出展社によるdrupa2024レポート
一段と進化したさまざまなデジタル印刷機が一堂に会する
一段と進化したさまざまなデジタル印刷機が一堂に会する
開催された「drupa2024」は、「we create the future」をテーマに、世界52カ国から1643の出展者が最新のソリューション、印刷関連機材を展示し、会期中には過去最高となる世界174カ国、約17万人が来場し、盛況裡に閉会した。先頃、出展社の富士フイルムグループと株式会社SCREEN GPジャパンが、それぞれユーザーや印刷関連会社を集めて、drupa2024のトレンドと主な出展社の出展内容について報告があったので紹介する。
SCREEN GP ジャパンのレポート
~ 5つのキーワードを提示し解説する~
SCREEN GPジャパンは6月24日、15時30分より東京・江東区のSCREEN GP ジャパン ホワイトカンバスMONNAKAで、drupa2024 の概要とトレンド、SCREENの出展トピックス、SCREENから見た今後のデジタル印刷について「after drupa2024セミナー」と銘打ったセミナーをリアルとZoomで開催した。
冒頭、同社営業本部長の皿谷英昭氏が来場者へ感謝の意を述べた後、B.I統轄部ICT推進部店頭係長の徳田尚子氏が、drupa2024の概要と、キーワード別に各社の出展製品について報告した。
今回のdrupa2024のキーワードとして同社では「デジタル」「パッケージ」「自動化・省力化」「サステナビリティ」「アジア」の5つを挙げた。「デジタル」については、各社の連帳デジタル印刷機、枚葉デジタル印刷機とも進化が見られ、後加工機メーカーとの連携が進んでいることを報告した。特に枚葉デジタル印刷機は、B2サイズ(29.5インチ)幅まで対応した機種の発表が相次いだと言及した。
「パッケージ」については、パッケージ製品の展示が目立っていたとし、来場者もパッケージへの関心の高さが窺えたとのこと。前回まで出展が少なかった軟包装、フレキソ印刷、段ボールなどのデジタル印刷の展示が目立ったという印象を述べた。
「自動化・省力化」では、ロボット、AGV(無人搬送車)、AMR(自律走行搬送ロボット)の実演がいくつかあり、ロボット技術に注目が集まったとのこと。また、EFI段ボールのオンデマンド生産も自動化の動きが見られた他、印刷管理システムやオペレーションのタッチポイントの削減という省力化が、各製品で見られたことを報告した。
「サステナビリティ」では、各社ともあまり前面に押し出す展示ではなく、さりげなく紹介するものが多かったと述べ、水性インク、EBインク、水性UVインクなどの環境にやさしいインクの発表があったと報告した。ランダ社について言及し、オフセット印刷機とランダ社のデジタル印刷機で出たそれぞれのヤレを比較して、デジタル印刷機の環境対応の優秀さをアピールしていた点を挙げ、ランダ社のジョブ生産でのヤレのビジュアル展示が、インパクトを与えていたという報告も行った。そして、サステナビリティは確実に広がっていることを実感したという。
「アジア」では、中国企業の出展が多かったことや、インドからの来場者が目立ち、軟包装やラベル機への関心が高かったと述べた。
SCREEN GAの出展トピックス
新製品のインクジェット印刷機が注目集める
SCREENグラフィックソリューションズでは、テーマを「Creating A Future In Print ~Tech x Irodori」とし、80年間にわたって製版・印刷のプロフェッショナルとして培ってきたノウハウで、デジタル印刷機など革新的な製品を紹介した。
商業印刷・出版印刷分野では、新製品の高速連帳デジタルインクジェット印刷機「Truepress JET 560HDX」を、フンケラー社の後加工機と連携して初出展した。オフセットコート紙に直接印刷が可能な高濃度インクを使用して、高精細な印刷品質を実現している。また、新しく強化された乾燥技術による高生産性、最大用紙幅560mmからレターサイズへの対応など、品質と生産性の向上を訴求した。
さらに、新製品のA3 枚葉インクジェット印刷機「Truepress JET S320」を出展。同機は、オフセットコート紙に直接印刷できる水性インクを使用し、解像度1,200×1,200dpiの高画質を実現したとのこと。最大印刷速度150ページ/分に対応している。
モノクロ印刷分野では、次世代水性モノクロインクジェット印刷機「Truepress JET 520HD mono」を出展。モノクロ印刷を最適化し、コンパクトな設置面積で40gsmの薄紙に対応している点をアピール。新たに高密度の用途に応じた2種類のインクを開発し、これまで以上に墨の濃度が向上し鮮明な印刷を実現したとのことだ。
パッケージ印刷市場向けでは、紙軟包装印刷分野で新製品の水性インクジェット印刷機「Truepress PAC 520P」を出展。デジタル印刷によるサステナブルな紙軟包装の提案機種で、食品対応水性インクを搭載。さらに、新製品の軟包装向け水性インクジェット印刷機「TruepressPAC 830F」も初出展。機械が大きいためインクジェットエンジンのみを初展示したとのこと。サンプルを多く展示し軟包装の小ロット対応を提案した。
