2020年度(56事業年度)事業報告書

自 2020年4月 1日
至 2021年3月31日

【事業概要】

 いまだ終息の見えない「新型コロナウイルス」の感染拡大の影響は、世界規模で経済に深刻なダメージをあたえています。この「コロナ禍」による経済の悪化や、容赦ない景気減退が数々の「過去最悪」の記録を残しています。しかし、経済の不安はまだあるものの、徐々にではありますが、想定よりも悪影響は小規模にとどまっていると思われます。ワクチン接種などが急進すれば、コロナ禍以前の水準に近い回復への好循環を期待したいものです。
 さて、私たち日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会の2020年度(令和2年度)の事業を振り返りますと、財政事情は楽観視ができる状況ではなく、想定以上に厳しい「財政危機」での組織運営でありました。
 厳しい決断のもと次代に向けた「組織」の存在意義を考える立ち位置で、基本的に継承する事業遂行にあたりました。
 また何より、「コロナ禍」の環境で事業推進を続けるという厳しい1年ではありましたが、微力ながら存在感のある組合組織として業界の振興・発展に資する「事業活動」を展開してまいりました。
 【実施事業】は、個性豊かな集合体(団体組織)として、情報発信の強化、情報の共有化に努めてまいりました。とくに「広報事業」関連の機関誌・月刊『gcj』の編集・発行を通じて、求められ、役立つ「経営」や「技術」等の情報を、さまざまな角度や分野から収集し提供してまいりました。さらに、Webサイトの充実を図るため、公式サイト【GCJホームページ】とポータルサイト【GCのトビラ】での情報発信も展開してまいりました。
 【一般事業】では、[組織基盤・運営]事業をメインに据えて、微力ではありますがそれぞれの事業を推進し所期の成果を収めました。
 このように事業推進に努めることができましたことは、全国8会員(工業組合)所属の組合員企業各位のご理解とご支援、ご協力の賜物と深く感謝いたします。
 日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会の「2020年度(令和2年度)事業報告書」は次のとおりです。


【実施事業】

Ⅰ.[事業戦略]事業の推進

 私たち日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会(以下、GCJと略す)は、組合の事業活動が大きく変貌するなか、直面する課題に微力ながらも取り組み、次の時代に繋がる事業の「情報」の提供、発信に努めてまいりました。

1.業界内外に存在感のある集団(団体組織)としての情報発信に努める

 業界内外に広く、私たち集団(団体組織)の存在感を知らしめる広報・情報活動に努めました。その一環として、機関誌・月刊『gcj』をはじめ、公式サイト【GCJホームページ】及びポータルサイト【GCのトビラ】の編集・発行を通じて、全国の組合員への情報提供だけでなく、積極的に私たち業界の存在感やその集団(団体組織)を顧客(お得意先)に向けて知らせる「広報活動」を展開してきました。
 機関誌・月刊『gcj』では内容をより充実させるため、紙面構成も多角的、多方面な視点で、経営環境やマーケティング情報、そして日進月歩の技術関連情報など、常に最新の情報をバージョンアップした編集、構成に努めました。
 “伝えたい情報”を“伝えたい人”に、を基本に、業界の特徴ある「情報の発信基地」的な活動を展開してきました。
 また、賛助会員や関連業者の多数の企業の皆さまには、随時1~2ページを設けて「営業」「マーケティング」などの効果を引き出した、記事編集形式の『協賛記事広告』に多大なご理解、ご協力をいただき、紙面の充実に努めました。

(1)機関誌・月刊『gcj』の発行(年12回)

広報事業 

 機関誌・月刊『gcj』の充実した誌面内容をめざし、毎号時勢に即した特集や「人物紹介」「業界関連の先端技術」「マーケティング」などを連載、さらに全国の業界内外の動きや関連するニュースなど、多彩な情報内容で編集・制作をしています。
 今年度の各月の「特集」テーマは次のとおりです。
2020年
4月号:災害から大切なデータを守る!
5月号:急がれる「事業継続計画(BCP)」の策定と運用
6月号:テレワークで印刷業の働き方が変わる!
7月号:日印産連 2019年度「デジタル印刷アンケート調査」
8月号:アイデアを具現化する力
9月号:印刷会社が知っておきたい発注担当者の声
10月号:印刷業が目指すべきDXとは?
11月号:市場が拡大する抗菌印刷
12月号:印刷会社のコンテンツマーケティング実践法

2021年
1月号:クリエイティブ思考で乗り越えよう!
2月号:オンライン商談で営業の成果を上げる!
3月号:page2021基調講演 コロナ禍をチャンスとして捉えデジタル変革を
※当会機関誌・月刊『gcj』発行にあたっては、「協賛広告」並びに「協賛記事広告」にご協賛、ご協力を賜りました各企業様には深く感謝を申し上げます。

(2)公式サイト【GCJホームページ】で情報発信

 公式サイト【GCJホームページ】(https://www.gcj-page.or.jp/)では、私たちGCJの認知と存在感を高めるべく、その活動や事業内容を広く業界内外に向け、的確な情報の更新と情報発信を実行し、広報に努めました。

