話す時は「印象良く」「分かりやすく」伝える

今回は、昨年11月29日に東京都新宿区の測量年金会館6階会議室で開催した、(一社)新宿区印刷・製本関連団体協議会(井上正代表理事)主催の「アナウンサーが伝授!リーダーのためのスピーチ講座」を紹介する。講師は株式会社KEE’S取締役副社長の会田幸恵氏。同社は話し方改善の手法を体系化し、現役アナウンサー40名が講師を務める企業研修の会社である。コミュニケーション力の重要性、必要なスキル、表情の作り方、分かりやすく話すことなどを、プロフェッショナルの立場から伝授するというもの。実際に参加者同士でスピーチを実践しつつ、ビジネスリーダーにとって成功するためにはスピーチ力が必要だということを説く有意義なセミナーとなった。

レクチャーズ・ルーム 57

株式会社KEE’S 取締役副社長
会田 幸恵 氏(講師)

 会田氏は「人前で話すことが苦手なのは、学校で習ったことがないから苦手意識を持っているだけです。弊社では話し方をスポーツと捉えており、ゴルフやテニスなどにその習い方があるように、話し方にも方法があります。話し方も実践を繰り返して、客観的に相手からもフィードバックをもらうことで誰でも上手に話せるようになります」と話す。

 社長の話し方は社内外に影響力を持っていて、一挙手一投足が社員に見られており、その発信する内容で社員のモチベーションが変わってくるという。「ビジネスに成功するために必要なのは、10%の専門知識と、90%のコミュニケーション能力」(世界的なビジネス・コンサルタントのブライアン・トレーシー氏)と、著名人の言葉を借りて指摘する。

 「コミュニケーション能力は、業種業態を問わず全ての基盤だと私たちは捉えています」とのこと。コミュニケーションを上手に行うには「どう伝えるか」「何を伝えるか」の2つの力が必要だという。「どう伝えるか」は対人力( 外見)が重要となり、印象・表現・声・ジェスチャー・話し方などがポイントになるとのこと。また、「何を伝えるか」は思考力(内面)が重要で、構成力、質問力・会話力・話す内容・資料などがポイントで、両者は50%ずつ必要になってくるという。

 続いて、参加者同士が2 人1組となって、1分ほど自己紹介をしあう動画をそれぞれスマートフォンで撮影した。名前、自身について(会社や仕事内容)、話し方に関する課題、目標(締めの言葉)を話して、それぞれセルフチェックを行った。チェック項目は、Lookの「姿勢・表情・印象」、Speakの「発声・発音・表現・内容」、Actの「動作・癖」で、3つの項目に対して「良い・悪い」「ある・ない」「聞き取りやすい・聞き取りにくい」「端的・長い」などをチェックした。

 会田氏は、スピーチを行ったことで自分なりに発見した悩みや課題を紙に書かせた。「人は自分の目標を言葉に出すと、それが頭や心、行動に影響します。例えば、早口だと相手が聞き取りにくく理解しづらいと感じた場合は、緊張している時でももっとゆっくり話した方が良いと頭でも心でも思うようになり、そのように行動するようになるものです」と、自身で課題を認識して目標を紙に書いて実践するよう促した。

 続いて相手の心を掴む印象力として、笑顔の効果を挙げた。笑顔は相手を安心させて距離を縮めるので、好意の返報性効果があることを指摘した。また、誰でも瞬時に話し方や印象をアップさせる方法として、①人数が多い場合はドレミファソの「ソ」のトーンで話す。②口を縦横にあける。③声・テンションを3 倍にする。以上の3 つを挙げた。「思いや考えを相手に伝える時は、省エネでは伝わりません。エネルギーが必要になります。皆さんがエネルギーを持って発信すると、相手の方もエネルギーを持って返してくれます」。

 分かりやすく伝える力では、結論を明確に話すことの大切さを説いた。話が分かりやすい人は、①結論から話す。②具体的に話す。③聞かれていることを話す。④全体から入る。⑤「こそあど言葉」を避ける。以上の5つに注意して話していると指摘する。「皆さんが話すのは、相手に理解してもらうために話すわけですから、そのためには、まずはロジカルに自分が話したいことを整理する必要があります。次に結論から言って、その理由に入り、詳細に話していくロジックツリーの構成を考えて、それを実践していくことが大事です」と説く。「このように話すとファーストインプレッションが強烈に残りますから、そこに言いたいことを持っていくようにすることがポイントです」と述べ、ロジカルスピーチの順序は「結論→理由→詳細→再度、結論」になるよう話すべきだとした。

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