シール・ラベル印刷向けでは、UVインクジェットラベルプリンティングシステム「Truepress LABEL 350UVSAI Series」のデジタルプライマーを搭載した機種を初展示した。UVインクジェット印刷における密着性や粒状性などの品質を改善するデジタルプライマーで、基材適正の拡大が図られるほか、マット効果や疑似エンボス加工が可能となり、用途の可能性を広げている点を訴求した。
続いて、B.I統轄部ビジネスデザイン推進部部長の伊藤弘二氏が、「SCREENから見たデジタル印刷」をテーマに、デジタル印刷機を出展している各出展社の製品のポイントについて報告を行った(主な出展社の出展内容については後述)。
富士フイルムグループのレポート
~持続可能性、デジタル化がトレンドに~
富士フイルムビジネスイノベーションと富士フイルムグラフィックソリューションズ(以後、富士フイルムグループ)は、6月26日、27日の両日、東京・港区西麻布の新ショールームで、「drupa2024 Report」と銘打ち、自社の出展製品、全体トレンド、分野別トレンドについて報告を行った。冒頭、富士フイルムグラフィックソリューションズの山田周一郎社長は、参加者へお礼の言葉を述べた後、デジタルプレスの市場拡大が伸びているとして、「drupa2024においては前工程、デジタルプレス、後工程を一気通貫で見られる実演を行って、世界中から来られた方々にデジタルプレスのラインを見ていただいた」と挨拶した。
続いてdrupa2024レポートに移り、デジタルソリューション営業部の鈴木部長より報告があった。最初に全体のトレンドでは注目トピックスについて言及。「持続可能性が重要なファクターになっており、これに取り組むことは必須になっている。また、環境経済、資源効率とエネルギー効率、リサイクルなどのキーワードに、これらを実現するための手段としてデジタル化が不可欠になっている。ただし、AIが表立った展示は少なく、製品に盛り込むとかソフトウェアの一部の機能として組み込むという紹介が多かった印象である」という感想を述べた。
分野別のトレンドでは、デジタルプレスの枚葉デジタル印刷機についてはB3サイズからB1サイズまで幅広く出展されていて、B1サイズではパッケージ印刷への訴求が目立ったと述べた。その他、連帳インクジェットプリンター、ワイドフォーマットインクジェットプリンター、ワークフロー/ソフトウェアなどについて特徴的な製品や新しい技術などについて解説した。
富士フイルムの出展内容
~デジタルプレスをワンストップで提案~
富士フイルムグループは、drupa2024では「Discoverthe difference」をスローガンに、生産工程やビジネスモデル変革に対する多様なニーズに応える製品やソリューション、またそれらを支える技術まで、総合力とそれが導く新たな付加価値の「違い」に触れるコンテンツを紹介した。ブースはCommercial areaとIndustrial areaの2つに分けて、前者では各種デジタルプレスを、後者は初実機の「Jet Press FP790」を出展し、デジタルプレス中心のソリューション力を提示した。
Commercial areaでは、メイン製品である「RevoriaPress GC12500」(参考出品)を展示。世界初の乾式トナー技術を使ったB2XLサイズ(750×662サイズ)で、64~450gsmの広い用紙に対応し、独自の用紙パス設計による自動両面に対応しているのが特長である。オペレーターにとって操作しやすい設計を訴求し、ブースでは紙に接する方法ではなく、遠赤外線を使って定着させる技法で同機の実演を行い、用紙ストレスを大幅に低減した点に注目が集まったと報告した。
Industrial areaでは「Jet Press FP790」を展示。軟包装印刷を可能とする水性インクジェットプレスで、初めて市場投入する新製品である。最大790mm幅の基材に対応し、50m/分の印字速度を実現。CMYK各色のプリントヘッドに加え、2組の白色ヘッドの搭載が可能で、食品や日用品などの軟包装の多品種・小ロット印刷に対応し、高い生産性を実現している。ブースでは人気を博して、多くの注文が入ったとのことだ。
IGAS2022で発表した紙裁きロボットアームは、今回進化させ、システムインテグレーションしたモデルを展示し、デモでは人だかりがあった。
その他のデジタルプレスでは「Revoria Press PC1120」を出展。ブースでは中綴じ製本機とインラインで接続し実演を行ったが、特殊色の蛍光グリーンのトナーを使って印刷したことで注目を集めたという。CMYKに加えてピンクと蛍光グリーンのトナーを加えることで、特色の領域のガモットを95%カバーするという特長を提示し、好評を博したとのことだ。
また、プリントエンジンを刷新した5色機の「RevoriaPress EC2100S/Revoria Press SC285S」(参考出品)を初披露。また、連帳型インクジェットプレス「Jet Press1160CFG」も出展。250gsmの厚手コート紙を1200×1200dpiの高画質モードで80m/分のスピード印刷を実現した。
