人事評価制度を作る目的と留意点
そこが知りたい!gcj MANAGEMENT(146)
人事評価シートを作成し適正に評価する
社員の仕事を公平公正に評価するためには、一定の基準を設けた人事評価制度を作成し運用する必要があります。人事評価制度が機能すれば、適正に能力を評価する基準が作られ能力に合った給与や待遇を設けることができるだけでなく、適正な職種へ配置したりすることが可能になります。社員のやりがいやモチベーションが高まり生産性が向上するだけでなく、人材育成にも繋がるでしょう。
では、人事評価制度はどのように作っていけばよいのでしょうか。人事評価制度と聞くと「会社が社員の給与を一方的に決める仕組み」であるとか、「社員の仕事ぶりを上司が評価する仕組み」という印象を抱くことが多いかと思います。しかし、これらは人事評価制度の本来の目的ではありません。本来の目的は会社が望む方針・方向に社員を成長させ、持続可能な強い組織を作っていくことにあります。そして、全社員が豊かな生活が送れるようにするためでもあります。
人事評価制度を成功させるポイントは、自社の課題を踏まえたものを構築することと、しっかりと制度を運用・定着し、状況に応じて改善できるようにすることにあります。企業は前述の目的に向かって方向性を示す必要があるのですが、それは5カ年計画といったような中長期の経営ビジョンになります。
1年に一度は経営計画を発表する場を設けて、それぞれの部署の目標や仕事について報告するわけですが、それを社員全員で共有することが大切です。この経営計画の発表会では、社長が次年度の会社の事業方針とプロジェクトの計画、目標を訴えるのですが、それを実現するために人事評価制度を作ったわけですから、社員全員に経営方針を理解し共感してもらうことが必要になります。
人事評価は、明確な評価基準を設けて社員一人ひとりの仕事を適切に評価するものです。それによって、社員も努力のしがいがあり仕事のモチベーションの向上に繋がります。人事評価制度は企業の進むべき方向性を社員に認識させるものでもありますから、経営方針を共有させ組織を一体化させていく上でも必要です。
人事評価には、全社員に企業や部署の結果にも関心を持ってもらい、一人ひとりの業績プロセスを評価する「業績評価」、目標の達成度など実績を評価する「成果評価」、実行力や改善力など仕事の能力を評価する「能力評価」、責任感など勤務態度を評価する「情意評価」の4つがあると言われています。これら4つを統合して評価していくことになるわけですが、そのためには「人事評価シート」を作成する必要があります。
「人事評価シート」は、社員の現在の仕事内容、目標、課題などの情報を記入したシートで、評価が適切かどうかを確認するため、社員が自己成長を振り返るため、人事全体を管理するためという3つの目的があります。人事評価シートは半年または1年に一度、リーダーと社員が話し合いながら作成しますが、事前の面談時に目標を設定し、期間終了後に再び面談して仕事ぶりを振り返って評価するケースが一般的です。
不満を解消し課題や問題に対処すること
社員は自分の取り組むべき課題を把握するために、評価基準づくりの元となる情報を集めて目標を設定するわけですが、最終的には自身のスキルアップやキャリアアップに繋げていくことがポイントです。
社員がリーダーから評価された内容を見たり聞いたりしたときに、行動に結びつけて考える必要があります。その際に「上司の指示に基づいて行動できていたか」という視点では、「行動できていたかどうか」を事実と照らし合わせて判断するようにします。そうすることで、リーダーは適正な評価ができる上に、社員も納得できます。また、評価から今後の行動の改善を図ることができます。
人事評価制度の運用が失敗するケースは、「評価するリーダーの不満」「社員の不満」「評価結果や賃金制度が活用できていない」といった原因が挙げられます。
「評価するリーダーの不満」については、印刷会社ではプレイングマネージャーが多いですから、個人の目標を持つと同時に部署の売上達成に向けても取り組みます。そこに部下たちの評価まで行うとなると、新たな仕事が加わって多忙となり不満がたまっていくことが想像できます。これに対処するためには、「評価制度=人材育成」の仕組みを、リーダーに徹底して認識させることが重要です。リーダーにとって人材育成も重要な役割のひとつです。自分の売上達成も大事ですが、経営者はそれ以上に部下育成を重視した評価に比重を置くよう認識させましょう。
次に「社員の不満」については、人事評価制度を設けたことでさまざまな不満の声が上がってくるものです。経営者やリーダーの耳に直接入ってこなくても、社員同士では評価の内容や仕方についての問題や課題などが出てくるでしょう。そこで定期的に人事評価制度に関する会議を開いて、社員から出たさまざまな不満や問題について意見を聞いて改善していく努力が必要になります。社員の不満が客観的であれば、会社の成長のために必要な声として受け取ることが求められます。
最後の「評価結果や賃金制度が活用できていない」については、人事評価制度自体は万全なものでも運用方法が実行できておらず、いつの間にか挫折しているケースです。リーダーが出した評価結果を給与や賞与に反映しようとしたものの、社長が従来の方法で給与を決めていることがあります。これでは理想とする評価結果を昇給や賞与額に適正に一致させることは困難です。これは社長がリーダーに評価を任せすぎているのが原因です。
評価や給与をルールに従って決めるには、課題や問題の原因を明確にして、一つひとつ対処していくしかありません。人事評価制度自体の改善が必要な場合もあるでしょうし、評価するリーダーの教育が必要な場合もあるでしょう。
制度の設計と運用の両面で、常に改善と最適化を目指すことが重要です。
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