“推し活”からみる今後のマーケティング戦略

今回は、東京・池袋のサンシャインシティ文化会館で開催された「第73回インターナショナル プレミアム・インセンティブショー春2026」から、4月10日に行われた拓殖大学商学部教授 経営経理研究所所長の田嶋規雄氏の特別講演を紹介する。テーマは「“推し活”からみる今後のマーケティング戦略」。田嶋氏は、ホップカルチャーを中心に推し活の広がり、ビジネス上の魅力とリスク、その背景にある消費者の行動理論を説きつつ、推し活にまつわるマーケティング戦略について話した。ポップカルチャー産業のみならず多様な業界が推し活に関わってくるとし、推し活を活用する上での留意点やビジネスの可能性について解説した。

レクチャーズ・ルーム 77
拓殖大学 商学部教授
田嶋 規雄 氏(講師)
田嶋氏は、「推し活」について、「キャラクターや特定のアイドルなど、自分にとって重要と思える人たちを『推し』と呼んでいます。その『推し』を応援したり、『推し』によって何かを感じたり、また『推し』に会うまでの行動や会った後のSNSへの投稿までの一連の行動を、『推し活』と捉えています」という。
「推し活」には、TVなどメディアの視聴、イベントへの参加、グッズの購入、関連商品・サービス、派生消費に関わる商品・サービス、創造的行為に伴う商品・サービス、情報収集・共有のためのメディア、外出(聖地巡礼など)、経済的支援などがあるという。
消費者行動からみた推し活の特徴と収益性について、「購買前行動」「購買時・消費行動」「社会的行動」の3点を掲げる。「購買前行動」では次の2点を挙げる。①能動的情報検索は、顧客から情報を取りにいくようになり、プロモーション費用を削減することができて収益性が高い。②購買地点への距離抵抗が低い場合は、立地の利便性への配慮の必要性がなく、中間流通を通さず、自社ECサイトや限られた直営店での集客・販売が可能ということで収益性が高い。
「購買時・消費行動」は次の6点を挙げる。①購入点数・購入頻度が多い場合は、特定商品の売上が増える。②継続的購買・消費の場合は、顧客生涯価値が向上する。③ カテゴリー横断的購買・消費の場合は、複数商品の売上が増加する。④排他的購買・消費の場合は、販売側の競争が起こりにくい。⑤支払意思価格が高い場合は、商品の高価格設定が可能である。⑥創造的行動の場合は、創作活動に伴う市場を創造する。
「社会的行動」は2点を挙げる。①他者への推奨・情報共有の場合は、口コミによるプロモーション費用の削減が可能である。②消費者主導の市場創造の場合は、消費者主導の顧客体験の拡充に繋がる。
「推し活」をビジネスで活用する上での留意点は、「ファン以外の人には、なぜそれが良いのか分からず、ネガティブなイメージを持たれることがあります。ビジネスをする場合は理屈で説得できないため、有用性を正当化する必要がある場合は、『専門家がこう言っている』という働きかけが重要になってきます」と述べる。また、炎上のリスクがある点や著作権への配慮も忘れてはならないと説く。
推し活のマーケティング施策を行う際には、戦略としてのSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)が必要だという。STPでは「同じ価値を有する消費者たちを特定のキャラクターの下に識別し、その行動特性を把握することがポイントです」と指摘し、「ターゲットのプロフィールが明確であるため、マーケティング・ミックスの4P(Product、Promotion、Place、Price)の策定がしやすく、価値が既定されているため、ポジショニングマップ作成の必要性はほとんどありません」と説く。
マーケティング・ミックスでは、「キャラクター製品は、価値が感じられるかどうかで製作できます。消費者による能動的な情報検索が期待されるため、ペイドメディアを活用する必要性は低いですし、むしろオウンドメディアの利用や、SNS上でコミュニティが形成されている場合のアーンドメディアの利用が高くなります」という。
売り方に関しては、「消費者はあまり気にしていないため、特に利便性を考慮する必要性はないでしょう。自社ECサイト等の直販の利用可能性が高くなり、それによって顧客の個別識別・個別管理・対応が可能になります」とのことだ。最後に、価格設定では低価格や値引きの必要性はないと指摘した。
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