大判インクジェットプリンターで新市場を開拓!
画像制作技術を活かして紙の印刷以外の用途を探ろう
画像制作技術を活かして紙の印刷以外の用途を探ろう
今や多くの製版・印刷会社で大判インクジェットプリンターが導入され、業務に活用されています。しかし、色校正機であったり、たまにポスターなどの小ロット印刷で使用したりするケースが多いのではないでしょうか。せっかく導入しても事務所や工場の隅に放置していたり、複数台導入しても実際に使っているのは1台だけであったりするのは、非常に不経済です。導入した以上は、是非とも有効活用したいものです。そこで今回は改めて大判インクジェットプリンターの用途を考え、活用方法を紹介することにしました。紙以外の媒体も出力できる機種であれば、その用途は一気に広がります。GC業界のグラフィックデザイン力を活かして、付加価値の高いものづくりを目指したいものです。
多様な活用が可能な大判インクジェットプリンター
大判インクジェットプリンターを定義しますと、A3判よりも大きい用紙やさまざまな素材に印刷できる業務用の印刷機といえるでしょう。主な用途としては、ポスター、看板・ディスプレイ、ステッカー・ラベル、タペストリー・バナー、横断幕・垂れ幕といった広告・販促物の制作の他、大型写真印刷、校正刷り、ファインアートなどでも利用されています。製版業界では主に校正刷りや大型写真印刷に使用されるケースが多いのではないでしょうか。
また、建築・設計業界ではCAD図面、パース図・プレゼン資料、自動車・バスのラッピング、ウィンドウサイン、壁紙・床材、ブース設営、学校の掲示物、各種イベント装飾などにも活用されています。このような紙以外の多様な素材に印刷できるのが、大判インクジェットプリンターの特性です。そのため非常に幅広い用途で活用でき、多彩なものづくりが可能だということを認識しましょう。
ただし、インクの種類(水性、溶剤、ラテックス、UVなど)やプリンターの対応能力によって活用できる用途は異なります。まずは自社で導入している大判インクジェットプリンターがどんな素材に印刷できるのかを調べておく必要があります。
仮に色校正刷りにしか使っておらず、それも1日に1回程度しか稼働していないのであれば、非常に不経済でもったいないと言えるでしょう。宝の持ち腐れと言っても過言ではありません。そこで紙の印刷以外の用途も探り、稼働率を高めて採算が取れる状況に変えていく必要があります。新市場に参入し、新たなものづくりを目指していきましょう。
また、大判インクジェットプリンターと連携させて活用したい機械として、カッティングプロッターがあります。カッティングプロッターは手作業では難しい細かなデザインや複雑なカットが可能であり、製版・印刷会社でも導入する企業が増えています。紙だけでなく、フィルム、布地、薄手の樹脂などさまざまな素材をカットできます。
さらに、木材やスチレンボード、アクリル板など、印刷された厚くて硬い素材をカットする場合は、一般的なカッティングプロッターでは困難なため、レーザーカッターやCNCルーターといった加工機を導入する必要があります。大判インクジェットプリンターと組み合わせて、新たなものづくりで新市場を開拓してみてはどうでしょうか。
大判インクジェットプリンターの特性とメリット
周知のとおり、一般的に大判インクジェットプリンターはオフセット印刷よりも鮮やかな色で出力できます。その理由の1つとして、染料インクや高性能の顔料インクを使用している点が挙げられます。特に染料インクは透明度が高く、紙の白色を活かしつつ、高彩度の発色を表現するのに優れています。インクを用紙に直接噴射するため、インク本来の色がダイレクトに発色されて鮮やかな色になるのです。
また、オフセット印刷は一般的にはCMYKの4色インクと網点の組み合わせで表現しますが、一方、大判インクジェットプリンターでは、CMYKのインクの他にライトシアン、ライトマゼンダ、グレー、オレンジ、グリーンなどの特色インクを搭載できる機種が多くあります。補色インクを加えることで、オフセット印刷のCMYKプロセスでは再現が難しい鮮やかな幅広い色を再現することが可能になるのです。
