産店」(39. 0 %)となっています(グラフ2参照)。
コンビニでの買い物が圧倒的に多いのは、その利便性と24時間営業が要因になっているのが想像できますが、それらの理由の他に店内の清潔さや接客態度に日本独自の「おもてなし」を体験できる点も評価されていると言えるでしょう。また、2 位から5位の買物場所は、豊富な品揃えとサービス、免税対応などがメリットになっていることが分かります。
しかし、上位の買物場所で商品を販売できるのは、大手メーカーや卸会社を通じての流通に限られます。そもそも知名度の高い人気商品が陳列され、競争も激しい売り場ですから、地元の中小企業や小規模店舗が新規参入で入り込む余地はほとんどないのが実情です。したがって、地元の小売店が外国人向けにお土産品を販売するとなると、必然的に外国人が訪れそうな観光地での販売に活路を見だすことになり、いかに「観光地の土産店」に参入していくかが鍵となるのです。
その観光地もさまざまで、全国的に名が知れ渡っている名勝だけでなく、あまり知られていない行楽地や街並み、社寺、温泉、自然風景などが全国各地にあります。最近では、外国旅行者が事前に情報を調べ、最適な季節や祭りなどの催し物の開催などに合わせて訪れることも珍しくありません。
また、都会の喧騒を離れてリラックスできる温泉地や、伝統的な街並みが残る地方の小都市も観光スポットとして注目されつつあります。何度も訪日している外国人の多くは、誰もが行く有名な観光地には既に訪れているため、日本独自の風景や文化の香りが漂う地方の「穴場」を観光するケースが増えているのです。そのため、47都道府県の地方都市に外国人観光客が訪れる可能性は十分にあると言えるでしょう。
それぞれの地方には名勝や独自の祭り、名物など、地域独自の自然や文化が存在します。そのため、その地域を訪れた証となるお土産品を開発・販売することは、インバウンドビジネスの一環として有効ですし、地元の印刷会社としても新しいビジネスとして検討してみる価値は十分にあります。
また、人気のある買物場所ではありませんが、「鉄道駅構内の店舗」「高速道路のSA・道の駅」「宿泊施設」などは、外国人観光客が立ち寄る場所でもありますから、お土産品の出品を地元小売店と共に働きかけていくのも有力な戦略です。同業他社が出店していなかったり、地元の名物や工芸品を販売する上で新たな商品を出しやすい環境でもありますから、十分に狙い目となるでしょう。


商品はSNSや動画サイトで宣伝
印刷会社がお土産品を開発する際は、地元の中小企業や菓子店と共同開発していく手法を取り入れることが求められます。その際は、商品パッケージから包装まで地元観光地をアピールできるデザインにし、訪日観光客の目を引くことが重要です。
また、マーケティングも重要です。昨今の外国人観光客の多くは、事前に日本国内の旅行情報をSNSや外国人インフルエンサーの動画サイト(YouTubeなど)を見て、観光地を訪れるケースが増えています。やはり訪日外国人にとって、日本に滞在している外国人やインフルエンサーが各地の情報を母国語で伝えるのは理解しやすく、大きな参考になるのです。そこで、地元の観光地の情報が外国人にどのように発信されているのかを、インターネットやYouTubeなどで検索し、どのようなお土産品が取り上げられているのかを調べておくことが、マーケティング施策として重要です。
可能であれば、自社のお土産品情報をYouTubeやSNSで発信するインフルエンサーのコメント欄に、英語もしくはインフルエンサーの母国語でコメントし、地元の観光地をアピールするのも効果的でしょう。今では日本語を外国語に簡単に翻訳できる機能がネット上にありますから、外国語で発信するハードルは低いと言えるでしょう。
さて、お土産品といってもさまざまなものがあります。分類すると「食品・菓子類」と「工芸品・雑貨」の2つに大きく分けられます。外国人観光客に人気のお土産品は多岐にわたりますが、「食品・菓子類」では抹茶味のお菓子、日本限定のお菓子、伝統的な和菓子が代表的です。抹茶味のキットカットやポッキーは海外で売られていないのかかなり人気がありますし、その他の抹茶味のお菓子も観光地にあれば購入する傾向が高いようです。
日本限定のお菓子では、個包装になっているものは日本独自の特徴で、帰国後に友人に配る際に便利な商品として喜ばれています。伝統的な和菓子では、カステラや煎餅、落雁などが人気です。ただ日持ちを考えると羊羹、あられ・おかき、焼き菓子といったお菓子もよく購入されるようです。いずれも、見た目の美しさやユニークさに「日本らしさ」が表れているものが好まれるようです。
地域の伝統的な和菓子やご当地限定のお菓子は、今では多種多様なものが観光地で販売されていますから、新たに開発するのは難しいと思われがちですが、それでもまだまだ新規に開発できる余地は十分にあります。例えば、地元でまだお土産品として売り出されていない和菓子や洋菓子などを探して、外国人観光客の琴線に触れるようなお土産品を開発したいものです。
