D2Cビジネスで印刷物にはまだ将来性がある

今回は、2025年12月3日に富士フイルムグラフィックソリューションズ株式会社の富士フイルム西麻布ビル2号館1階で開催された、同社主催の「Power デジタル印刷力体感フェア」の特別セミナーを紹介する。講師は、株式会社大広 デジタルソリューション本部データドリブンプランニング局ダイレクトビジネスグループ部長の岡野忠史氏。「D2Cビジネスで再注目される印刷物の可能性~D2Cビジネスを支える印刷物の力~」をテーマに、顧客に長く購入してもらうための施策について講演を行った。岡野氏は、印刷物はD2Cビジネスにおいて顧客とのコミュニケーション手段として効果的でポテンシャルがあり、今後も活用する価値があることを説いた。

レクチャーズ・ルーム 73

株式会社大広
ダイレクトビジネスグループ部長
岡野 忠史 氏(講師)

最初に岡野氏は、D2C(Direct to Consumer)ビジネスの事業構造について、「D2Cビジネスを難しく考えがちですが、“顧客数×平均顧客単価(LTV)”という単純な掛け算でしか事業は展開できません。この掛け合わせで事業の売上が決まります。そのため、顧客数を増やしていくことと、顧客に買い続けてもらって年間の平均顧客単価を上げるという、2種類でしか事業を大きくすることはできません」と説明した。
「D2Cには、お客様と『共創する』というニュアンスがあります。単なる売買で終わらずに、お客様に企業やブランドを好きになってもらい、長く買い続けていただくことがD2Cの根本です」と、D2Cの本質を指摘した。さらにD2Cビジネスの重要なことは、顧客の個人情報を獲得できる点である。顧客の性別、年齢、居住地、悩み・課題、好みなどが分かるため、それに対して直接コミュニケーションをとりながら販売に繋げやすくなるメリットがある。このような顧客とのコミュニケーションそのものがCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)であると提言する。
「大事なことは、お客様を深く知り、その先にいる消費者のニーズに合ったものを提案し、相互理解を深めていくことが重要です」と、コミュニケーションの必要性を強調した。その手段として、印刷物などのアナログツールと、電子メールやSNSなどのデジタルツールがあるとし、併用して使用することが大事だという。
印刷物の強みは、手に取って見てもらえる確率が、デジタルツールと比べて圧倒的に高いことで、DMなどに同梱されるアナログツールは、その企業の最初のメッセージになる。そのメッセージをいかに伝えるかによって企業の印象が違ってくるというのだ。一方、メールはそもそも読まれずに削除されるケースが多く、アナログツールのほうが商品を手に取ってもらえて優先度も上がりやすいというメリットを強調する。
また、印刷物とデジタルツールは役割が違うと述べ、「それぞれに合ったメッセージや情報を入れるべきです。印刷物の場合、あれもこれもと大量の文字情報を入れがちになるが、シニア層には文字が小さいと読めません。空白を活かしたデザインを考え、伝えたい情報だけを入れたほうが良いということを、お客様に提言してください」とのこと。
印刷物が顧客にフィットする状況は、顧客の悩みが大きく、「何とかしたい」という思いが強い場合であるとし、一方のデジタルツールは、「とりあえず試してみよう」といった軽い関心の場合に適していると説明する。「課題感が強いと改善を求める意識が高くなり、信頼性のある印刷物のほうが説得力を持ち、有効に働きます」と、印刷物の優位性を話す。
逆に、デジタルツールを使う場合は「課題感が弱いと、とりあえずという意識になって、最低限の情報だけで効率良く購入したいという意識が高くなります。その場合はデジタルツールが適しています」と、使い分けの考え方を示した。
最後に岡野氏は、「印刷物は顧客とのコミュニケーション手段として親和性が高く、これからも活用されていくはずです。そして、LTV向上にも役立つと思います。本来は、お客様の先にある消費者の人たちに何を提供できるかが重要なのです。その目的を明確にした上で、手段として印刷物が適しているのであれば提案し、受注に繋げていくべきだと思います」と、印刷物の本来の目的を述べて締めくくった。

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