「パーソナライズDM」で顧客の販促を支援!

紙とデジタルを連携させたハイブリッド型販促への対応が必須に

紙とデジタルを連携させたハイブリッド型販促への対応が必須に

今回取り上げるのは「パーソナライズDM」です。最近、販促手法が不特定多数の画一的なものから、デジタル技術を使ったパーソナライズされたものへ移行しつつあります。これはデジタル技術の進化によって、顧客一人ひとりの行動履歴、関心、興味に関するデータが収集・分析できるようになったことが主な要因です。従来の紙の大量配布から、紙とデジタルを融合させたハイブリッド型のパーソナライズ印刷にシフトしているわけです。本来、紙のDMの目的は、特定の顧客に対してモノとして情報を届けて、集客や購買の行動を促し売上を上げていくことですから、パーソナライズ化することは効果的であり当然と言えるでしょう。印刷会社としても、いつまでも印刷だけで顧客の受注に応える経営では市場から取り残されてしまいます。紙の五感への訴求力に加えて、デジタルによるデータ分析・拡散力を使って、相互に連携・補完させた印刷戦略を実践したいものです。そこで今回は、顧客にとっても有益な「パーソナライズDM」の手法を考察してみました。「紙+デジタル」によるマルチユース展開はもう不可欠になっています。

パーソナライズDMは開封率が高い

 今日ではデジタル化が進んだことで、新聞、雑誌、書籍などの紙媒体を購入する消費者が減少しつつあります。これは年齢が若くなればなるほどその傾向が強く、もはやZ世代に関しては、それらの紙媒体をほとんど読まなくなったと言っても過言ではないでしょう。情報のほとんどをスマートフォン(以下、スマホ)から入手するようになったわけです。
 また、スマホの影響でチラシやパンフレット、カタログなどの印刷物も手に取る機会が減少しています。それはまとめサイトを活用したり、自ら欲しい情報を入手するようになったりしたことが考えられますが、商品・サービスの情報を発信する企業側も、デジタルにメリットを感じて注力するようになった側面があります。もはや印刷物だけで企業の販促を展開しても、効果を発揮しない時代になったと言わざるを得ないでしょう。印刷会社も顧客のニーズに応えて有益な販促が行える提案をしなければなりません。そのためには、データ分析を通じて個々に合った最適な販促を、デジタルコンテンツと共生しながら展開していくことが求められます。
 (一社)日本ダイレクトメール協会の「DMメディア実態調査2024」によりますと、宛名が正確に明記されているパーソナライズDMは開封率が74.3%で、宛名がない不特定多数を対象にしているDMは開封率が44.2%となっており、パーソナライズDMのほうが、開封率が2倍程度高いという結果が出ています。この結果から、自分宛のDMだと分かっただけで、DMに対する興味の度合いが一気に高まることが見て取れます。しかも、「今だけの特典」と明記すれば、さらに行動を喚起させる効果があることが分かっています(同実態調査より)。このようにパーソナライズDMは、開封率の高さから有効性が高いことが分かります。
 印刷会社が今後すべきことは、印刷ではプレミアムの価値を与える高付加価値印刷に取り組み、パーソナライズ化を展開していくことです。つまり、チラシやパンフレット・カタログなどの商業印刷物をパーソナライズDMへ進化させていくということです。チラシやフライヤーなどの端物類も、封緘した状態で郵送(発送)する時代になっていくことが予想されます。それをいち早く顧客に提案し、パーソナライズDM化を進めてビジネスモデルにしていくことを考えてみてはどうでしょうか。
 制作ではコスト高になりますが、顧客に対してはターゲットを絞ったパーソナライズ印刷で反応率を高めて、売上増に繋がる販促で成果を上げることができるはずです。特にDMにおいては、大量に印刷する汎用型DMではなく、個々の顧客に向けたパーソナライズDMで効果を発揮する方向に既に向かっています。市場はデータに基づいたパーソナライズ印刷で、高い開封率・反応率を得て成果に結びつけていく流れになっているのです。
 これまで商業印刷のチラシやフライヤー、パンフレットなどの端物は、個人の宛を明記せずに、不特定多数を対象に、または広範囲の地域に送付するバラマキ型(汎用型)が主流でした。しかし、バラマキ型は費用対効果が低い上に、無駄な紙資源を消費し環境負荷を増大させる面もあります。しかも顧客データを収集・分析しないケースが多く、個別のニーズに合わせた訴求ができていなかったのが実情です。

顧客ごとに最適なDMを作成するのが重要!

