印刷技術を極めて価値ある印刷物を提供する

長年の製版技術と印刷技術で培った色の再現性の技術と色の知識で、業界屈指の高品質な印刷を提供している株式会社山田写真製版所。「プリンティングディレクション」を確立し品質第一をスローガンに印刷技術を高めて、高級美術印刷など価値の高い製品を中心に事業展開している。山田秀夫社長に経営理念、事業内容を伺った。


株式会社山田写真製版所

〒930-0063
富山県富山市太田口通り2-1-22
https://www.yppnet.co.jp/

代表取締役社長
山田 秀夫(GC中部)

プリンティングディレクターの下で印刷技術を向上

 株式会社山田写真製版所は1921年に写真製版業として創業し、今年で104年目を迎えた老舗の印刷会社である。創業者は祖父の山田啓三氏で山田社長は3代目である。 
 1967年に北陸地方で初めてカラー製版に着手した同社は、製版スキルの向上に努め、色調の再現性を追求し、業界屈指の製版技術を確立し、“山田品質”として業界に名が知れ渡るまでになった。1990年代になると、いち早くワークフローのデジタル化を推進した同社は、2000年頃から各種印刷機を導入し、製版会社から印刷会社へと業態を変化させていった。

 現在、同社は富山本社の他に、東京本部、金沢支店、新潟支店、長野営業所があり、それぞれ営業と制作部門を有している。従業員数は総勢約140名を擁しており、企画・デザイン、DTP制作、Web制作、動画編集制作、各種データ制作、印刷、製本と、事業内容は多岐にわたっている。
 山田社長は、「『100 年後も残る』印刷物を作っていくという想いで、芸術的・文化的価値の高い印刷物を作ることをモットーにしています」と話す。

 「製版技術については他社の追随を許さないほど成長した弊社でしたが、父親が社長に就いていた頃、製版だけでなく印刷まで含めた総合印刷業を目指すことになりました。そこで印刷の知識にも詳しい人物を招聘することになり、弊社に来ていただいたのが熊倉桂三さんでした。熊倉さんは大手印刷会社に長く勤められて、東京のトップクラスのデザイナーと仕事をされ、高度な製版・印刷技術を持つプリンティングディレクターとして活躍されていた方です。印刷技術を弊社の社員に伝授してくれただけでなく、東京のデザイナーの仕事までも受注できるようにしていただきました」と、熊倉氏の功績は非常に大きいものがあったと話した。残念ながら熊倉氏は昨年他界されたが、高品質の製版・印刷技術は同社の社員たちによって受け継がれている。

 「印刷は原稿、製版、印刷機、インク、用紙の5つの要素で構成されているということを熊倉さんから学びました。印刷に関しては後発でしたから、印刷技術を追求していかなければ市場で優位に立てないと思い、生産部門は一丸となって印刷技術を習得していきました」とのことだ。

芸術的文化的価値の高い印刷物で社会に貢献

 製版・印刷技術の核として確立したのが「プリンティングディレクション」だ。クライアントから製品のデザインコンセプトを引き出し、インク、用紙の特性、さまざまな印刷手法を理解した上で印刷の仕様設計を行い、最高の製品を提供することを目的に実践するのがプリンティングディレクターの役割である。「プリンティングディレクターは、技術的な要素だけでなく、企画・制作意図の具現化、製品全体のクオリティ、適正なスケジュール管理、進捗マネジメント、仕様変更への即応、デリバリーを含めた納期管理、費用対効果などにも精通しておかなければなりません」と、山田社長は話す。

 熊倉氏の下で印刷技術力を高めることになった同社は、2003年にハイデルベルグ社の菊全10色両面印刷機を導入し、高級印刷指向を目指すようになった。この印刷機の特色を活かすために制作した同社の10色カレンダーは、その芸術的な作風によって第57回全国カレンダー展で「全国中小企業団体中央会会長賞」を受賞した。

 これを契機に、カタログ、美術書、写真集、ポスターなどの印刷物を専門に手掛けて、全国カレンダー展や全国カタログ展、造本装幀コンクールなどに毎年製品を出展し、常に上位賞を獲得してきた。グランプリである経済産業大臣賞を何度も受賞するなど多大な実績を誇っている。

 現在、同社には10名のデザイナーが在籍し、6名のプリンティングディレクターを軸に、プロジェクトに応じて最適な印刷物を顧客に提供しているとのことだ。
 今年「konfetti」という新しいブランドを立ち上げた。ドイツ語で“紙ふぶき”を意味し、印刷工程で出る端材を再利用し、紙粘土、メモ帳など自社製品を開発するプロジェクトである。この取り組みは、環境に配慮したサステナブルなビジネスモデルを目指すもので、リサイクル素材を活用することで資源の有効活用を図っている。また、今年7月にはご子息で取締役に就いている山田康智氏が代表取締役社長に就任する予定で、山田社長は代表取締役会長として一線を退く考えだという。事業承継が難しい印刷業界にあって、後継者が決まり、既に新たな事業に意欲を燃やしているというのは非常に喜ばしいことである。

 確立したプリンティングディレクションによって、印刷メディアで他社と差別化し優位性を保持し続けてきた同社は、現在のデジタル化で印刷需要が減少している状況でも、「アナログの紙はデジタルの画面より秀でています。芸術的文化的に価値の高い印刷物を創り、人々に感動を与える印刷物で感受性を育み、心豊かな社会づくりに貢献していきます」と、山田社長は理念を述べて締めくくった。


プリンティングディレクション GC中部 Fellowship