さらに、オフセット印刷では紙の種類によってはインクが僅かに沈み込んだり、にじんだりすることがありますが、大判に限らずインクジェットプリンターは、インクを用紙の表面に留めるよう設計された光沢紙やコート紙を使用することで、インクの滲みを抑え、鮮明な発色を実現します。用紙に対するインクの定着度合いが鮮やかさに影響するという点においても、大判インクジェットプリンターのほうがオフセット印刷よりも色域の広さ、高い彩度の色表現を実現できるのです。
また、忘れてならないのは、大判インクジェットプリンターは小ロット・短納期への対応力とバリアブル印刷の柔軟性においても、オフセット印刷よりも優れています。そもそも版が不要であり、在庫リスクが低減でき、1枚からでも受注できる点は大きなメリットと言えるでしょう。
カッティングプロッターと連携したものづくり
鮮やかなグラフィックや画像を大きなサイズで印刷できる大判インクジェットプリンターは、ポスター、看板、車両ラッピング用シートなどの出力に効力を発揮します。そこで印刷された素材や色の付いたシート(カッティングシート)を、指定された形状やデザインに沿って精密に切断するカッティングプロッターは、大判インクジェットプリンターの“相棒”とも言える存在です。大判サイズの加工だけでなく、文字やロゴの切り抜き、ステッカーの作成などにも使用できるため重宝されています。
この両者の機械を連携させることで、「印刷して切る」という一連の作業が行えるようになり、さまざまなものづくりへの展開が可能となります。
今後市場が拡大する壁紙プリント
昨今、大判インクジェットプリンターを活用して壁紙プリント市場へ参入する企業が増えています。カスタマイズやオンデマンド印刷といった、デジタル印刷の強みが発揮できる分野であるため、有望なビジネスと言えます。今後、壁紙プリント市場は成長していくことが予想されるため、印刷業界としても新たな事業の一つとして検討したい領域です。
近年の住宅や商業施設では個性化が進んでおり、独自の画像やデザインを壁紙にしたいというニーズが高まっています。こうした背景から、大判インクジェットプリンターの小ロット・多品種の生産性や色の高彩度性が評価され、壁紙プリントに採用されるケースが増えています。
また、紙だけでなく不織布、ビニールなどさまざまな壁紙素材に対応できることも大きなメリットです。しかも、1つのデザインデータを壁紙だけでなく、他のテキスタイルやサイングラフィックスなどのインテリア製品にも展開できるため、ホテルや商業施設、エンターテインメント分野などの企業では、ブランディングビジネスとして活用することができる点もメリットです。
壁紙プリントはデジタルデータを基に印刷するデジタルプリントが主流になりつつあるため、大判インクジェットプリンターを保有している印刷会社にとって、フォトリアリスティックな高解像度印刷や、複雑なデザイン表現のノウハウを存分に活かせる分野と言えるでしょう。
営業先としてはカスタマイズ性のある市場が有力です。ホテル、病院、オフィス、保育園・幼稚園、学校、工場、カラオケ店、居酒屋、レストラン、住宅など枚挙に暇がありません。
GCJの組合員でも、既に壁紙プリントの事業を開始している企業があります。例えば、GC東京では株式会社プロネートが、「デザインクロス」の名称で壁紙プリントサービスを展開しています。同社では、リンテック社のデジタルプリント壁紙「プリンテリア®」シリーズを使用して壁紙を作っています。また、国土交通省が定めるところの「F☆☆☆☆認定」(シックハウス対策)、防火認定を取得した材料、メーカーが認定した工場で製作している点を強調し、安心安全な製品づくりを訴えています。
壁紙プリント製作が可能となれば、さまざまな場所で応用が利きます。展示会のブースパネルのプリントや、オフィス内のパーティション表面への加工なども可能となり、営業先が広がりさまざまな企画を考えることができるようになります。