 今日はスマホを介してさまざまな情報を入手する時代ですから、印刷物にQRコードやAR技術を付加して、デジタルコンテンツの案内役として機能させるのもいいでしょう。もちろん、紙のDMでも単独で販促効果を高める必要がありますが、顧客への志向対応から言って、スピーディで効果的な販促が行える「紙+デジタル」のマルチ展開が必須です。従来のワンソース・マルチユースという考え方ではなく、「顧客ごとに最適なソースを作成し、マルチユースで展開していく」という考え方です。今後はこの仕組みを構築し、エンドユーザーごとに販促展開していくことが望まれます。
 そこで印刷物を効果的な販促ツールにするために、顧客の購買属性・行動履歴に基づいた訴求内容の文面に変えて、顧客ごとに異なる「パーソナライズDM」を企画・提案できるようにしましょう。
 要は単にDMを制作し顧客に納品するだけでなく、その先のデジタルコンテンツへ導する方法を考えるのです。IT業界や他社に仕事を奪われないためにも、印刷会社が先んじて役割を担って市場開拓し、顧客に提案していかなければなりません。そのためには、営業が積極的にパーソナライズDMの必要性を認識し、市場で需要喚起していく必要があります。
 印刷会社としては、デジタルコンテンツを含めたDM戦略を提案し、可能であれば顧客からエンドユーザーの情報を入手して、パーソナライズDMの企画・制作から発送までを一手に引き受けるシステムを構築することです。顧客の懐に入り込んだ販促を行ってこそ、売上増に貢献することが可能だと言えるでしょう。
 要は顧客の先の顧客、つまり消費者(企業も含めて)に興味・関心を持たせられるパーソナライズDMを作成するということです。そのためチラシやパンフレットも個々のニーズに合った内容に変えて印刷する必要があります。つまり、バリアブル印刷の域を超えて個人の嗜好に合わせたデザイン、キャッチコピー、文面にして、興味や関心を一層引き付けていくものにするということです。
 そこで役に立つのが生成AIやCMS(コンテンツ管理システム)、SFA(営業支援システム)、MA(マーケティングオートメーション)といった技術になります。パーソナライズDMを制作する場合は、従来のバラマキ型DMより時間やコストが掛かりますから、それを効率的にこなすには生成AIや各種マーケティングツールを使い、データ分析による高度にデジタルと連携したコンテンツ・ワークフローを構築しなければなりません。印刷会社としては、可能な限りこれらの技術と連携させたワークフローを構築し進化していくことが望まれます。

パーソナライズDMを提案する際の留意点

 休眠顧客や、今までアプローチしていなかった見込み客を掘り起こす観点からも、反応を可視化できるパーソナライズDMは大いに有効です。従来の名前や住所を差し替えるバリアブル印刷のレベルから一歩進め、デザインや文面そのものを一人ひとりに最適化します。そして、顧客の購買履歴やWeb行動履歴をAIに解析させて、消費者個々の好みに合わせたデザインやイラスト・画像、心に刺さるキャッチコピーを自動生成し、DMに反映する方法を築くのです。
 例えば、アパレル業界では顧客一人ひとりの特定の情報(好み、購入履歴、体型、悩みなど)に基づいて、単なる売れ筋商品の紹介ではなく、個別に最適化されたファッションコーディネートやアイテム提案を記載した「パーソナル・スタイリングDM」がトレンドになりつつあります。これによって、一般的なDMより高い開封率や反応率が得られ、実際に商品の購入に繋がる可能性が高くなっています。
 株式会社オンワード樫山では、パーソナルスタイリングサービスを展開しています。これは協力会社が保有する顧客の購買データを活用し、AIが導いた人気アイテムの袖丈・色見などの要素に基づき商品企画を行うものです。同社では、店舗に来店した顧客に対して最適と思われる衣服を提案しているようですが、この手法を宣伝・販促する際に、「お客様にピッタリのおすすめ商品!」としてパーソナライズDMを郵送すれば、来店数も増えるのではないでしょうか。今後、アパレル業界にアプローチする際は、エンドユーザーに最適な商品をお勧めする際の販促施策として、パーソナライズDMの提案をしていきたいものです。
 効果的なDMを制作するに当たっては、最初にターゲットを明確にしなければなりません。誰に送るのかを決めて、そのターゲット層に響く色やフォント、トーン&マナーを性別、世代や家族構成などを考慮して選びます。
 情報を詰め込みすぎず、最も伝えたい主要なメッセージ(商品の特徴やメリット)を簡潔に伝えることが大事です。Webサイトやランディングページなどへのアクセス、電話での問い合わせ、店舗への来店などを促す明確な「コール・トゥ・アクション」(具体的な行動を起こさせる仕掛けや特典など)を付加することも求められます。
 また、商品の魅力が伝わるような高品質な写真を使用し、統一感のある色彩でデザインします。デザインカンプをデザイナー自らが制作するのも良いですが、最初はイメージ案を数点見せるだけですから、デザイン作成サービス(CanvaやAdobe Expressなど)のさまざまなテンプレートを活用して、効率的に低コストで制作することをお勧めします。そして、ある程度イメージがつかめたら、デザイナーが正式にデザインするのが良いでしょう。
 さらに、印刷物にスマホをかざすと商品の3Dモデルや解説動画が表示されるARの仕組みなど、紙面だけでは伝えきれない情報の補足や、エンタメ性の高い体験を提供するのも効果的です。そこで、QRコードやARを販促用の紙媒体の分かりやすい箇所に付加することが不可欠になります。
 一方、逆にデジタルから紙媒体に誘導することも考えたいものです。大量のデジタル情報の中で、あえて形に残る紙を使うことでロイヤリティを高めるわけです。デジタル広告で認知を広げた後、特定の優良顧客に対してのみ、紙質や加工にこだわった高級感のある招待状や冊子を送り、ブランドの信頼性を高めるのも良いでしょう。このように、紙媒体では特別感や希少性を演出するわけです。
 また、Webサイトの閲覧履歴やカート離脱した見込み客に対しても、その顧客が関心を持ちそうな商品に特化したカタログやクーポンを、最適なタイミングで自宅に届けるのも良いでしょう。
 さらに、通常はWebだけで受注が完結し商品を発送できますが、耐久消費財、車、マンション、注文住宅などの高額商品の場合、中には長期間商品の内容をとっておきたい顧客もいますので、個々に合った高付加価値DMを加飾印刷で作成し、消費者に届けることも考えましょう。

