製本に関する質問

A4二つ折り とは?
印刷物を発注する際に、受発注の両者の間で勘違いが起こることがありますが、その例として「A4二つ折り」とは、「A4サイズの紙を二つ折る」ことなのか、「A3を二つに折ったものがA4サイズになる」のか、という疑問がよくあります。
つまり日本語としては「A4二つ折り」は「A4サイズ(210×297mm)を折る」ことですが、一般に印刷物の発注者は、実際の印刷工場ではどのようなサイズの印刷機が使われるかは知らず、サイズについては「仕上がりサイズ」しか念頭にないことを考えると「A4にしたい、二つに折って」と発注者は希望しているかもしれないわけです。

そうであれば、正確な表現として「A4仕上げ・二つ折り」と言ってもらいたいですが、なかなかそういう習慣は身に付きません。これは日本語の曖昧さでもあって、「舌切り雀」は「雀が舌を切るのではなく、舌を切られる」のと似ていて、2つのことをひとまとめにしてしまう日本語の特徴があるからです。
そこで、印刷や紙加工のサイズと、納品の仕上がりサイズを別々に確認することが重要で、簡単な加工でも以下のような簡単な図で表せばよいでしょう。



紙を折ることで複数のページができるわけですから、ページの順番を上の図に書き込み、また左右どちらから開くかも明らかにし、受発注双方で確認しましょう。
用紙の厚さがハガキ以上の場合には、折り目をきれいにするために、折り線に沿って事前に「スジ」を押す加工をします。これが無いと折れ目で紙が割れてしまったり曲がったりしてしまうからです。
また「二つ折り だけど折らない」往復はがきのようなものや、あとで名前を差し込み印刷(プリント)するような場合には、折り目の「スジ」だけを入れてもらって、印刷物を折らないで納品する方が都合がいいので、それらも事前に確認が必要です。



単純な二つ折りよりも込み入った加工が必要な場合は、折り機のできる範囲を確認しておきましょう。



 
表紙や掲示物の傷みを防ぎたい


紙の物理的な弱さをカバーするために、印刷物の表面に加工をする方法はいろいろあります。また印刷後にする加工と、 印刷と同時にする加工があります。いずれも求められる耐久性・耐水性とか、求められる光沢(グロス=つや)、またかかる費用によって、いくつかの選択肢があります。下図は表面の強弱と光沢の関係をあらわし、同時に強弱は費用の高低 に関係しています。



ラミネートはパウチフィルムのようなものを印刷物の表面に熱シリンダで圧着させ貼り付けるものですが、パウチフィルムが100ミクロン以上あるのに対して、一般に印刷では15ミクロンほどのフィルムを使います。主材料はポリプロピレンですのでPPフィルムと呼ばれています。光沢があると邪魔な場合、またフィルムの表面に箔押をする場合には、マット状 のPPフィルムが用いられます。
PPフィルムよりもさらに薄くて強靭・高透明性なものにPETフィルムがあります。これらフィルムの厚みのために光学的に印刷の赤みが強く見える傾向があります。



図の中段のコーティングをする方法は比較的安価なので、主に書籍や雑誌・カタログなどに多く使われています。印刷物の表面にフィルムではなく塩化ビニール系の合成樹脂をローラー塗装することで、光沢出しや印刷インキのブロッキングを防止し、また汚れ防止にもなります。ただしフィルムほどの光沢は出ません。さらに光沢を減らしたマットビニール引きも可能です。
UVニスは紫外線硬化樹脂をコーティングして数秒のうちに固化させるもので、熱エネルギーが不要です。ビニールに比べて強靱な皮膜ができるので、パッケージのような輸送中の摩擦による劣化を防止します。透明性に優れ光沢も出ます。
プレスコートも印刷面にビニール引きをするものですが、100℃~120℃のロールで加熱加圧し冷却することで強い平滑性と光沢を出す方法です。雑誌の表紙・薬品箱・ポスター・カレンダーなど、またカタログの表紙やパッケージに多く使われています。光沢では一番の方法ですが、耐摩擦性や耐水性は他の表面加工に劣る場合があります。



OPニス(Over Print ニス)も塩化ビニール系の樹脂ですが、印刷と同様の方法でインキの代わりにニスを使うものなので、フィルムやビニール引きほどの光沢も耐摩性もありませんが、安価に仕上げたいという要望には応えられます。また印刷物の用途によっては厚い皮膜を作ると不都合になる場合もあり、広く使われています。OPニスも光沢を出すグロスタイプと光沢を消すマットタイプがあります。

