ペーパーレス化編

データは語る

さまざまな紙データ類の電子化が進む

 企業はコスト削減、業務の効率化、セキュリティの向上、環境保全への対応、データのバックアップ化などを目的にペーパーレス化を進めています。印刷会社にとっても社内業務でペーパーレス化は取り組むメリットがありますが、一方で印刷物の減少に繋がり、売上に影響してくる問題でもあります。
 現在ペーパーレス化を進めている主な紙は、コピー用紙やFAX、企業内の資料・文書など、社内にあるコピー機やオンデマンド印刷機で印刷するものが主体ですから、印刷会社へ発注するような商業印刷物や定期刊行物は含まれていないのが現状です。しかし、将来的にはチラシやパンフレット、冊子類などの商業印刷物もデジタル化が進み、インターネットを介して、スマートフォンやPC上で画像を閲覧することが一般化すれば、印刷物はさらに減少していくでしょう。ペーパーレス化にメリットがある以上、企業が推進するのも無理はありません。
 IT関連のサービスを展開している株式会社デージーネット(本社 : 愛知県名古屋市)が2023年4月と7月に東京と名古屋で開催されたJapanIT Weekの会場で、「ペーパーレス化の取り組み」に関するアンケートを実施したところ(有効回答数176名(169社))、既に8割を超える企業がペーパーレス化に取り組んでいることが分かりました。
 では、具体的にペーパーレス化に向けて何を実施しているのでしょうか。回答で最も多かったのは「紙データの電子化」(54. 0%)でした。(グラフ参照)
 当然ながら、ペーパーレス化はその名の通り、紙で運用している業務をデジタル化するものですから、これまで社内にあった紙の文書・資料の管理・運用を電子化することに取り組まなければなりません。紙データの電子化がトップになるのは当然と言えるでしょう。既に半数以上の企業で実施していることから、DX推進による業務効率化、SDGsへの対応、電子帳簿保存法への対応などで、確実にペーパーレス化が進んでいることが窺えます。
 次に多かったのが「WEB会議システムの導入」(40.9%)です。これはインターネット上で行う会議のことで、主にZoomがメジャーなシステムとして有名です。GCJの会議においても利用していますし、各企業でも外部との打ち合わせや営業などで利用していることでしょう。テレワークを導入する企業が増えてWEB会議システムの導入が普及した感があります。

顧客のニーズに合った情報ツールの支援を

 3位は「ワークフローシステムの導入」(34. 7%)となりましたが、印刷業界でワークフローと言えば、DTPから印刷までの制作工程の流れを指したりしますが、ペーパーレス化におけるワークフローシステムとは、主に稟議や申請などのさまざまな業務手続を電子化するシステムのことを言います。
 これは1位の社内文書の電子化に似ていますが、社内文書のペーパーレス化をシステムとして構築するもので、社内業務のプロセスを効率化するのが目的になります。事前に決定したルールに基づいて文書や情報の流れを自動化するというものです。
 4 位の「経費精算のシステム化」(27.3%)は、経費精算ではまだ紙を利用している企業が少なくないでしょう。清算書や領収書など紙の印刷代を削減できればコスト削減になりますから、今後増えていくことは確実です。また、それらの紙を保管する必要もなくなります。それに伴い次の「請求書の電子化」(23.9%)もペーパーレス化されていくでしょう。これら伝票類の印刷が減少していくことは必至です。
 6位の「契約書」(23.3%)、7位の「見積書」(23. 3%)も紙である必要はありませんから、PDFファイルなどのデータとしてメール送信に切り替わっていくはずです。これらは企業間で取り決められますから、すぐにでもペーパーレス化が可能と言えます。
 しかし、ペーパーレス化はメリットばかりではありません。小規模企業にとってはシステム構築や人件費などのコストが伸し掛かってきますし、作業効率が低下する可能性もあります。費用対効果を考えてペーパーレス化を進める必要があります。
 印刷会社としては、市場でペーパーレス化が進んだとしても、情報を伝え合うというコミュニケーションツールは必要ですから、顧客のニーズに合わせてWEB 制作、データ分析ビジネス、小ロット印刷需要の開拓、デジタルマーケティング支援などの事業に参入して、逆に企業のペーパーレス化を支援するビジネスで、市場開拓していくことも考えたいものです。

電子書籍 月刊GCJ