心理的安全性・自己肯定感のある組織づくりを

 今回は、2月5日に開催したGCJ主催、GC東京並びにGC青年会共催の人材育成セミナーを紹介する。テーマは「ヒトが安心できる組織の構築」で、Will人材経営コンサルティング株式会社代表取締役の谷進二氏を招き、心理的安全性や自己肯定感を大切にする組織づくりについて講演を行った。谷氏は中小企業にとって重要な課題は人材の確保、定着、育成だとし、経営理念体系を構築し、パーパス経営を明確にすることの重要性を説いた。また、社員が何をすればモチベーションアップにつながるのかを考える必要性を強調した。リアルとオンライン併せて70名近くが参加し、有意義なセミナーとなった。

レクチャーズ・ルーム 64

Will人材経営コンサルティング株式会社 代表取締役
谷 進二 氏(講師)

 谷氏は「企業が存続するためには、経営理念や環境変化への対応力の他に、業務を遂行する専門知識や技術力のテクニカルスキル、周囲との良好な関係を築くヒューマンスキル、物事の本質を見極めて個人や組織の可能性を最大限まで高めるコンセプチュアルスキルが求められます」と言う。その中でも特に、経営者や管理者にはコンセプチュアルスキルを持つことが大切だと強調する。
 また、人材を活かすには、ヒトが輝く組織にする経営が重要だとし、「経営者が取り組むべきことは経営理念を明確にし、理念を実現するための経営戦略・ビジョン・目標を立案し、それに合わせて人材の活用を図っていくことになります。そして、組織・人材と経営が一体化したマネジメントを実施し企業の成長に繋げていくことです」と語った。
 組織を活かした経営にするためには、「心理的安全性と自己肯定感を大切にする組織づくりを行って、安心できる組織をつくることです。そして、経営者にとって必要なことは共通目的に向かう組織づくり、コミュニケーションを重視した組織づくり、モチベーションを高める組織づくりが大事です」と話す。心理的安全性とは、チームにおいて自分が発言することを恥じたり控えたりせず、安心して話せる状態で、心理的安全性を高めた企業では売上高が伸びたり、離職率が大幅に減少したりしているという。
 また、「ミスについて話し合える職場でなければなりません。ミスが話せないからミスを隠蔽し、ミスが共有できなくなって社員の相互協力が難しくなるのです。ミスを話し合えて共有することができる心理的安全性のある職場では、社員相互の協力関係が築けて生産性の向上に繋
がります」と、心理的安全性の重要性を話す。
 心理的安全性を高めるためには「コミュニケーション力が必要で、お互いが忖度せず正直に話し合えて、対等な姿勢で対話ができる職場にすることが重要です」。逆に心理的安全性を阻害するものには、「無知だと思われる不安」「無能だと思われる不安」「邪魔をしていると思われる不安」「ネガティブだと思われる不安」があると指摘し、経営者はこれらの不安を取り除くことが大切だと指摘する。
 さらに心理的安全性のある組織をつくるには、「ポジションパワーのあるマネジメント層が実践する」「チームでありたい姿を描いて問題点を全員で認識し共感できるようにする」「相手を受容し承認しながら聴く」「相手をほめ、感謝の気持ちを伝える」「リーダー自身が弱みを見せて欠点があっても良いという姿勢を示す」ことなどを、実践していくことが必要だと述べる。
 自己肯定感についても言及した。「自己肯定感とはありのままの自分に価値を見出せることです。自分に対してポジティブな感情を持てば、他人に対して寛容になって仕事や人間関係がうまくいくようになります」。さらに「自分ならできる。きっとうまくいくという自己効力感を社員に持ってもらうことが大事です」という。
 また、労働条件を改善し給与が上がれば不満は解消されるが、それだけでは満足は得られず生産性は向上しないと述べた。何をすれば生産性が向上するかは、「達成感」と「承認」されることが重要で、その経験を通じて自己効力感を得ることができると指摘する。ただし、自己肯定感がなければ自己効力感は意味がなく、「達成感、承認、仕事の成果などを人事評価制度で評価し、昇進や給与アップに反映させることで満足感に繋がっていきます」とし、いきいきとした組織の構築を促す。
 最後に谷氏は、「パーパス(経営理念)経営を実践することです。分かりやすく言えば『らしさ』を追及することです。自社らしさとは何か。この『らしさ』を経営理念に織り込むことが大切です」と、パーパス経営の構築を強調した。

ノーコードツール デジタルコンテンツ レクチャーズ・ルーム