印刷データをWebと連携させて制作の効率化を
今回は、2月15日にpage2024のスポンサーズセミナーで開催された、株式会社ニューキャスト 代表取締役の川原正隆氏(GC中部 )の講演内容を紹介する。昨今、「印刷物のデータをWebに渡したい」、あるいは「Webやデータベースのデータを印刷物に使いたい」といった、データ連携のニーズが広がっている。そのためにはどのようにデータを連携すれば良いのか、何が必要なのかについて、同社の『DOT3』を活用した取り組み事例について、また、印刷ビジネスにおける戦略的な自動組版の活用や紙とWebの連携の重要性について解説した。DTP 制作を業務にしている印刷会社にとっては、Webとのデータ連携は不可避になりつつあると言えるだろう。
レクチャーズ・ルーム 58
株式会社ニューキャスト代表取締役
川原 正隆 氏(講師)
株式会社ニューキャスト は、印刷物からWebまでコンテンツ制作に関わるあらゆる仕事に携わっているが、顧客のコンテンツ制作を効率化するために、自動組版システムや各種関連システムを自社で開発・運用し、クラウドサービスで顧客に提供している点が事業の特徴である。
川原氏は自社のメイン製品になる自動組版クラウドサービス「DOT3」を基に、印刷データとWebデータを連携させる手法について解説した。
「『DOT3』はワークフローの中核になるもので、デザイン担当者はDOT3 にテンプレートを登録し、また、データ作成者は画面上で入力したり、テキスト・画像の修正・校正をしたりします。個々のデータを目的のページにレイアウトすることができ、ページレイアウトはInDesignを経由して自動配置し、PDFで書き出して印刷入稿データにして印刷工程に渡すことができます。さらに、APIで連携しているためWeb用データにすることも可能ですし、その他の業務管理システムにデータを送ることもできます」と、DOT3は単にコンテンツ制作を自動化するだけでなく、業務の基幹データベースとしての役割も担えるという。
「DTPというのは誌面を作れば良いわけですが、どのようなデータがあって、どのように設計すれば良いのかを、考えながら作ることがデータ連携をする上で大切です。それが情報の整理になります。例えば、散らかっている部屋であっても、掃除して綺麗にすると使いやすい部屋になるのと同じようなことです」と、川原氏は情報を整理することの重要性を説く。
カタログ制作では「基幹システムで商品を登録したものをWebに入力し、そのデータを印刷物用としてDOT3に持ってくる流れになります。また、APIコマンドツールを使ってWebサイトにデータを書き出して納品できます。アナログ時代はWeb用のデータを作るのがものすごく大変でしたが、今ではコマンドほぼ一発の操作で済み、あとは確認するだけですから、非常に短時間の作業で正確にデータ作成ができます」と、そのメリットの大きさを述べた。
また、AIの可能性について、校正時においてAIがどんな役割を担えるのかについて触れた。例えば、いろいろなライターから原稿が送られてくると表記がそれぞれ異なることがあるため、編集側のルールに則り校正時に赤字で修正するわけであるが、ChatGPTに指示する時にハウスルールを入力しておけば、一括して修正することが可能という検証結果を得たという。「まだまだ完全とは言えず補助的だとは思いますが、ライターが最初の入り口として原稿をAIにかけて確認してから入稿するだけでも、後工程はかなり楽になるのではないでしょうか。今後AI校正が一般化してくると、原稿を制作する現場の在り方が変わってくると思っています」と話す。
印刷の未来について、川原氏は「AIが発達しますと、例えば、60歳の女性をターゲットにした雑貨商品をピックアップして、その商品を各ページに3点ずつ配置し、それぞれデザインを変えて100ページ前後のカタログ冊子を作成することを指示すれば、簡単に制作してくれるでしょう」。
しかし、「現在のDTP や印刷物の作り方では、AIの世界には進めません。そのためには、印刷物を作る中でデータ化するという考え方や方法を取り入れていく必要があります。それが可能となれば、AIの世界にたどり着くことができると思います。単にPDFデータにして印刷物を作るだけのゴールになってしまったら、何の広がりもないし、面白くないですよね。弊社としては、データを連携しAIが示す印刷の世界に進んでいけるようなモノづくりを目指したいです」と話し、データ連携の重要性を述べて締めくくった。
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