行動が人と会社を作り自立型組織を作る

今回は、11月28日に東京都文京区の文京シビックセンターで開催した、GCJ主催・GC東京共催の経営者・管理者向け人材育成セミナーを紹介。講師は株式会社COEDAS代表取締役の大塚純氏に、同社取締役の荻野美鈴氏とプロコーチの漆畑真紀子氏の3氏が交代して、ディスカッションを交えたセミナーを行った。テーマは「成果が出せる自立型社員を育てるマネジメント術」であったが、「行動が人を作り、会社を作り、自立型組織を作る」という観点で行われ、社員とのエンゲージメントを高めて成功する組織文化を作っていくことが重要だと説いた。

レクチャーズ・ルーム 56

株式会社COEDAS 代表取締役
大塚 純 氏(講師)

左から大塚、荻野、漆畑の3氏

 株式会社COEDASは、日本に300名しかいない国際コーチング連盟認定資格PCCを取得した大塚氏が、昨年設立した会社で、チームづくりの国際資格を持っている51名のスタッフと共に、多くの企業に対し「最高のチームづくり」を目指すために各種プログラムや研修、セミナーの事業を展開している。
 セミナーでは冒頭、インドのことわざ「群盲評象」(数人の盲人が、自分が触った象の一部分の感想を語り合っている状態)を取り上げ、「誰も間違ってはいないが、誰も象がどういうものであるかを分かっていません。誰も完全な正解が分からないのは仕方がないことです」と述べ、社長も社員も実際は一部分から判断している状況にあると、大塚氏は組織の本質を指摘する。
 「自立型社員はマネジメントでは育ちません。社員はそれぞれ複雑な人間ですし、いろいろな価値観の中で生きています。社員は適切な環境があれば勝手に育つものです」と述べ、「自らで考えず動かないやる気がない社員を生んでしまうのは、会社がそのような環境を作っているからです」と、環境に問題があるという。

 環境は組織文化だと説く大塚氏。「組織文化が自立型社員を作る雰囲気を作っていれば、社員は少しずつ自立型社員に変わっていきます。社員が自立して自ら新しい仕事に取り組むには、社員皆でやる気を引き出して、本人がやりたいという気持ちになって初めて可能なのです」という。
 自立型組織の難しいところは、主導権を社員に渡さなければならない点だとし、「今まではトップが部下に指示してやっていたのを全面的に任さなければなりませんから、主導権を渡したくないと思ったなら、自立型組織はできません」と話す。今日は予測が難しい社会で、トップも答えを知らず、先が読めて正解を出せる人がいない混沌とした時代になったとし、「そんな時代に中高年の人たちは適応していけません。そこで適応できているのがZ世代と言われる若い人たちです。Z世代を上手く活かしていくことが必要です」と、大塚氏は明言する。

 続いて、漆畑氏がエンゲージメントの必要性について説明。「社員が生き生きと働きながら高い成果を出している状況が、エンゲージメントが高い状態です。エンゲージメントが高いと、パフォーマンスが向上し顧客の満足度も上がり、利益率が上がるという結果が出ています。エンゲージメントを向上させるためには「指針への共感」「やりがい」「働きやすさ」の3つに取り組んでいくことが重要です」とし、社長や上司が勝手に決めないで社員たちと話し合いを通じて決めていくことが大切だと話す。
 引き続き、荻野氏に交代し、「チームは目的を共有する2人以上の人々で成り立っていて、そのチームの関係性を強化していくことが大切です」と述べる。チームが成果を上げ続けていくには関係の質を高めることから始めて、関係の質➡思考の質➡行動の質へと移行する成功の循環モデルを構築することが重要だとし、「結果の質から始めると数字に拘り、上司が部下に指示・命令する関係になってしまい成功の循環モデルを築けません」と、荻野氏は説く。

 講演の最後は、まとめとして次の8 項目を挙げた。「自立型組織は時代に求められている」「自立した社員は適した組織文化によって育まれる」「私たちは皆『象を評す群盲』。全ては知らない」「まずは社員エンゲージメントから」「関係の質から始める成功循環モデル。目標(結果の質)から始めない」「対話で一人ひとりのWHY を明らかにする」「何を言うかより、どう行動するかが組織文化を作る」「変革には『混乱』『停滞』『反発』が起こるが、その先にしか進化はない」と提言し、セミナーを終えた。

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