NFTの仕組みとビジネスの可能性
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業界関係者に贈る (52)
唯一無二を証明する作品として売買することが可能
NFTという言葉を聞いたことがあるでしょうか。NFTとは『Non- Fungible Token(ノン・ファンジブル・トークン)』の略で、「Non-Fungible」は非代替性、「Token」は「あかし」「証拠」という意味になります。
トークンは、ブロックチェーンの技術や仮想通貨(暗号資産)などのデジタルマネーのことを指すことが多いですが、通常はブロックチェーン技術を用いて発行された電子的な証明書のことを指します。デジタルコンテンツの作品に書き換え不可能な非代替性を与えて、唯一無二の証明を付与できるようにしています。
NFT は、国内外のNFT マーケットプレイスと呼ばれるインターネット上でのプラットフォームで取引され、デジタルデータを販売して利益を得ることができます。写真やイラスト、キャラクターなどのデジタルデータを扱っているデザイン会社や印刷会社としては、大いにビジネスに関係してきますから、NFTがどういうものなのか、仕組みを知っておいて損はないでしょうし、実際に利用することで新たなビジネスを開拓していけるかもしれません。
そんなデジタルコンテンツを予め作成し商品として販売することは、リアルな世界でも行っていますが、それをNFT 作品として売買することができるのがNFTプラットフォームになります。そのNFT 作品に価値を見出して、欲しいと思った消費者や企業がいれば、販売することができるわけです。
ただし、デジタルデータは簡単にコピーすることができるため、本物かコピーされたものかを見分けるのは非常に困難です。顧客が購入したいのはあくまでも作者が制作したオリジナルの作品データであって、コピーのデータではないはずです。これをリアルなアート作品のように唯一無二のものとして認定し、売買できるようにしたのがNFTというわけです。
NFTデータをPCのディスプレイに映してスクリーンショットで撮ることで、コピーを作ることは可能ですが、そのコピーにはブロックチェーンによる識別情報が存在しませんから、コピーとして判別されてしまいます。NFTマーケットプレイスでは、販売されているデジタルデータにシリアルナンバー(エディションナンバー)が入っていて、それぞれが区別された代替不可能なデータ(作品)として扱われていますから、1つ1つのデータに資産的価値が生まれるわけです。
新ビジネスとしてNFT作品を創作し事業領域を広げる
ブロックチェーンは、約10 分ごとに新しいブロック(台帳)が生成され、前のブロックに記録が紐づけられます。ブロックは全ての取引を記録するようになっていて、ブロックを繋ぐチェーンは、一定方向にしか繋ぐことができない上に、ハッシュ化と呼ばれるデジタル情報の圧縮技術によって偽造ができないようになっています。しかもPoW(Proof-of-Work)という演算量証明と呼ばれる仕組みで二重利用を防いでいて、改ざんすることが非常に困難です。つまり、ブロックと呼ばれるデータの単位を、チェーンのように連結して補完するデータベース技術と言えるでしょう。
NFT には、「デジタルコンテンツの唯一性を証明できる」「取引しやすく互換性がある」「誰でもがNFT データを作成することができる」「破損や紛失のリスクが極めて少ない」といったメリットがあります。クリエイターが制作したコンテンツ(作品)を、NFT 作品として販売し、それを欲する人が現れたら販売するという仕組みは、有名なアーティストであればネームバリューですぐに売れる可能性がありますが、知られていない無名のクリエイターの作品は、すぐに買い手が現れるとは限りません。
NFT マーケットプレイス上で販売できるようにするには、ある程度リアルな市場で実績を上げて価値のあるコンテンツを作っていることが求められます。リアルな市場でいかに価値ある仕事をしているかが問われてくるわけです。
中小印刷会社がNFT を利用する目的となりますと、クリエイターに依頼して制作したコンテンツや、自社でデザインを考え制作したコンテンツを販売するというスタイルです。NFT と連動させて紙媒体とデジタルの両軸から仕事の受注を喚起し、売上増に繋げていくという考えができると思います。
NFT 市場は、今後、拡大していくと言われていますが、その一方で課題もあります。まず、そもそも日本ではNFT の定義が法的にされていない点です。NFT マーケットプレイスの利用規約にもよりますが、NFT 作品の保有がNFT 作品の著作権を保有するものではない、といった記載が見られるからです。NFT は物理的なモノではなく、デジタルデータの「無対物」であるため所有権がなく、現状ではあくまでも債権的な契約に過ぎないという点を念頭において売買する必要があるでしょう。
さらに暗号資産やウォレット(仮想通貨を保管する場所)の取り扱いが難しいため、まだまだNFT を利用する動きは活発化していません。しかし、少しずつより安全な方法でNFT の取引ができる仕組みが構築されてくるでしょうから、今後、NFT を利用する人や企業が増えて市場が拡大していく可能性はありますし、実際増えつつあります。
日本は漫画、アニメ、ゲームなどのサブカルチャーのコンテンツが発展していますから、それらを創作しているクリエイターたちとコラボレーションしてコンテンツを創作し、NFT 作品として世界市場で販売することも考えたいものです。
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