RoboticProcessAutomationで定型業務を自動化する!
自社に合ったRPAツールを選定し活用する体制を構築する
自社に合ったRPAツールを選定し活用する体制を構築する
「RPA」という言葉をご存じでしょうか?「 Robotic Process Automation」(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略称で、PCなどのコンビュータ上で行う定型的な業務を自動化するためのソフトウェアと定義されています。人間よりもRPAに業務を任せて自動化したほうが正確、効率的でコスト削減にもなるということで、近年急速に企業の間で導入が進んでいます。印刷会社も定型業務を自動化することで、同様のメリットを享受できるため、今後導入を検討する価値があると言えるでしょう。今回はRPAの目的、RPAツールを導入する際のポイントについて述べてみます。
RPAは明確な手順と判断基準がある業務を自動化する
今日、日本は労働人口が減少しており、中小企業を中心に人材不足が問題になっています。印刷会社においては、印刷産業の縮小、デジタル化・IT化、働き方改革の遅れから新卒採用が厳しい状況にあります。中でも小規模印刷会社では営業部門、生産部門の雇用がままならないのが実情です。
そこで、RPAツールを活用しPC業務を自動化することで、定型業務の人員を削減し人件費の削減を図っていく経営が重要度を増しつつあります。つまり、売上に直接関わることがない定型業務にRPAツールを導入して、定型業務を自動化することで、ヒューマンエラーの防止、コスト削減、品質・精度の向上を図って、より生産性を向上させる企業が増えています。
しかし、今日では市場に多くのRPAツールが出回っており、何を導入すれば良いのか分かりづらいのが実態です。ツールの選定を間違えてしまうと、機能が不足して自動化したい業務が思うように行えなくなったり、操作が予想以上に難しかったりして、使いこなせない事態になることがあります。
RPAツールはAIと違って自分で判断することはできません。得意としているのは、繰り返し行う単純な反復業務になります。例えば、「誌面をレイアウトデザインする」「ロゴマークをデザインする」「設計図を描く」といった、人によって結果が異なる作業を自動化することはできません。RPAツールにできる作業は、業務に明確な手順と判断基準があるものだけです。つまり、誰が行っても同じ結果になる作業をRPAツールが代わって作業を自動化するというわけです。
では、RPAツールができる業務はどんな分野があるのでしょうか? 部門別に用途を表にしてみました(表参照)。定型業務の多くは、経理・総務・人事・労務などのバックオフィスと呼ばれる業務に活用されることが多く、営業とは異なり売上に直接貢献するわけではありません。もちろん、これらバックオフィス分野の中にも自動化できない業務はたくさんありますから、RPAツールを導入する際は、どの業務が自動化できるかを見極める必要があるのは言うまでもありません。
また、業種ごとにも用途は異なっており、印刷業界特有の業務もRPAツールで自動化することも可能なものが出てきています。これについては後述します。
バックオフィス業務の自動化はどの企業にも当てはまる
まず、表の部門別を見ますと、どの企業にも当てはまる業務であることが分かります。誰が行っても同じ結果でなければならない業務と言えるでしょう。表に示した業務を洗い出して、RPAツールを用いて自動化することで、業務が効率化できるのであれば、さまざまなメリットを享受することができます。そのため、RPAの導入を検討してみる価値は大いにあると言えます。
ICT市場調査コンサルティングのMM総研が、国内企業1,530社(年商50億円以上:1,012社、同50億円未満:518社)を対象にWebアンケート調査をした結果、2022年9月時点で、RPA 導入率は年商50 億円以上で45%、また年商50億円未満では12%となりました(グラフ参照)。
RPAは2016年辺りに市場にお目見えするようになったのですが、その後、急速に導入が伸びたのが年商50億円以上の大企業でした2018年に一気に36%まで跳ね上がったのは、当時働き方改革が国策として求められるようになり、多くの企業が業務改革に乗り出したに、RPAツールのような業務を自動化するツールが導入されるようになったことが背景としてあるからです。
同時に新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって、オンラインで仕事をする状況が増えて、定型業務の自動化を進めるようになったのも、RPAの導入が伸展した要因と言えるでしょう。
しかし、年商50億円未満の中小企業にはRPAはまだ普及しているとは言えず、微増にとどまっているのを見ると、大企業と中小企業のRPAの必要性に対する意識の違いが明らかです。大企業はIT化やデジタル化、コスト削減に積極的で、有効活用できるツールがあれば導入するという考えがあるからだと言えます。それだけRPAツールの重要性を認識しており、導入コストを組み込んでいることが窺えます。
一方で、RPAツールを上手く使いこなせている企業とそうでない企業があるのも事実です。せっかくRPAツールを導入しても、使用されないまま「宝の持ち腐れ」になってしまっているケースが後を絶ちません。「導入すれば苦労せず簡単に業務を自動化できる」と、思い込んでスタートしてしまうと、「何度もエラーが発生してしまう」「そのエラーの原因が判明できず改善策が分からない」「RPAを購入したメーカーやベンダーに相談しても埒が明かない」といった状況が発生することが結構あるようです。