主な出展社の出展内容
ランダ
海外メーカーで最も注目を集めていたのがランダ社のブース。ナノグラフィ技術を搭載した最新機B1デジタルプレス「Landa S11P」と「Landa S11」の2機種を実機展示。前者は両面印刷を実現した商業印刷向けの機種で、後者は片面印刷の厚紙対応の機種で、多くの来場者がブースに訪れ、配布したサンプル出力を持ち帰っていたとのことだ。
ランダ社は、直接用紙にインク吐出せずに、一旦中間ベルトに吐出して画像形成し、中間ベルトの上で乾燥させて、インクの層を用紙に転写する方式のナノグラフィ技術を採用。ナノインクの転写技術と定着性に注目が集まった。B1サイズ(41インチ)、高品質、超広色域、いろいろな紙に対応できる点を訴求した。
コニカミノルタ
コニカミノルタは「See the Potential in the Future of Print」をテーマに、培った独自の技術とノウハウを最大限に活用し、印刷会社の将来像を提案した。初出展となるB2 サイズインクジェット印刷機の最上位機種「AccurioJet 60000」やMGI Digital Technology(本社:フランス)との共同出展となる「AlphaJET(アルファジェット)」を中心に、印刷工程の自動化・省力化を推進することにより、印刷会社の労働環境の改善や環境負荷の低減、持続的な事業運営に貢献する各種ソリューションを訴求した。
リョービMHIグラフィックテクノロジー
リョービMHIグラフィックテクノロジーは、展示会テーマを「Assist Your Potential(技術力と創造力で、あなたの可能性を支援する)」とし、「パッケージ印刷のさらなる自動化」と「自動運転による商業印刷の生産性向上」をコンセプトとした展示内容を展開した。特に作業の効率化とそれを実現するためのさまざまな自動化を施した製品を中心に、パッケージ印刷分野、商業印刷及び出版向けの最先端の自動運用ソリューションを紹介。富士フイルムの無処理版「ZX」をCTP実稼働させ、そのまま印刷するライブデモを実演した。
主な製品は、パッケージ印刷市場向けのB1サイズ薄厚兼用印刷機「RMGT10 1060LX-6+CC+LD」。全色同時刷版交換を行うサイマルチェンジャーと、印刷中に次ジョブの準備作業が並行して行える昇降式コーティングユニット、給紙自動ノンストップ装置の動作を上映した。
コダック
コダックのメイン製品は、KODAK ULTRASTREAMコンティニュアスインクジェットテクノロジーを搭載したインクジェット連帳機「KODAK PROSPER ULTRA 520プレス」。より微小のインクを高精度で着弾させて不要なインクを静電気で回収する方式を採用し、高品質かつ生産性の最大化を実現し、注目を集めた。印刷速度は最大152m/分。サンプルはグロスコート紙へ印字したものを配布した。
また、露光後の焼出し退色を抑制する無処理版の「Sonora XTRA」や、どこからでもファイルの準備、ルーティング、保存を自動化するクラウドベースのSaaSソリューション「PRINERGY Access」の新製品を紹介した。
ホリゾン
システム。新システムとワークフローでは、無線綴じ製本機「BQ-300」、中綴じ折り製本機「SPF-2000」、新製品の給紙装置「HSF-50」を組み込んだシステムを紹介した。
特化システムでは、富士フイルムの「Revoria PressPC1120」とSmart Slitterをインラインでシステム構成し、カード、名刺などをワンパスで作成するシステムを出展した。既存製品応用システムでは、小中ロットの加工に適したインライン製本システムの他、印刷物から折丁を作製し、それをAGVがパレットを自動搬送する紙折り機パレタイズシステムを紹介した。
小森コーポレーション
小森コーポレーションは、「Connected Automation」のテーマの下、オフセット印刷機の環境配慮型モデル、次世代のデジタル印刷機などを展示した。初披露した「J-throne29」は、B2両面枚葉のUVインクジェットデジタル印刷機で、片面6,000枚/時の高速印刷を実現し、注目を集めていた。また、ダブルコーターを搭載したUV搭載菊全判7色枚葉機「Lithrone GX40 advance」を出展し、コーティングのバリエーションを提案した厚紙印刷を実演した。
キヤノン/ハイデルベルグ
キヤノンとハイデルベルグ社が業務提携の発表を行った。キヤノンはB2サイズの商業印刷用インクジェット印刷機「ProStream 2000シリーズ」を発表。一方ハイデルベルグは、B2サイズ対応の枚葉インクジェット印刷機「JetFireシリーズ」(2025年内に発売予定)を参考出品した他、新製品の「スピードマスターXL106」で自動コーターの実演でアピールしたとのことだ。
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