顧客に合ったものづくりで喜ばれる製品を作る
創立して30周年を迎えた有限会社フィット。創業し同社を率いる藤田章二社長は、面談によって顧客の思いを聞き、ニーズに合った提案で顧客に喜ばれる製品を提供することをモットーにしている。また、実用新案を取得し独自の製品を作るアイデアマンでもある。そんなものづくりに長けた藤田社長に話を伺った。
有限会社フィット
〒799-0721
本 社 : 愛媛県四国中央市土居町上野甲1490番地
事務所:愛媛県新居浜市中村松木2-2-25
https://fit-es.com/

代表取締役
藤田 章二(GC四国)

顧客にデザインを提案し印刷以降は他社と連携
印刷会社で写植から電算写植の組版業務に従事していた藤田社長は、その組版のスキルを活かして1994年に独立し、有限会社フィットを創業した。「社名をフィット(FIT)にしたのは、その名の通り、お客様に合わせたものづくりに徹して、ピッタリな製品を提供したいという思いからです」。
今年で創業30年を迎えた同社の事業のメインはDTPである。「創業時にMacを購入し、Adobe Illustratorバージョン3.1を導入してデザイン業を始めました。独学で操作や機能を覚え印刷データを作るという仕事ですが、当時は県内ではどの制作・印刷会社もDTPに取り組んでいませんでした」と、県内でいち早くMacによるDTPでデザイン業を展開してきた。
現在、奥様とご子息による家族経営で臨んでいるが、営業品目は実に多彩である。企画、デザイン、編集などのDTPを主体に、チラシ、カタログ、パンフレット、ポスター、各種帳票類の印刷、ホームページ制作、各種デジタルコンテンツの他、屋外広告のデザイン・製作・施工、3Dプリンター(熱溶解積層法)、レーザー加工機による各種販促品の製作まで行っている。
事業の主体は印刷データを作成し、提携先の印刷会社にデータを渡して印刷物を仕上げ、同社が顧客に納品する方法を採っている。
「製版・印刷や後加工に関しては今治市にある中堅の印刷会社に外注しています。また、印刷データの制作以外で弊社にはできない仕事は、近隣の印刷・製本会社と連携して制作しています」と、他社とのネットワークも構築している。現事務所(営業所兼制作現場)は、前述の印刷会社の新居浜営業所内に構えているとのことだ。
商圏は市内を中心に県内とのこと。基本的には直接顧客に伺い、面談をして顧客のニーズを聞き出し、藤田社長自身がデザインのアイデアを考え提案するという提案型営業である。「お客様に喜ばれる印刷物や販促品を提供することをモットーにしていますから、基本的にはお客様と直接会ってニーズを聞いて、企画、デザイン、印刷方法まで最適なものを提案し制作するようにしています」と話す。
アイデアマンとして独自の製品を発明
ホームページを開設しているため、全国から問い合わせがくるが、「地元で同じような制作をされているDTP会社や印刷会社を探して、そちらに相談し発注されたほうが良いですよ」とアドバイスするとのことで、顧客の立場に立ったアドバイスを心掛けているのが窺える。
また、卓上型の3Dプリンターとレーザー加工機を導入し、祭り用の木札やキーホルダー、ラバー圧着コーチジャケットなど、紙以外でも多彩な素材を使って顧客のニーズに合った販促品を製作している。
営業では時代と共に仕事先に変化が生じてきたとのこと。「当初は地元の百貨店や小売店からチラシやパンフ等の受注がありましたが、百貨店が撤退し、小売店からの受注もなくなってきました」と、紙の印刷需要に陰りが出てきたのは否めない。
そんな状況下、印刷以外の新たなものづくりを始めている。2013年に紙製のスライド式カードケース「FIT’SCASE」を発明し特許を出願した。印刷会社が名刺を刷って顧客に渡す際はプラスチック製または紙製の箱になるが、プラスチックの処分に困ったり、箱を名刺入れに入れ替えて使用する手間が掛かったりする。
同カードケースでは内部に斜面を形成するベロ部を設けて、カードを斜面に滑らせるようにして間隙部から1枚ずつ取り出せるようにした。これで連続してカードをケースからスムーズに取り出せるだけでなく、デザインの多様性、経費削減、ごみ処理問題の解決が望めてメリットが大きいというわけだ。
「カードケースで苦労したのは、カードケース用紙を組み立てて作る際の展開図の設計でした。試行錯誤して何度も展開図を作り直したのを覚えています。このケースには50枚程度名刺を入れることができます。当初は得意先の市役所やお客様にノベルティとして渡していました。評判は良いです」。確かに製品の展開図を見ると、その設計の難しさが伝わり、そこに特許出願の肝があるのが窺える。
また、2022年7月には「簡易書類ホルダー」を実用新案登録した。これも全て紙で製作した環境にやさしい製品である。表に紙のベルトを付けて中の用紙がずり落ちないように工夫している。
このように藤田社長は、アイデアマンとして次々と独自の製品を生み出してきた。さらにボランティアとして地元四国中央市土居町のプロジェクト事業に参画。河川敷にイルミネーションを施す「関川★トゥインクル」の図面を設計し、SDGsの一環とも言える地域貢献事業に取り組んでいる。




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