(3)ポータルサイト【GCのトビラ】で情報発信

 GC東京が主導で情報発信しているポータルサイト【GCのトビラ】(https://gc-tobira.jp/)は、業界内外のアクセス数も増えて認知度も高まりました。
 ビジネス展開や制作に関わる各種のソリューション情報、ビジネスに直結する「制作会社検索」、さらに登録会社の検索機能の充実など、ユニークなサイトの運営に努めました。

サイト内の主なコンテンツは次のとおり。

 サイト内の主なコンテンツは次のとおりです。
①プロのものづくり集:組合員企業の最新の技術や独自のアイデアによるものづくりのビジネス事例を紹介しています。
②制作会社検索:登録した企業の社名、都道府県、事業分類の各分類から検索ができます。
③制作お役立ち便利帳:制作に関するさまざまな疑問に専門家が答えています。
④匠のカタログ:ユニークな技術や卓越した技を持つ制作会社の紹介ページで、各社の特長を1ページにまとめて紹介しています。会社概要はもちろん、得意技や制作に対する思いなど、顧客のニーズに合った会社が見つけられます。

(4) 「GCJクラウドサービス」の実施

 業界が評価して運営形態を管理し、適正に組合員企業に提供する「クラウドサービス(バックアップサービスのみ対象)」は、GC東京の賛助会員企業(株式会社キクミ)と運営を連携、協力して低コストでの提供を実現しています。

(5)各種情報の提供

①外部機関などの各種情報は、伝達の利便性を活用してFAX通信で配信します。
②日印産連・「Web版印刷用語集」に協力及び普及・啓発に努めています。
 日印産連の『現場で役立つ印刷用語集』Web版は、【GCJホームページ】及び【GCのトビラ】に下記のバナーを貼付、クリックすれば活用できます。

2.環境保護対策の推進

(1)環境保護印刷推進協議会への協力
 GCJが主導的役割を果たしてきた「環境保護印刷推進協議会(E3PA)」の「認証制度(クリオネマーク)」の普及、啓発などの事業活動を理解し、協力しました。また、同協議会が企画するイベント、セミナーの開催案内をPRし、参加の協力をしました。
(2)一般社団法人日本印刷産業連合会「グリーンプリンティング認定制度」への協力
 一般社団法人日本印刷産業連合会(以下、日印産連と略す)が推進する認証制度「グリーンプリンティングマーク(GPマーク)」の支援や普及、啓発に協力しました。
(3)日印産連「環境優良工場表彰」への協力
 印刷関連企業の優れた環境への取り組みを表彰する2020年度「第19回印刷産業環境優良工場表彰」の【経済産業省商務情報政策局長賞】に「株式会社光陽社 飯能プリンティングセンターBASE」が受賞の栄に浴しました。
(4)環境関連の情報提供
 環境保護に関連する資料の収集及びその啓発に努めました。また、環境関連法令等による職場環境改善、労働安全衛生等の理解並びに対策に資するため、関係官庁・団体等の情報収集、その提供、発信に努めました。

3.日印産連の事業への協調

 日印産連傘下の10団体の一つとして、その役割や活動テーマ等を理解し、同会の事業遂行への協調に努めました。各種委員会や研究会、部会などに委員を派遣するなど適切な協力関係と交流を促進し、必要な情報の「収集」と「提供」を通じてコミュニケーションを図ってきました。

【一般事業】

Ⅱ.[組織対策]に関する事業の推進

1. 組織基盤・運営対策事業の推進

(1) 全国8会員(工業組合)の組織基盤の確立

 全国8会員(工業組合)と緊密な連携、協力関係の維持に努め、事業活動などを通じ、同業仲間の連帯意識を持てる組織活動に努めました。

(2) 「組織基盤」や「事業運営」などの対応策を多方面から検討

 厳しい「財政事情」が憂慮されるなか、その対応策を役員会等で多方面から真摯に意見交換し、協議を重ねてきました。

(3) 協力関係業種(業界)等との交流を促進

 この「コロナ禍」にあって所期の成果を得ることが少ないなか、できる限りの協力関係業種(業界)との相互理解と協調を探ってきました。

2.関係官庁・関連団体との折衝

 業界の発展向上に資するため、経済産業省、厚生労働省をはじめ、全国中小企業団体中央会など関係諸官庁、関連団体と折衝を行ってきました。

3.各種表彰の実施及び推薦  

 日印産連主催『2020年印刷文化典』の「印刷功労賞」に東 光彦氏(GCJ副会長・GC東北理事長)、「印刷振興賞」には竹ノ上藏造氏(GCJ常務理事・GC東京理事)がそれぞれ受賞しました。

4.各種事業の推進

(1)経営・技術関連等の事業の推進

 業界を取りまく「経営」や「技術」に関する情報を収集、広報の機関誌・月刊『gcj』を通じ情報提供に努めました。

(2) 情報セキュリティ対策の推進

1)「情報セキュリティ対策」関連の情報提供
 企業活動における「個人情報の保護」「情報セキュリティ」など日印産連の事業に協力、関連する情報提供や啓発に努めました。