RPA 領域で包括的にサービスを展開するPeacefulMorning株式会社が、2021年3月にRPAツール導入企業を対象に「RPA活用における意識・実態調査」を行い、100社から回答を得た結果によりますと、「RPAツールについて、導入時の期待通りに活用できていますか?」と尋ねたところ、約60%の企業が「分からない」「あまり活用できていない」「期待通りに活用できていない」と否定的な回答をしました。
実態として、半分以上の企業がRPAツールを使いこなせていないことが分かったのです。原因は、導入時に社内体制が構築できていないことや、RPAツールを作動させる担当者のスキルの習得不足、対象業務の選定に問題があるということなどが考えられます。そのため、選定する際に入念に事前準備することが大切になります。導入で失敗しないためのポイントは、購入先を複数、できれば3社以上からRPAツールを比較検討すること。オリジナルのRPAツールの開発を依頼する場合は、開発企業と自動化する定型業務について密に打ち合わせし、開発企業が自社と同じ認識の下で開発に取り組むことが求められます。
また、購入したRPAツールのベンダーがしっかりとサポートしてくれるのかどうかも重要です。トラブル時の対応や的確な改善策を示してくれて、親身になって対処してくれるベンダーから購入するのが一番です。
ツールを購入する場合は、業務内容の分析と、今まで手作業で行っていた業務の棚卸を行い、誰が見ても分かるように整理することが大切です。これにより、業務の属人性を排除し、業務の時短、人件費の削減、そして正確な業務を行うことが可能になります。自動化しやすい業務フローとはどういうものかを見直し、繰り返し行っている作業、大量データを決まったルールに基づいて処理する作業などをRPAツールに任せて、人の判断が必要な業務は人が行うというように業務を棲み分けていくことが大切です。
一般業務と印刷ワークフローでの導入事例
具体的な事例を挙げて説明します。経理部門ではさまざまな伝票を扱うわけですが、例えば、請求書はアナログ作業に終始していないでしょうか。請求書を管理するRPAツールの中には、帳票の作成から取引先への送信、書類の管理までオンラインで完結するシステムが既に存在しており、これにより従来行っていた紙やExcelでの書類作成、印刷、封入、郵送の手間を省くことができるのです。
もちろん、市販されているRPAツールは一般的な業務に合わせて開発しているのですが、それでも自社の事情に合った請求書管理ツールは探せば見つかるものです。活用できるかどうかを見極めて、自動化したい業務範囲、郵送代行の必要性、既存システムとの携の有無などを検討する必要があるでしょう。そして、何といっても経理担当者が使いやすいツールであるのかどうかが最重要になるのは言うまでもありません。
某大手印刷会社では、RPAツールを活用して請求書のデータ入力業務を自動化して、月間の入力作業時間が約50%削減されたという報告があります。
また、RPAツールを活用して印刷関連業務を自動化した事例が次々と報告されています。デジタル印刷機によるPOD(プリント・オンデマンド)は、その特性からRPAツールとの親和性が高いと言えるでしょう。
PODの印刷工程でRPAツールを組み込むことで、本社で作成した印刷データを指定したフォルダに投入すると、離れた工場のPOD印刷機のモニターやメールを通じて、担当オペレータがデータ入稿の通知を確認し、データ内容を承認するだけで自動的に印刷できるワークフローを構築している印刷会社があります。これによって、POD印刷機に担当オペレータがデータを手入力する必要がなくなり、印刷時間の短縮、誤入力防止による正確な作業が実現でき、多くのメリットをもたらしています。
その他に、インクや印刷用紙などの在庫の自動監視と再発注のプロセスにRPAツールを組み込んで在庫管理を行った結果、在庫過剰や不足による損失を大幅に削減した印刷会社もあります。
さらに、Webからの注文情報をRPAツールで自動収集し、制作部門への指示までを自動化することで人的ミスをほぼゼロにし、作業速度を従来の3倍向上させた印刷会社もあります。
既にRPAツールを導入し、活用している印刷会社がありますから、それらを参考にして、自社で導入した場合にどのような業務を自動化できるかを考えてみるのも良いでしょう。
運用に失敗しないための方策
RPAツールは、一般的に数十万円以上しますから、中小企業にとっては運用が失敗に終わればかなりの損失になるため、できるだけ失敗は避けなればなりません。ここで最後に、RPAツールを導入する際に失敗しないための方策を改めて示しておきます。
- 何のために導入するのか目的をしっかりと社内に伝達し、関係者全員が共通認識を持っておく。
- 担当者1人に任せておかないで、組織的に取り組むこと。担当社員の退職や休職の場合を想定し、同じ部署の社員がすぐにRPAツールの操作を引き継げるようにしておく。
- しっかりとサポートしてくれるメーカーやベンダーから購入し、自社業務をきちんと自動化できるツールを選定する。
- 業務を自動化できても、費用が高くて運用を続けていくのが困難になっては意味がないため、費用対効果を十分に考えて採算が合うRPAツールを導入する。
- 繁忙期になれば、RPAツールの操作が後回しになって作業時間を確保できないケースがある。そのため、計画を立てて、事前にスケジュールに従って実行する。
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