水性ニスは、油性OPニス印刷よりは光沢感がありますが、UVニス印刷ほどの光沢感はありません。しかし、印刷物にしっとりとした上品な質感を出す事ができます。水性ニスを乾燥しにくい用紙に塗布すれば、コスレを防止や納期の短縮にもなります。ビニールではなくアクリル樹脂エマルジョンなどを使う水性ニス引きは、印刷機の最終ユニットで塗布できるので、赤外線などの熱で乾燥させて、印刷時にスプレーパウダーをほとんど使わなくてもよくなります。そのため印刷表面のざらつきがなく、OPニスに比べて平滑で、しかも用紙の風合いも残り上品な質感の仕上がりになり、写真集の本文ページにも利用できます。また印刷物の特定部分だけに水性ニスをひくことができます。

A4二ツ折パンフとはA4の紙を2つに折ることか? 折った結果がA4なのか?
従来から発注が行われている場合はともかく、新しい印刷物で仕上げを指定する場合に、曖昧な表現は避けた方がよいので、この件では「A4判を二つ折り」とか「二つ折りのA4パンフ」というほうがマシですが、もっと厳密に言うならば、紙を広げた大きさすなわち『「展開サイズ」がA4の二つ折りパンフ』とか、『「仕上がりサイズ」A4の二つ折りパンフ』となるでしょう。

「A4二ツ折」では一般論としてはA4の紙を2つに折ることと解釈されます。その理由は『二ツ折』はパンフなどの仕上げの用語になっているからです。仕上げの折加工では下図のように、三ツ折その他いろんな形状があって、折った結果は必ずしも紙の規格サイズには収まらないからです。逆に規格のA5やB6に仕上げたいのなら、「規格B6仕上げ」などというのが適切でしょう。

また、両開きになる観音も、中心を折らない「観音開き」と、中心も内側に折る「観音折」とがあり、実寸の紙を折って仕上がり見本として添付した方がよいでしょう。どのページが表紙となり、どっちに開くのかなども明らかにしておきます。

三ツ折以上では、巻き込むのか、ジグザグ状にするのかも、実際の紙見本でしるした方がよいでしょう。巻き込む場合は、見てもらうページの順番をどうするかとか、内側のページは5mmほど小さく制作する必要があるので、デザイン段階から仕上げの状態は決めておきます。

ジグザグ(蛇腹)にする場合は、折り機の機能(段数の制限などの都合)も確認しておく必要があります。
無線綴じは簡易製本といわれますが、上製本はできないのですか?
無線綴じとは折り丁の背をわずかに切断して1枚ごとバラバラのページに切り離した断面に接着剤を塗って背を固める製本です。この時に同時に背に表紙を巻いて、仕上げの三方断裁をしたものが簡易製本になり、雑誌などでよく見かける製本方法で、簡易製本・並製本になります。



上製本はページが綴じられた部分とは別に、ひと回り大きい表紙が用意されて、あとで合体されるような、ひと手間多い製本方法です。



簡易製本と上製本の違いは本の寿命とか耐久性にあり、本の扱いに於いて上製本は見開いたページがほぼ水平になるほど開くことができますが、簡易製本は中央が接着剤で固められているために水平には開きにくく、上製本に比べると背が壊れやすくページが取れやすくなりものとなります。

一般には上製本のページの綴じ方は、折り丁を糸かがりして中央を開きやすくしています。



しかし、接着剤を使った綴じ方でも「あじろ綴じ」といって折り丁の背をバラバラにするのではなく、ページがつながったままになる程度に切り込みを入れて、そこに接着剤を浸透させて背を固めることで、強度と開きやすさ両立させた方法もあります。
本の紙質や厚みにふさわしいように、この切れ込みの入れ方や使用する接着剤を組み合わせることが重要なので、簡易製本よりは難しくなりますが、あじろ綴じが適切に行われていれば、無線綴じであっても上製本にすることは可能です。

面付けの準備はどうすればよいか  (工程)




ページもの印刷ではどのように製本仕上げをするかによって、ページ制作や面付けの指定が異なる部分があります。まず綴じ方が中綴じか平綴じ系(無線綴じ、糸かがり)かによって折り丁を重ねていくか束ねていくかの違いがあり、また平綴じ、無線綴じ、糸かがりかによってノドの開き方が異なるため、見開きページの作り方が少し異なってきます。(参考 Q : 見開きの真ん中にある文字や写真が見え辛くなっている。何が問題か?