2)「知的財産権」等の情報提供及び啓発・普及を推進
①知的財産権に関する知識や業務(コンテンツ制作)に関わる「著作隣接権」など、権利の趣旨内容の情報収集に努めました。
②知識財産権に関連する情報を、制作協力の機関誌・月刊『gcj』で紹介し、また同誌に日印産連の機関誌『JFPI』掲載の「知的財産アドバイス」から情報を転載し、その啓発に努めました。

3) 福祉共済事業の推進
 全国8会員(工業組合)と協力して「生命共済制度」「退職金共済制度」等の各種制度の加入促進に努めました。
 また、一般財団法人全国中小企業共済財団と連携して事務の合理化、効率化を行いました。

4) 労務対策の実施
 労働環境の変化に対処するため、関係官庁と協力して指導並びに機関誌・月刊『gcj』等を通じ資料等の提供を行いました。

5.次期「日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会全国大会」の検討

 業界の発展及び全国組合員の交流促進のため開催する次期(第63回)「日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会全国大会」は、諸般の事情を考慮して開催時期を1年延長(2022年)することとなりました。
 改めて大会開催の「意義」「運営方法」、また開催する担当の選定などを含めて、多方向、多方面から鋭意検討をすることになり、「実行委員会」を設置して、全国8会員(工業組合)から実行委員を選出、準備に入りました。

6.「新型コロナウイルス」に関するアンケート調査を実施

 2020年8月に、全国の組合員に「新型コロナウイルス」に関するアンケート調査を実施しました。調査結果は次のとおりです。
 設問の回答数は25社ではあったものの傾向が示され、組合員のおおよその動向や考えを知ることができました。2020年7月の売上高と前年の売上高を比較する質問では、対前年同月比3割以上落ち込んだ組合員もあり、新型コロナウイルスの影響が如実に表れていることが分かりました。
 「新型コロナウイルスの発生は、貴社の企業活動に影響を及ぼしていますか」の設問では、「影響が継続している」と24社が回答、わずかに1社のみが「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」と答え、ほとんどの組合員に影響が出ていることが判明しました。
 具体的な影響については(複数回答)、「売上(来店客)が減少」が24社で、次に「イベント・展示会の延期・中止」19社、「商談の延期」12社、「営業(稼働)日数が減少」10社となり、売上については回答した組合員全てが減少したと答えました。
 その売上に関しては、2020年7月の売上高が前年同月と比較してどうだったかという質問で、「下回った」が21社と最も多く、「変わらない」との回答は2社ありました。
 また、「今年7月の売上高は前年同月を「100」とすると、どの程度でしたか?」という質問に「回答できる」と答えた組合員は20社ありました。その回答できると答えた組合員に、前年7月の売上高を「100」とした場合に、2020年7月の売上高を0から999の整数で答えてもらったところ、「65」と「70」と「90」が同数の3社ずつとなりました。
 全体の平均としてはバラツキかあるものの70%後半と見られ、つまり売上高が平均で20%以上落ち込んでいることが分かりました。なかには4割減の60%と回答した組合員が2社ありました。
 さらに、2020年8月以降で12月までを目途に、「一月でも売上高が前年同月比で50%以下に落ち込む可能性はありますか」という設問では、「可能性がある」と回答した組合員が14社もいて、半数以上が前年同月比の売上高が50%以下になる可能性があるという、深刻な状況下に置かれていることが窺えます。
 「新型コロナウイルス感染症特別貸付」や「セーフティネット貸付・保証」、「民間金融機関の各種融資」、「国の各種給付金」などの支援策を利用したかどうかの設問では22社と、ほとんどの組合員が利用したと回答しました。
 具体的に「どんな支援策を利用したのか」を尋ねたところ(当てはまるもの全てを選択)、最も多かったのが「持続化給付金」で20社、次に「雇用調整助成金」16社、その後に「民間政府金融公庫による実質無利子・無担保融資(新型コロナウイルス感染症特別貸付)」15社、「商工中金による実質無利子・無担保融資(危機対応融資)」6社と続き、新型コロナウイルス対策用である公的助成金を多くの組合員が利用していることが分かりました。
 「新型コロナウイルスを理由にして、取引先からの支払いの延期要請を受けたことがありますか」という設問では、「延期要請を受けたことがある」と回答したのは2社と少なく、ほとんどの組合員は今のところ支払いの延期要請を受けていないことが判明しました。
 「コロナが長引いた場合、廃業(全ての事業を閉鎖)を検討する可能性はありますか」という設問では、13社の半数以上が「廃業はない」と回答したものの、6社は「廃業がある」と回答。さらに「廃業を検討する可能性があるのは、いつ頃ですか」という踏み込んだ設問については6社から回答が得られ、半数の3社が「13~24ヵ月以内」と回答し、2社が「7~12ヵ月以内」と答えて、廃業の危険性に対する深刻度合いが感じられ、予断を許さない状況にあることが分かりました。

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