また、壁紙の上から重ね貼りでき、しかも剥がせることができるタイプの壁紙もあります。下地処理や糊付けが不要なので、DIYや事務所・部屋のリフォームに適しています。「デザインを変更したい」「色褪せてきたので貼り替えたい」といった要望に応えることができるのは大きなメリットです。壁紙プリントを営業する際にはこのメリットを伝えることで柔軟性を示し、顧客の採用へのハードルを下げることができるでしょう。
貼って剥がせる素材の多くは不織布(フリース)が使われているため、丈夫で引っ張っても破れにくいのが特長です。また、温度変化による伸縮が少ないのもメリットです。市販されているものは住宅用など一般消費者向けが多いため、企業や店舗の顧客に向けてオリジナルの壁紙製作を訴求していくことが望ましいでしょう。
さらに、糊を使わずに壁や床などに貼ったり剥がしたりできるシートも販売されていますから、それらを活用するのも良いでしょう。
「コーワシェルシート」は、自在に剥がせる柔軟性を併せ持つ印刷可能なシートです。誰でも簡単に貼れて剥がせて、しかも剥がし痕を残しません。空港の床面広告、 大手百貨店の床や壁面の装飾などに採用され、室内で幅広い用途に使用できます。 環境に優しい素材(ポリオレフィン)を使用しています。また、静電気を利用して壁に貼り付ける「コーワライティングシート」は、市販のマーカーで書き消しができるホワイトボードのようなシートです。ティッシュでも消せるものが多く、剥がして別の場所に移動させることも可能です。


写真データを壁紙にするケース
例えば、縦2,600mm、横3,200mmの壁にオリジナル写真の壁紙を作成する場合、原寸サイズを一度に出力することは、通常の大判インクジェットプリンターではできません。フラットベッドインクジェットプリンターでも対応可能な製品に限られます。そこで、写真データを縦に4分割にして、縦2,600mm×横800mmの4枚分をそれぞれインクジェットプリンターで出力する方法が一般的です。その際に写真に使用する画像解像度は、実寸で100dpi程度が目安になるでしょう。
施工では、4枚の壁紙を隙間なく揃えて壁に貼っていきますが、専門の施工業者に依頼するのがおすすめです。壁紙プリントを出力した印刷会社が施工してもよいですが、経験と技術を持った施工業者であれば確実で間違いありません。印刷会社と施工業者が業務提携し、分業でビジネスを進めることが理想的です。
ウィンドウサインも広大な市場
大判インクジェットプリンターの用途として、壁紙プリンに次いで有望なのがウィンドウサインです。ウィンドウサインの市場は非常に広く、新規設置から貼り換えまで需要を喚起でき、今後も伸びていくものと思われます。「店舗の窓ガラスに店名や商品名をフィルム印刷して貼りたい」「シーズンに合わせて店舗の窓ガラスを装飾したい」「外から店内が見えないように窓ガラスにウィンドウフィルムを貼りたい」など、店舗やオフィスからの需要は少なくありません。
素材には透明PETフィルムや透明塩ビ(PVC)シートなどを選ぶのが良いでしょう。遮断・断熱フィルム、飛散防止フィルム、防犯・防災フィルム、目隠しフィルム、デザインフィルムなど多彩なフィルムが販売されていますから、外貼りか内貼りか、また耐候性を考慮して用途に適した素材を選ぶことが重要です。
透明フィルムに直接印刷する場合は、インクの定着性が重要になってきますから、インクの選定もフィルムに適したものを選びましょう。できればより鮮明に発色させるために、デザインの後ろ側に白インクで下地を印刷できる白インク機能を持ったプリンターを使うのがおすすめですが、白インクが使えない場合は、デザイン自体の色を濃くするか、不透明な部分を設けるなどの工夫も検討しましょう。