折り丁についても、どのような折り方をするのかによって、ページの順番が異なってきます。これらは発注者にはわからないところが多いのですが、用語レベルの理解は、製本のひきだしサイトに用語集もあるので、日常調べておくのが発注時のコミュニケーションに役立つでしょう。企画・編集・制作サイドでは綴じ方の指定とか確認は必須ですが、折り方は印刷・製本のプロに任せて良いでしょう。



面付けに関連して印刷用紙のサイズと紙の目の関係を確認しましょう。上の4面付けの図ではノドの辺が紙の長辺と一致するので横目の用紙にで印刷すると製本適性がよいことがわかりますが、もし実際に使う印刷機が8面付けの大きさに対応している場合は、縦目の用紙を使うことになります。これは印刷現場の都合で変わり得る問題なので、一応注意はした方がよいでしょう。また輪転印刷機のように用紙の目が選択できない場合には、理屈道理に使用適性がよいようにできない可能性もあります。ただ紙の目による癖が出にくい用紙もあるので、紙目が逆でも使われる場合もあります。

印刷会社がこれらを考慮して刷版製版をする前段階で面付けソフトによって、綴じ方・折り方と、それぞれに必要な補正量などの指定、およびマージン・トンボ・背丁/背標などの設定をします。こういった設定は定期刊行物の場合は保存して使いまわしますので、確認は初回だけでしょう。



これに、記事のファイル(PDFなど)を読み込ませて、その際にどこからどこまで、どのようにノンブルを入れるのかを指定する場合もあります。記事のファイル名は編集側台割の順番がよくわかるような名前の付け方をした方がミスを避けるのには良いでしょう。この結果は写真のように画面で確認できますが、大判プリンターで校正紙出力もできます。

発注側で重要なことは、編集台割と通し番号の関係、ノンブルの付け方、ノンブルを付けないページの指定、綴じ方にあわせてのノドの開き方の再調整をしてもらうかとか、などでしょう。




冊子の中央付近のページの断ち切りにある文字や写真が切れてしまった。何が問題か?
「中綴じ」製本の場合は、中央に行くほどページの幅が狭まるようにレイアウトしなければいけません。

製本工程は、多くのページを刷版サイズに多面付けして印刷し、それを折加工することから始まりますが、製本方式によって折り方は異なります。ご質問のような冊子の中央付近が切れるのは中綴じ製本といって、一般的な週刊誌のように全ての折りを束ねて真ん中に針金を通す綴じ方です。つまり、全ての折を重ねてしまうので、紙の厚みの合計分だけ中央付近のページは左右の幅が縮まって、外側の立ち落としの部分が何ミリか欠けることが起こります。

このずれはページ数が多くなるほど、また紙の厚みが厚いほど、大きくなりますので、DTP作業で各ページを制作する段階で、断ち切りの部分を考慮してレイアウトデザインをする必要があります。

そのためにはDTP作業を始める前に印刷後の製本方式を確認し、冊子全体の台割を決めておいて、どのページで幅が狭まってしまうのかを確認しておくことになります。もし台割が確定しないうちにDTP作業を開始しなければならないのなら、ノドの断ち切りを予想したレイアウトデザインをすることになります。

見開きの真ん中にある文字や写真が見え辛くなっている。何が問題か?
「平綴じ」製本でページ数が多い場合はノドの開きが悪くなるので、少し外側にずらせてレイアウトしなければいけません。

背のある本や雑誌を作る場合は、ページの開き具合を考えて製本の方法を決めます。ページを大きく開くには接着剤を使った製本よりも糸かがりがよいのですが、一般の雑誌や冊子は無線綴じの簡易製本をする場合が多く、完全に開くと冊子が壊れやすくなるので、ご質問のように半開きで中央部分が平らでない状態で読むことになります。

そのために接着されているページの最も内側は文字が隠れてしまうことも起こりますので、DTP作業をする前に製本方式を確認して、無線綴じのような平綴じ製本の場合は、レイアウト上で内側に少し余白となる余裕をとるか、見開きに配置する写真を左右に分割する際に、それぞれ中央部分を少しづつダブらせることで対処します。ページの内側(接着側)にどれだけの余裕を持たせるかは、表紙の紙の質や本文の紙の硬さやページ数や接着剤の種類によって異なります。

このように製本方式に合わせてDTP作業を行ったページのデータを、後日別の冊子に再利用しようとする場合には注意が必要です。中綴じと平綴じでは全く異なる調整をしているために、製本方式が変わってしまうとかえって不具合を目立たせてしまうことになりかねないからです。またDTP作業で製本方式に合わせた再調整が必要になります。