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「デジタルコンテンツ制作集団をめざして」<指針>
「業態」と「事業」のあり方を探る
日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会が、平成19 年度事業として掲げた「経営環境基盤に関する事業」の一環として、「デジタル・コンテンツ制作集団をめざして」をコンセプトに、これからのグラフィックコミュニケーションズ(GC、以下略す)業界が取り得る「業態」のあり方を検討いたしました。
これは、当業界がこれからどのように歩んでいったらいいのかを踏まえながら、考えられる典型的なビジネスモデルと具体的な事業展開の方向を探ってみたものです。結果として、新しい産業の全体像(枠組み)を描き出すことができたと思われます。
実際に、どんな業態を採用するのか、どのビジネスに挑戦するのかは、組合員各社の独自の事業戦略に委ねるべきことです。各企業におかれましては、現在のポジショニング(位置づけ)を確認されたうえで、それぞれが強みとする事業領域を築いていっていただければ幸いです。
現状の延長線上には、当業界の未来はありません。組合組織には、各社の事情を踏み越えてまで、全体を一つのかたちにまとめる資格はないのですが、少なくとも、力量を備えた個性的な企業が集まることによって、加入促進につながる求心力ある業界が成り立つと考えています。
組合事業という観点からは、将来にわたって産業ビジョンを模索していくための<指針>を提起したことになります。これをスタート台に、研究会活動その他を通じて推進していくことを提案いたします。
平成19年9月「ビジョン策定」委員会=答申=
我々業界(GC)の経営者は、こう予測します
「企画提案」「印刷」「デジタルサービス」が伸び「プリプレス」「製版」が縮小!!
組合員企業の「業態」は3年前、現在、3年後にどのように変化してきたか、そして変化していくか。「現状実態調査」(平成19年8月時点)にお答えいただいた経営者の見方を、構成比に表してみました。
地域事情を考慮していない全国平均の傾向ではありますが、業態変化の推移でもっとも顕著なのは、従来、本業と認識してきた「製版」と「プリプレス」が縮小しているのに対し、「企画・デザイン」「デジタルサービス」と「印刷メディア製作」が市場開拓の期待も含めて伸長していることです。
今回のコンセプトを具現する役目の「情報サービス」も、少しずつ拡大する方向にあります。こうした変化は、業態別にみた期間推移と将来予測でも裏付けられていて、5年先を見通す数値に明確に示されています。縮小が見込まれている両業態とはいえ、GC業界の中核であることに変わりはなく、むしろ、他の業態と上手に組み合わせて、融合させた業態のなかで付加価値を確保していくという考え方が大切と考えられます。
過去の実績より将来予測の方が、全体の回答数が高くなり、また、次第に事業の多様化が進んでいるという事実から、業態を戦略的に選択して、幅広い視点で構築していくことの重要性が理解できます。
多様化する「業態」のなかで、選択される「事業」
めざしているビジネス領域に明確な方向性
期待できる市場は「商業」「サービス業」「情報産業」
印刷会社・製版会社の下降で、元請け指向くっきり
未来のグラフィックコミュニケーションズ産業は、このように展開しましょう。
●印刷の「前工程」だったプリプレス ――――――――――――――●
プリプレスは、印刷メディアをつくるための前工程であり、デジタル化のなかで、最近はDTPがその役割を担ってきました。DTPでは、文字組版、ページレイアウト、写真データ取り込みを担当し、さらに色分解、カラーマネジメントまでおこなってきたわけです。出来上がったページアップデータは、「プリプレスデータ」として次の刷版工程に渡してきました。これでは、どうしても印刷が本工程ということになり、プリプレスは前工程の立場から逃れることはできませんでした。あくまで、印刷会社の下請けに止まっていたのです。
●データ加工を「本工程」にする ――――――――――――――――●
しかし、ここに「デジタル・コンテンツ」という概念を導入すると、データ加工することが本工程という意味をもつようになります。DTPの前に位置づけることが可能となり、結果として、DTPは印刷への橋渡しをおこなう「フロントエンド」の立場に変わります。
これまで無意識にDTPが担ってきた文字処理、画像処理、情報処理の仕事は、すべてデジタル・コンテンツ制作の本工程に含まれ、バラバラなコンテンツからなるデータベースをいったん構築して、その後でDTP工程へ流すという新しい関係が確立されてきます。印刷メディア加工はそれに続く後工程という流れになり、印刷会社を介さずに顧客から直接、受注できるという新たな条件が生まれます。
私たちの産業には本来、文字組版と色調管理という二つの具体的な力があります。これらを土台に置きながら、コンテンツの制作ノウハウと通信ネットワークの有効活用を重合加味し、それにデータベースの運用をからめながら展開していくのが得策でしょう。
●コンテンツを出発点に多様な船出 ―――――――――――――――●
このような「コンテンツ制作」を出発点にして、DTP-プリプレス-マルチメディア(印刷を含む)に進むという新しい産業は、「グラフィックス」を共通項にして各企業が顧客と「コミュニケーション」を築くことで実現します。従来の製版業を中核にして、コンテンツを駆使しながら、多様な世界に船出していくと言い換えることもできます。これは、まさにGC業界が実践しようとしているビジネス領域そのものであり、これからめざすべき「次世代のGC産業像」に他なりません。現在、組合員各社が展開している多様な業態(ビジネススタイル)も、この枠のなかにほとんどすべてが含まれており、お互いの棲み分けと仲間同士の「コラボレーション」をはかる“土俵”になるわけです。
●得意のビジネスモデルで棲み分け ―――――――――――――――●
新しいGC産業の全体像(枠組み)のなかから、図に示したような幾つかの典型的な「業態」が導き出されてきます。そのなかから、専門とするビジネスモデルをいずれか単独で、あるいは組み合わせた融合形態で、さらには、トータルに工程を辿っていく総合形態として選択・追求することによって、自社の強みを発揮した貴社ならではの「企業基盤」が築けるはずです。
これらのビジネスモデルを各社それぞれに実践しながら、GC産業全体で有効な「ソリューション」を提供し、それを「ビジネス支援」のかたちで顧客に還元するという強力な「マーケティングサイクル」をつくっていきましょう。そのためには「データデザイニング」という感覚で、製造業だけの“囲い”から抜け出して、情報産業の一画を担っていくという姿勢が大切なのです。