生成AIを実際に使用して仕事に活かそう
今回は、7月18日に開催されたGC中部主催、GCJ共催のGCJ人材教育セミナーを紹介する。講師に株式会社光文堂 販売推進部次長の大橋 慶三氏を迎え、「クライアント視点からの生成AI ~企業における生成AIの実践的な活用方法」をテーマにセミナーを行った。大橋氏は生成AIが社会基盤に組み込まれつつある今日、クライアントが印刷会社に何を期待しているのか、生成AIの実演を通じて有効な活用方法を講演した。
今後、文章だけでなく、画像・音楽・映像の各分野で生成AIの活用が不可欠になってくることが予想される。大橋氏は、生成AIを取り入れることでビジネスを発展させていくことの重要性を説いた。
レクチャーズ・ルーム 61
株式会社光文堂 販促推進部次長
大橋 慶三 氏(講師)
最初に大橋氏は、Webサイトの内容を30秒程で要約する生成AI「No-Lang(ノーラング)」を紹介した。「この生成AIは企業のプロモーションビデオを簡単に作ってくれます。知らない企業の事業内容について、その企業のホームページを要約して教えてくれます」と話し、実際にNo-Langに音声で問い合わせてWebサイトの内容を要約してみせた。
また、企業のCM制作における生成AIの活用状況に触れ、「今やクライアントがCMのデザインを作るケースが増えています。特にニューヨークのデザイン市場規模は今年3月の時点ですが、デザイナーの仕事は昨年と比べて2割ほど減少しています」と、クライアントが自ら生成AIを使いつつあると述べた。
生成AIが出現したことで、日本においても「デザイナーがクライアントにラフデザインを3点持参したところ、『3点だけなの? 生成AIでもっと作って来てよ』と言われたそうです」と、生成AIによってデザイン制作の単価が下がっていると指摘した。
大橋氏は実際に生成AIに「名古屋のテレビ塔の中に抹茶カフェをオープンします。キャッチフレーズと簡単な説明文を250文字で考えてください」と、問いを投げかけたところ、十数秒で「天空の抹茶体験」というキャッチフレーズと共に、集客を目的にした抹茶カフェの特長と宣伝文を生成し提案した。生成されたテキストはプロのコピーライターに匹敵する品質があり、生成AIの優秀性を指摘する。
テキストだけでなく画像についても生成AIが進展しているという。通常では到底撮影できない写真を画像AIを使って生成し、また、言葉を巧みに使ってオリジナルのイラストも制作し、生成AIが簡単にプロ級の画像を生成できることを実証してみせた。「プロのイラスタレーターに依頼しても10分程度で望み通りのイラストは描けません。生成AIだとそれが可能なのです。ただし、画像をダウンロードして商用利用することができませんが、生成した作品はヒントにはなります」と生成AIの利用価値を訴えた。
従来のネット検索エンジンでは、商品チラシや製品カタログのキャッチフレーズ(コピーライティング)などは生成できなかったが、生成AIでは簡単に提示してくれる点が画期的であると指摘する。テキスト関連の生成AIでは、リアルタイムの情報を反映し、市場でWindowsを使うユーザーが多いことから「Microsoft Copilot」を推奨し、画像に関する生成AIでは、商用利用が可能で印刷業界に馴染みのあるAdobeの「Adobe Firefly」を薦めた。また、他にも何点かの生成AIも紹介した。
「創作活動の場合は、ゼロから1を生み出すのが一番大変ですよね。1ができれば、それを1.5や2にするのは加工修正ということで比較的容易になると思います。その一番大変なゼロから1の創作を生成AIにさせることで、テキストも画像も制作しやすくなったわけです」と、生成AIの利用価値が高まっていると述べた。
今後、印刷業界では生成AIが必須になるという大橋氏。「印刷会社がイラスト作成のビジネスを始めようとした場合に、誰にでも作成できてしまうために参入障壁が下がるわけです。それによって、プロのイラストレーターの仕事が減少していくことになるでしょう。これはどんなビジネスでも言えることで、技術が進化しコンピュータが代わりに仕事をするようになると、専門職の仕事が無くなっていくわけです。生成AIはまだ登場して2年程度ですが、さらに進化していきますから、今から理解しておいたほうが良いでしょう」と、生成AIを活用することが今後必須になると強調した。
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