採用動画編

データは語る

6割以上が採用動画を視聴して志望度が上昇した

 採用動画とは、企業が求職者に向けて仕事の内容や職場の様子などを動画にして、ホームページやYouTubeなどで配信し、企業への理解を深めてもらい、採用活動に活かすことを目的にしたコンテンツです。
 また、会社説明会などの採用活動の場では、主に新卒者に動画を見せることで、企業の雰囲気や具体的な仕事内容、経営者のメッセージを伝える役割もあります。そのため、採用動画をホームページ上で視聴できるようにしている企業も少なくありません。
 印刷産業の将来は決して明るいとは言い切れませんが、それでも「独自色を出している」「業態変革を進めている」といった点を強調し、事業継続のために若い人材の採用を目指すのであれば、採用動画コンテンツを作成してアピールしていくことは重要だと言えるでしょう。
 企業と動画クリエイターのマッチングプラットフォーム「Lumii Video Hub」を運営する株式会社Lumiiが、2024年大学卒業見込みの就職活動経験者317名を対象に、採用動画に関する実態調査を実施したところ、採用動画の視聴によって6割以上の就職活動経験者の志望度が上昇したことが分かりました。
 「採用動画視聴後の志望度の変化について教えてください」という質問をしたところ、「大きく上がった」が8.2%、「上がった」が58.4%と、合わせて66.6%となり、3 人に2 人が志望度が上がったと回答しています。「変わらなかった」が32. 2 %となり、「下がった」「大きく下がった」と回答したのはわずかに1.3%しかありませんでした。(グラフ参照)
 また、グラフは掲載していませんが、「視聴したいと思う採用動画コンテンツは何ですか?(最大3つまで回答)」という質問では、「社員の1日の流れ」が59%でトップとなり、2 位に「事業説明」(48.3%)、続いて「社員インタビュー」(40. 4%)、「職種紹介」(39.1%)と、この4つが上位となりました。就職先の社員が実際にどのように働いているのかを知りたいというニーズは理解できます。採用動画を制作する際には、これらの点を意識して制作することが重要なポイントと言えます。
 同調査では、就職活動経験者の9割が、採用動画はあった方が良いと考えているという結果が出ています。企業が人材を採用する際、動画はもはや欠かせないツールであると言えるでしょう。

採用のミスマッチを防ぐためにも動画は有効である

 なぜ採用動画が求められているのかというと、やはり文字や画像だけでは実際の職場での社員の働き方が伝わりにくいからです。どんな社員が働いているのか、職場の雰囲気やチームの様子などは、動画であれば感じ取りやすくなります。視覚的に伝えることは、採用活動においても効果的だということが窺えます。
 志望している企業の魅力をより深く理解したいという求職者の気持ちに応える意味でも、社員が実際に業務に取り組む姿や事業の進め方などを映像で紹介することで、求職者は入社後の自分の姿をより具体的にイメージできるようになります。
 入社後に「思っていたのと違った」というミスマッチは、求職者だけでなく企業側にとっても不幸な結果を招きます。採用動画を通じて企業が伝えたい情報と求職者が知りたい情報のギャップを埋めることで、入社後のイメージを具体化すれば、ミスマッチのリスクを軽減することができます。これは企業・求職者双方にとって大きなメリットと言えるでしょう。そのためにも、採用動画を取り入れてみる価値があるでしょう。
 また、求職者は就職活動で多くの企業の情報を集めています。1社ごとの情報を細かく読み込むのは時間も手間も掛かります。それは当然のことと言えばそれまでですが、特に若い求職者はタイムパフォーマンス(いわゆる「タイパ」)を重視します。動画であれば、短時間で多くの情報を効率的に収集できますから、特に新卒の就活者にとっては重宝されます。さらに、採用動画を制作している企業は、採用活動に力を入れていて、先進的な取り組みをしているという印象を与えることができます。
 求職者はそのような企業に対して好感を持つものです。企業への理解と、入社後の自分を具体的に想像するための重要な情報源として、採用動画を求めていると言えるでしょう。
 では、印刷会社が採用動画を制作する際には、どんな点に留意すればよいのでしょうか。まずは、印刷業界の魅力を伝えることです。今や文字と画像をレイアウトして印刷物を作るだけが印刷会社の仕事ではありません。企画やデザインを考え、さまざまな加工を施しながら顧客のニーズに応える制作を行うわけですから、そうしたクリエイティブな側面をしっかり表現した動画を作成したいものです。
 そのうえで、社会貢献や情報伝達の重要性、印刷文化を守ることの意義、デジタルマーケティングの必要性などを示し、旧態依然の印刷業界ではない姿勢や、業態変革への取り組みを訴求するような動画で、未来の可能性を示していくことが重要だと言えるでしょう。

YouTube 採用動画 月刊GCJ