また、フィルム以外の媒体に印刷したものを、ウィンドウフィルムに転写または貼り合わせる方法もあります。既にオフセット印刷などでデザインが施された透明または白色のフィルム(多くの場合、より安価な素材)を、ウィンドウフィルムの上に貼り合わせる方法や、デザインの形にカットされた色の付いたシート(カッティングシート)を、転写シートを使ってフィルムに貼り付ける方法があります。
あるいは、インクを一旦別の転写フィルムなどに印刷して、熱や圧力などを利用してデザインだけをウィンドウフィルム(またはウィンドウ自体)に転写する熱転写印刷もあります。どれを選ぶかはデザインの複雑さや印刷するロット数量、コスト、耐久性などの要因によって異なってきますから、顧客と入念な打ち合わせをして決めていきましょう。
広いウィンドウがある店舗などでは外から中の様子が見えるケースがあります。そこでウィンドウにマジックミラー調のフィルムを貼って、そこにインクジェットプリンターで店舗名や商品名を印刷する方法がおすすめです。外部からの視線を遮って室内からは外の景色を見ることができるため、採用を検討する価値はあるでしょう。
③の写真のケースを見ると、まさにマジックミラー調フィルムによるウィンドウサインが適していることが分かると思います。このような案件に営業をかけてみてはどうでしょうか。
営業においては、既にウィンドウに貼られている広告を見て、デザイン性や耐久性、ブランディング、ニーズなどに合っているのかどうかを見極めて、顧客に提案していくことが望まれます。そうすることで需要を喚起し受注に繋がる確率が高まると言えるでしょう。「より良いウィンドウサインを提案し効果を高めていく」という営業姿勢で新規開拓していけば、受注を増やしていけるのではないでしょうか。まずは身近なオフィスや店舗のウィンドウサインを見て、提案できそうな見込み客づくりを始めてみることをおすすめします。
例えば、④の写真のようなガラスドアの店舗では、常に外から見られるため、よりスマートなデザインで見栄えが良いウィンドウサインを施したいものです。ガラス全体をデザイン性のあるものに変えて、ステッカー類を整理し、社名もより大きく目立つものに変えるなどの企画を提案することができるでしょう。このようなガラスドアのある店舗や企業をターゲットに、まずは自社の周辺地域からの営業活動を始めることで、見込み客づくりを提案します。


フラットベッドUVインクジェットプリンターの用途
フラットベッドUVインクジェットプリンターは、看板やPOP、店舗装飾といったサイン・ディスプレイ分野で使用されるケースが多い機種ですが、硬化インクを使用するためアクリル、ガラス、木材、金属、プラスチックなど、幅広い素材に直接印刷でき、耐久性が高いのが特長です。そのため、前述したレーザープリンターやCNCルーターと連携し、紙よりもむしろ紙以外の素材に照準を合わせたワークフローを構築するのが得策です。また、従来の印刷方法では難しかった立体物や凹凸のある素材にも対応できるため、工業製品や部品、ノベルティ製作などに利用できるのもメリットです。
印刷会社としては、通常の大判インクジェットプリンターを駆使していくか、フラットベッドUVインクジェットプリンターを導入し、本格的に新市場に進出していくかは経営者の判断次第ですが、A0サイズやB0サイズに対応する大判インクジェットプリンターのみでも十分用途は広く利用価値があります。重要なのは、顧客のための企画やアイデアを考え、提案できる営業力が問われるわけですから、まずは既存顧客の棚卸を行い、壁紙プリントやウィンドウサインなど、グラフィックデザインの力が活かせる分野をターゲットにしてみてはどうでしょうか。
大判インクジェットプリンターの紹介
大判インクジェットプリンターとフラットベッドUVインクジェットプリンター3機種を紹介します。他にも多くのメーカーから同様の製品がリリースされていますので、導入する際は用途や機能、使用インク、サイズなどを考慮しましょう。



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