対話型AI チャットサービスの機能と活用法

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質問に対して自然な回答を生成するChatGPT

 2022年11月にアメリカのOpenAI社   がリリースした対話型AIチャットサービス「ChatGPT」は、全世界で注目を集め、わずか2カ月間でユーザー数が1億人に達しました。日本においても話題となり、現在でもさまざまなメディアで取り上げられています。
 ChatGPT は、大規模言語モデル(Large Language Model)と呼ばれる自然言語処理モデルをベースに開発された「GPT-3.5」を利用したサービスです。膨大なテキストデータから自然言語のパターンや文脈を学習し、ユーザーからの質問に対して、まるで人間が答えるかのように自然な回答を生成します。ChatGPTを使うことによって、さまざまな業務を効率化し、労働生産性を向上させることができるということで、企業をはじめ多くのユーザーが利用しているわけです。
 Googleなどの検索エンジンでは、入力したキーワードに関連するWebサイトを閲覧し、そこからユーザー自身が求めている情報を読み取る必要があります。ユーザーが入力した検索キーワードに対してテキストベースの情報を閲覧するのに適していて、答えを提供するわけではありません。
 しかし、ChatGPTはユーザーが求める情報をインターネット上から探してきて、簡潔に分かりやすい文章にまとめて回答してくれます。まるで先生や専門家のように自然な会話で答えたり、指示に従ってタスクを実行してくれたりするのです。
 ChatGPTはOpenAIのアカウントを作成しログインすれば、無料で利用することができます。2023年3月には、より性能が向上した「GPT-4」がリリースされました。こちらは「ChatGPT Plus」という有料版で、月額20ドル(約2,700円)の利用料金が掛かります。その分、無料版よりもより精度の高い回答を得られます。
 現在、ChatGPTは、対話型AIチャットサービスの代表格として多くのユーザーに利用されていますが、既に同様のサービスが次々とリリースされています。マイクロソフト社は、検索エンジン「Bing」にAIが組み込まれたチャットサービス「BingAI」を公開しています。これはChatGPTの「GPT-4」と同じ大規模言語モデルを使って開発されているため、有料版のChatGPT Plusと同じ機能を無料で使えるのが特長です。
 また、Googleも対話型AIチャットサービス「Bard  」を公開しました。Googleのアカウントを作成しログインすれば簡単に始められ、こちらも無料で利用することができます。現時点でBardには、明確な使用回数制限がなく、文字数は5,000字まで入力できるのが特長の1つです。ただし、画像生成の機能はありません(画像生成AI「AdobeFirefly」との連携が可能)。 特に、プログラミングコードの生成や多言語への対応、推論機能などが優れています。
 では、具体的にどんな作業や処理が行えるのか、有料版のChatGPT Plusを例にとって紹介します。

コスト削減や売上に貢献するツールになる

 基本的には文章を生成するすべての業務に対応しますから、用途は多彩です。ビジネスでは、その自然に回答する機能を活かして、Webサイトやブログのコンテンツ制作に使われています。特にスタッフに代わって回答するカスタマーサービスとして導入が進んでいます。メールの文章作成、企画のアイデア出し、広告のキャッチコピーの作成、企画書・提案資料・プレスリリースの作成、外国語の翻訳、稟議書の作成、営業日報の作成、文章の添削・校正など、枚挙に暇がありません。
 また、手書きのラフスケッチをスマホで撮影し、その画像データをChatGPT Plusに読み込ませると、HTMLコードに変換して出力することができます。実に画期的な機能と言えるでしょう。
 このように、ChatGPT Plusでは画像を生成したり描いたりすることも可能ですし、詩や物語、エッセイ、プログラミングコードなど、さまざまなコンテンツを作成することができます。また、リクエストに応じて書き直したり、修正したり、新たなコンテンツを紹介したりと、実に多彩な機能を持っています。そのため顧客サービスからマーケティング、クリエイティブなテキスト作成などの業務に活かす企業が増えています。
 しかし、ChatGPTなどの対話型AIチャットサービスを利用する場合は、注意しなければならないことがいくつかあります。入力した言葉やデータは、ChatGPTの精度を高めるためにAIモデルが訓練する学習データに使われる可能性があります。OpenAI社は入力された情報については学習データに使わないとしていますが、個人情報や企業の機密情報は言うまでもなく、経理情報の入力は避けるのが無難です。
 また、生成された文章の正確性を確認することが重要になります。出力された文章は必ずしも正しいとは限りません。あくまでも確率でそれらしい回答を生成しているに過ぎないのです。インターネット上にあるテキストから抽出して回答しますから、不適切な内容や誤情報が含まれることがあるわけです。実際の業務に使用する場合は、内容に誤りがないか人の手でチェックする必要があります。
 また、ChatGPTなどで生成された文章が既存の著作物などと酷似している場合は、著作権の侵害に当たる可能性がありますから、ChatGPTが生成した文章は既に誰かが生成しているという認識を持っておくことが得策です。少なくとも、生成した文章をそのまま利用するのは避けたいものです。
 対話型AIチャットサービスは、AI技術の進化とともに、今後さらに機能の向上、応用分野の拡大が見込まれていますから、ますます高品質な文章を生成できるようになり、ビジネス、プライベートとさまざまなシチュエーションで使用されるようになってくるはずです。将来は検索エンジンに代わるツールとして普及していくのではないでしょうか。企業では、外注費などのコスト削減や売上・利益に貢献するツールとして利用が進んでいくでしょう。

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