提案し付加価値を与えるDTPデザイナー

長年培ってきたアナログ製版技術や画像処理技術を強みに、下請け中心の業務から脱却し、一般企業への企画提案を通じて印刷物を受注しているのが有限会社旭プロセス製版である。今回は、DTPデザイナーとして約30年のキャリアを持つ鈴木慎一氏に、DTPに携わるようになった経緯や現在の仕事内容についてお話を伺った。


有限会社旭プロセス製版(GC東京)

〒113-0022
東京都文京区千駄木3-41-18
https://asahi-process.com/ 

DTPⅡ課 デザイナー
鈴木 慎一

デザイナーとしての経験と実績を積む

 鈴木氏は東京都出身。都内の工業高校を卒業後、某印刷会社のグループ会社(製版部門)に入社した。「入社のきっかけは高校の先生からの勧めでした。正直、製版や印刷については何も知識がありませんでしたが、元々ものづくりが好きだったので、抵抗なく入社できたと思います」と当時を振り返る。
 入社後はアナログ工程に配属されたが、6〜7年経った頃に印刷製版業界全体がデジタル化へと大きく移行。ちょうどその時、所属部署が社内でいち早くDTP組版を導入することになり、運よくそのプロジェクトに携わることができた。そこで週刊誌の創刊プロジェクトなどに関わり、DTPによる印刷工程全般のノウハウを身につけていった。
 その後、製版会社を退職し、銀座の小さなデザイン事務所に転職。DMや小冊子のデザイン制作に従事しながらデザイナーとしての経験を積んだが、案件の幅に限界を感じ、さらなるキャリアアップを目指して大手出力センターの企画デザイン部門へ転職する。この転職が、自身にとって大きな転機となった。そこではグラフィックデザインにとどまらず、サインディスプレイ、イベントブース、販促什器のデザインなど幅広い案件を担当。「多くの経験と実績を積みました。これらの経験は、現在の仕事に大きく活かされていると感じています」と語る。
 「10年以上勤めた後、諸事情により、一旦休養し、充電期間を経て再就職活動を再開しました。しかし、Web等でDTP・印刷関連会社を探し回るもなかなか見つからず、結局地元のハローワークに出向き、日々探すことにしました。年齢的にも40代半ばということもあり、再就職の厳しさを痛感した時期でもありました。そんな時、旭プロセス製版がDTPデザイナーを募集しているのを見つけて、ダメもとで応募したところ採用が決まり、入社することとなりました」と、同社に入社するまでの経緯を話す。
 入社から9年が経ち、現在は玩具メーカーの商品カタログやリーフレット、芸能事務所のコンサートチラシやポスター、チケットなど、多岐にわたる印刷物の制作を手掛けている。組合関連では「第61回GCJ東京大会」のパンフレットや、GC東京の忘年会・新春の集いの告知チラシを制作。また、2022年に開催された「PrintNext」で同社代表の田中社長が編集長を務めたフリーペーパーにおいて、学生デザイナーへのアドバイザーとしても携わった。
 新型コロナウイルスの影響により、働き方にも大きな変化があった。在宅ワークを導入し、会社と自宅の双方に同等のマシン環境を整えることで、時間や場所にとらわれずに通常業務を遂行できる体制を築いた。これにより、納期対応の柔軟さや緊急案件への即応力も格段に向上し、結果的にお客様へのサービスの質を高めることに繋がっている。
 「これからも、お客様にご満足いただける品質を大切にしつつ、時代の変化に合わせたスピード感と柔軟性をもって対応していきたい」と鈴木氏は語る。その言葉からは、DTPデザイナーとしての誇りとともに常に進化し続けようとする姿勢が感じられる。長年の経験で培った技術力と柔軟な発想力を武器に、これからも多様なニーズに応えることで、新たな価値を生み出していくに違いない。

与えられた仕事に付加価値を付ける

 鈴木氏は、新規案件や内容によっては営業担当者に同行し、顧客と直接打ち合わせを行うこともある。細かなニュアンスはメールのやりとりだけでは伝わらなかったり、思わぬ見落としが発生したりすることも少なくない。実際に顔を合わせて話をすることでコミュニケーションが深まり、相手の考えや背景を理解できるからだ。お互いの信頼関係が築かれることで、意見や要望も伝えやすくなり、結果的により良い成果物に繋がっていく。
 最近では「お客様から支給された写真で、ちょうど肩の部分が途中で切れてしまっていることがあります。本来であればレイアウト上不自然に見えてしまうケースですが、生成AIを使えば自然に肩を補完することができます。従来は修正に多くの時間を費やした作業も、今では短時間で対応できるようになりました」と、生成AIの活用にも積極的だ。
 さらに、イラストや装飾カットが必要な場合も生成AIは心強い味方となる。「ちょっとしたイラストや背景のパターンなど、以前なら外部のイラストレーターに依頼するか、自分で一から描き起こす必要がありました。でも今ではAIを活用すれば、短時間でイメージを形にできる。もちろんそのまま使うのではなく、デザイナーの目で最適化し、案件に合わせた調整を施します。AIはあくまで“下絵”や“素材”を素早く用意するツールであって、それをどう活かすかは人間次第です。むしろデザイナーの発想を広げる助けになっていると思います」とのことだ。
 鈴木氏の仕事への取り組み方は一貫している。「まずはクライアントが何を求めているのか、その意図を正確に理解すること。そこからどんなデザインを施すかを考え、必要に応じてこちらからも提案させていただきます。最終的にお客様に喜んでいただけることが一番大事だと思っています」。
 与えられた仕事に単に応えるだけでなく、付加価値を与えるデザインを施し、実際の販促に効果を発揮して顧客の売上に貢献する―それこそが鈴木氏の信念だ。長年の経験に加え、最新技術も柔軟に取り入れながら、ベテランのDTPデザイナーとして目の前の仕事に真摯に向き合い、常に最善を尽くす姿勢が感じられる。


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