後継者編

データは語る

事業承継支援策で後継者不在率は減少傾向にある!?

 後継者不足は、今や全産業で共通の問題になっています。経営者の高齢化が進み、後継者が未定のまま事業を続けていたり、黒字経営であっても後継者が不在のため廃業を選択せざるを得なかったりと、地域や産業に限らず、全国的な問題となっています。印刷業界も例外ではなく後継者不足が続いており、大きな問題となっています。
 一方で、中小企業白書の後継者不在率の推移を見ると、全体として後継者不在率は減少傾向にあります。グラフでは、経営者の年齢が60代であっても同様に減少傾向を示しており、後継者不足の解消が進んでいるように見えます。
 その理由を探ってみますと、まずM&Aや従業員承継による親族以外の承継が増加していることが挙げられます。これは、国や自治体が事業承継支援策を強化したことによる効果の表れであり、全国に設置された事業引継ぎ支援センターで専門家が後継者探しやM&Aのマッチングなどを支援していることが大きな要因と考えられます。
 また、親族以外であっても社内の優秀な人材に事業を引き継ぐケースが増えてきたことや、経営者自身が廃業リスクを避けるために、後継者探しや事業承継の準備を早期から計画的に進めるようになったことも背景にあります。
 これらの複合的な要因によって後者不在の状況が解消され、不在率が減少傾向にあると考えられます。ただし、依然として全国の半数以上の企業で後継者が不在である状況は続いており、課題が完全に解決したわけではありません。
 さらに、不在率の低下は承継が順調に進んだことだけでなく、後継者が見つからず廃業した企業が統計から除外されることで、数字上の不在企業が減って見える側面もあります。
 企業の中には黒字経営が今後も維持できるにも関わらず、後継者がいないために廃業を選択せざるを得ない、非常に残念なケースもあります。
 グラフでは経営者の年齢が高齢になればなるほど、後継者の不在率が減少しています。その要因として、経営者の健康や気力、体力面の問題から、事業承継に費やす時間と労力を考慮して、「早く後継者を決めなければならない」という意識が強まり、早期から後継者探しを進めていることが考えられます。それによって、既に後継者が見つかっていたり、承継が決定していたりするという解決済みのケースが増えていることが窺えます。

経営者は次世代に繋げるために事業承継しやすい業態に変革を

 印刷業界では後継者不足が大きな問題となっていますが、解決策を考えた場合、なぜ印刷業に将来性が見出しにくいのかを具体的に分析し、事業の抜本的な見直しと変革を図っていくことが重要ではないでしょうか。事業に将来性がなければ、若い世代は離れていくものです。
 また、経営者の新規事業や業態変革に対する意欲が見られないと、若い世代は将来に不安を感じ、いずれ離職していく可能性が高くなります。これは経営者の子息についても同様のことが言えるでしょう。将来性のある事業だと分かれば、「引き継ぎたい」という考えも生まれてくるものです。
 そこで、各地の商工会議所や自治体が実施している後継者育成塾などを利用し、子息や後継者候補に体系的な経営知識を学ばせる方法も考えたいものです。いずれにしても、経営者自身が意識変革を行い、新規事業への参入や多様な選択肢の検討を進めて、次世代や子息が「事業を承継しても良い」と思える業態に変革していくことが重要だと言えるでしょう。また、親族や社内に拘らず、柔軟に後継者候補を探していくことも考える必要があるでしょう。
 経営者がすべきことは、自社の技術力や顧客基盤などの強み、財務状況、老朽化した設備などの弱みをそれぞれ把握し、デジタル化をさらに推進して事業を承継しやすい基盤を作っていくことです。それは決して紙の印刷を放棄するということではなく、印刷事業を継続させていくために必要な付加価値のある媒体づくりを目指す中で、デジタル化やペーパーレス化を進めて事業承継がしやすくなるよう再構築するということです。
 具体的には、インターネットを駆使したビジネス展開、Webサイト制作、SNSを活用したマーケティング活動、3DCGや動画制作など、「印刷+デジタルコンテンツ」で顧客をサポートしていくことで若い人材にアピールし、印刷事業の多様性と将来性を示していくことが大切なのではないでしょうか。50代から60代前半の経営者には、それらを早急に進めていくことが、次の後継者づくりに繋がっていくと言えるでしょう。

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