また、菓子類だけでなく、地元ならではの野菜や果物を使った物産品を新たに企画してみるのも面白いかもしれません。例えば、日本酒をはじめとする酒類は人気があります。他にも事例を挙げるなら、四国が主な産地となるヤマモモで作るリキュールやジャム、ジュースなどをお土産品にすることが考えられます。四国の印刷会社が、地元でヤマモモを栽培している農家と共同開発すれば、ユニークな商品として注目を集めるでしょう。これは単に外国人旅行者だけでなく、日本人観光客にとっても需要が見込めそうな取り組みになるでしょう。
日本の伝統・文化を感じる商品が人気
一方の「工芸品・雑貨」に関しては、陶磁器や漆器、箸、扇子、タオル、手ぬぐい、風呂敷、和小物、包丁、ハサミ、爪切りなどが挙げられます。これらは観光地での販売が相応しいものもあれば、ネット通販で販売したほうが世界各地に市場を拡大できる可能性もあり、販路をどうするかが問われるところですが、印刷会社としては地元の企業とコラボする観点から、まずは観光地での販売を考えてみたいものです。
また、工芸品・雑貨は国や地域によって人気が分かれるものがあり、一概に述べることができない面もあります。国別にターゲットを絞るのも良いでしょう。特に和柄や自然をモチーフにしたデザイン、手作りの温かみ、高品質と芸術性が好まれる傾向にあります。比較的安価な雑貨類では実用的な文房具が人気で、外国人旅行客に好まれるものは筆ペン、消せるボールペン、和柄の高級ボールペン、和紙のノート、機能的な事務用品などが挙げられます。
工芸品や雑貨に関しては、使い方を含めてその文化的背景を理解してもらうためにも、多言語で商品説明文を付けることも考慮しましょう。昨今は訪日外国人向けのショッピングサポートアプリが開発されており、商品のバーコードをスキャンするだけで旅行者の母国語で商品情報を提供するものも出てきています。そんなアプリを活用し多様化する訪日外国人に訴求するのも良いでしょう。
さらに何と言っても、アニメや漫画の登場人物が絵柄に入ったキャラクターグッズは子供たちを中心に高い人気があります。ただし、著作権を保有するメーカーや企業と交渉しなければなりませんし、著作権問題などをクリアするためのコストや労力が求められますから、商品開発のハードルが高いのが難点と言えるでしょう。
ところで、国によって買物代の費目別購入率に多少違いがあります。例えば、国土交通省観光庁の調査では、「菓子類」の購入率は国籍に関係なく高いですが、特に中国、韓国、台湾、香港からの旅行者については菓子類の購入率はトップになっています。また、アメリカ人観光客のデータでは、「その他食料品・飲料・たばこ」や「菓子類」、「衣類」などの購入率が高いことが分かっています。
このように国によって多少特徴が表れていますが、菓子類の購入率はどの国も高く、トップか2位に位置しているため、お土産品としては外せない分野と言えるでしょう。
「衣類」については、通常は円安の理由もあってユニクロやGUなどの日本のファストファッションブランドは人気が高く、観光客自身が着るだけでなくお土産品としても購入するケースがあります。一方で、着物、和風デザインのTシャツなど、日本らしさが感じられる衣類は欧米人を中心に人気が高いですから、地方の観光地で考えていくなら、地域ならではのデザインを施した着物や法被、Tシャツなどを開発するのも良いでしょう。日本の文化や伝統が感じられて、気軽に着用できるものは有力な土産品候補です。その際に気を付けたいのはサイズです。大柄な外国人に対しても合うビッグサイズを用意しておくことが重要です。
また、先述した外国人観光客が訪れそうな穴場の売り場として考えられる「鉄道駅構内の店舗」「高速道路のSA・道の駅」「宿泊施設」についてですが、これらを販売場所としてターゲットにするのであれば、とにかく地域資源を活用し、地域特産の素材を使った菓子類の商品開発・販売に取り組むことがポイントです。地元農家や菓子店に働きかけて、共同で新たな商品開発を目指したいものです。
また、ホテルや旅館などの宿泊施設については、特に外国の文化や宗教へ配慮することを忘れずに、事前に宿泊施設とリサーチし、コンセプトに合ったオリジナルの商品を開発しましょう。その際には、観光客が何を求めているのかアンケート調査やレビューサイトの分析などを活用して、リアルな声を反映した商品を提供できるようにしたいものです。
外国人に人気の高い工芸品・雑貨、衣類
外国人観光客に人気の高いお土産品を一部紹介します。日本人でも思わず欲しくなる商品ばかりではないでしょうか。






|





