デジタルによる可視化とDM制作の流れ

 ただし、印刷物をDMにして郵送しただけで終わりにしてはいけません。効果をデジタル技術で可視化して次の販促に活かすことが重要です。いわゆるPDCAを回してフィードバックしていくことが求められるわけです。印刷物に専用URLの掲載やクーポンコードの利用状況をトラッキングできるようにしたり、どの地域の、どの層が、どの印刷物をきっかけに問い合わせや成約したかを可視化したりして、次回の施策に活かすのです。
 印刷会社はDMのコピー、文面、デザイン、画像などについて「どうすればもっと良くなるのか」を顧客ともに考え、より良いアイデアや企画を検討し、最適なマルチユース方法を導き出して提案することが重です。
 また、紙からWebへ誘導した後の離脱率や滞在時間を分析し、印刷物のデザインやメッセージがターゲットに適していたかを検証します。これらデータ連携によるKPI設定や顧客行動の分析は、効果測定の可視化として重要な施策になってきます。印刷会社としても、これらの技術を取り入れて最適なパーソナライズDMが行える制作体制を築きたいものです。
 そこで、パーソナライズDMの制作工程について言及します。まず顧客データの整理です。顧客が保有しているエンドユーザーの名前、過去の購入履歴、興味関心などのデータを集めなければなりません。それは営業担当者の仕事になりますが、顧客に赴きエンドユーザーのデータを入手するか、あるいは顧客に合ったエンドユーザーを新規で収集するのをサポートしていくかのどちらかになるでしょう。そしてデータが集まれば、CRMやSFAなどのツールを使って整理・データベース化し、エンドユーザーをセグメントに分けます。
 MAツールを導入してもよいですが、使いこなすまでに時間を要しますし、コスト高にもなりますから、安価もしくは無料の顧客管理ツールで十分でしょう。顧客管理ツールに発送・送信したいターゲットの属性データを入力し、最新の状態にしておきます。次に、そのツールと発送代行サービスのシステムが連携可能な状態にし、メールやWebと連動して自動で紙のDMを発送する仕組みを構築します。最後は個々に合ったクーポン種別、テキスト内容、推奨商品画像などを決定し、バリアブル印刷用のデータを準備します。概略ではありますが、このようなステップを踏んで準備します。
 今後は、AIを用いて顧客データを分析し、最も反応が得られやすいタイミングで紙とデジタルを組み合わせるデジタルワークフローによるプロモーションの構築が求められていくでしょう。

不動産業界のパーソナライズDMの行方

 従来の不動産業界のDMは、地域や年齢などの静的な属性に基づき、直接郵送やポスティングが主流でした。今後は、最新のAIを駆使したDMに移行し、予測モデルに基づいて制作する「AIによるライフスタイル予測型のDM」に移行することが予想されます。
 顧客が分譲マンションのWebサイトを閲覧した際に、購入したい具体的なマンションがまだ決まっていない場合は、希望条件の入力、アクセス履歴からAIがニーズを予測して最適なマンションを数件紹介します。
 例えば、ファミリー向け物件を閲覧した顧客に対しては、生成AIがその物件に住んだ際の「子供部屋のインテリア例」や「近隣の教育環境をまとめたレポート」などを自動作成するわけです。家族構成の変化(出産、進学)や、住宅ローンの借り換え時期などをデータから導き出し、「顧客の条件から地域性や利便性を考慮した最適なマンション」をAIが提示します。
 AIが顧客データを分析し、「在宅ワーク重視」「子育て優先」「投資目的」といったライフスタイルごとに異なるメッセージを自動生成し、パーソナライズDMを作成・封緘し郵送するというものです。

顧客のビジネスパートナーを目指す

 顧客にパーソナライズDMを提案することの意義を提示しますと、次のようなことが言えるでしょう。

(1) 自分宛のDMはかなりの高い確率で開封され、なかなか捨てられないという価値を生む。
(2) デジタルコンテンツにはない紙の質感・プレミアム感を与える。
(3) 顧客データの活用支援で、エンドユーザーと強固な関係を構築できる。

 パーソナライズDMで顧客のニーズに確実に応えていければ、販促手法として定着させることが期待できます。単なる「受託印刷業」から、顧客のマーケティング課題を解決する顧客の「ビジネスパートナー」として役割を進化させることが可能になるでしょう。

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