購買心理を考えてココロに刺さるPOPづくりを

今回は、東京池袋・サンシャインシティ文化会館で開催された「インターナショナル プレミアム・インセンティブショー秋2023」で、10月5日に行われた株式会社ポパルVP事業部企画営業課マネージャー田口剛史氏の特別講演を紹介する。テーマは「すぐに使える! 購買心理から考えるPOPづくりの極意」。田口氏は、百貨店などへセールスプロモーションの提案やPOPコンサルティングを手掛けているパーソン。POPは満足する買い物体験をサポートする役割があるとし、顧客のココロに刺さるPOPづくりを訴える。VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)の視点で、導線計画により顧客を誘導することの効果を説きつつ、デジタル施策や事例を交えた講演を行った。

レクチャーズ・ルーム 55

株式会社ポパル VP事業部マネージャー
田口 剛史 氏(講師)

 田口氏は冒頭、「POPとはpoint(目をとめさせて)ofpurchase(購入させる)advertisting(広告・告知)」と、端的にPOPについて説明した後、「POPは、もっと簡単に買い物がしたい、もっと楽しく買い物がしたいという消費者の気持ちを満足させる買い物体験をサポートする役割があります。物言わぬ販売員として、適材適所の場面でワクワクする、ココロがはずむ買い物体験を演出することが求められます」と、POPの本質を説く。
 今日はeサイトの障壁が下がり利用しやすくなったが、ネットでは満足する買い物体験が得られないとし、「買い物は一種のエンターテインメントです」と述べる田口氏。ココロに刺さるPOPのつくり方について、「誰に伝える」「何を伝える」「どこで伝える」の3つが大事だとし、「POPを設置する場所がポイントになります。商品のターゲットになる架空の消費者(ペルソナ)をイメージし、そのペルソナに何をどこで伝えれば刺さるかを考えることが重要です。そのためにはPOPの設置場所、サイズ・形状、色や文章のデザインをペルソナに合わせて制作する必要があります」と指摘する。
 また、POPはアイデア次第でココロに刺さるとし、ビフォーとアフターの事例を挙げて説明した。例えば、商品を説明する上で、「すっきりとした文章にまとめて価値を表記することが大事です」と説く。また、観光地のおみやげの事例を挙げ、4種類のフレーバーの異なるポップコーンのPOPでは顧客に想像させるコピーが効果あると話す。さらに、カタログの申し込み方法のPOPでは、丁寧に申し込み方法を記載するのは却ってハードルが上がり敬遠されるため、3ステップで申し込みができる分かりやすい方法に変えると効果的であると指摘する。
 続いて、刺さるキャッチコピーの作成の極意について、いくつか例を挙げて解説した。「お客様が商品を購入するというのは、購入することで得られる体験を買っていますから、コト消費のキャッチコピーを考える必要があります。コト消費を考えてそれを自分ゴト化させることが大切です」とし、顧客の消費行動を考えてキャッチコピーを作成することが大事だと述べた。
 また、得をすることよりも損することを避けたいという、損失を回避するプロスペクト理論を使ってキャッチコピーをつくることも大事だとし、具体的に「今を逃せば〇〇円高くなる!」「早期割引! 〇日からは通常料金に。お急ぎください!」などを提示。その他バンドワゴン効果やスノッブ効果を使ったキャッチコピーについて説明した。
 さらにP O P の活用方法として、V M D( V i s u a lMerchandising)視点で考えることが重要だと田口氏は指摘する。VMDとは視覚に訴える商品施策・計画を指すもので、「お客様が商品を見て購入にいたるまでのプロセスであるAIDMAの法則に則って、視覚で訴えることが重要になります。VMDはお客様を視覚伝達で購入を促す効果があります」とVMD視点の重要性を話す。
 ポイントは導線計画を立てて顧客を誘導していく戦略が大切だとし、演出によって無意識に商品に引き寄せるマグネット効果や、歩いてほしい方向へ連結誘導する手法を説明した。また、「POPが同じデザインだと、無意識のうちに顧客に届き自然と商品に誘導できる効果があります。そのため店頭の商品ブランドに合わせたデザインのPOPをつくることが重要です」と、統一されたデザイン戦略の大切さを指摘した。最後にPOPのデジタル技術に触れ、電子POP、スマートスピーカー、NFC(近距離無線通信)タグなどの活用も必要だと述べた。

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