動画マーケティングで顧客のニーズに応える!

スマートフォンでショート動画を撮影しビジネスに活用

スマートフォンでショート動画を撮影しビジネスに活用

今日、多くの企業が動画マーケティングに注目しています。商品・サービスのプロモーション活動や企業ブランディングを向上させるために、動画を用いたマーケティング施策が重要だと考え、取り組む企業が増えています。動画マーケティングはホームページ上に動画コンテンツを埋め込むだけでなく、YouTube やFacebook などのSNS で配信するなど多彩で、今後も市場が拡大していくものとみられています。印刷会社としても、顧客の集客・売上を支援するために動画マーケティングができるようになれば、今後も顧客と強固な関係を続けていけるでしょう。今回は、印刷会社でも行える動画マーケティングについて探ってみます。

拡大するショート動画広告市場

 動画は印刷業界にとって門外漢というイメージがあるため、ビジネスとして考えている印刷会社は一部だと思います。しかし、普段私たちはテレビだけでなく、PCやスマートフォン(以下、スマホ)でさまざまな動画に接しており、映画やテレビ番組のエンターテインメントだけでなく、YouTubeやウェビナーなどでビジネスに関するコンテンツも視聴しています。生活やビジネスの場で動画を視聴する機会がますます増えており、動画マーケティングの市場は拡大しています。
 インターネット広告の大手企業である株式会社サイバーエージェントが発表した「2022年国内動画広告の市場調査  」によると、2022年の動画広告市場は5,601億円に達し、昨年比133%になりました。予測では2023年は7,209億円になるとし、今後も順調に増加し一大産業になるとみています。(グラフ参照)
 グラフからも分かるように、動画を観るデバイスの8割はスマホとなっており、今後も8割近くで推移していくと予測しています。このようにスマホで動画を視聴するのが主流になっていることから、動画広告もスマホに配信する動きが活発化しています。また新たな傾向として、コネクテッドテレビで動画コンテンツを視聴する動きが出てきたことから、この分野での動画広告も着実に伸びていくとみています。
 コネクテッドテレビとは、インターネットに接続されたテレビ型デバイスのことです。例えばスマートテレビやセットトップボックス、テレビスティック、ゲーム機などがあり、これらの機器を使うと、YouTubeやNetflixなどのインターネット上の動画コンテンツをテレビの大画面で視聴することができます。
 また、若年層を中心に30秒から1分のショート動画コンテンツが台頭し大きな支持を得ています。ショート動画のほとんどはスマホで撮影し編集したもので、ユーザー自身が動画を撮って配信するのが主流です。そのショート動画の視聴時間も伸びていることから、広告主企業はショート動画広告に関心を寄せており、動画広告の出稿が増えつつあります。
 ショート動画の配信者は、スマホで撮影してアプリを使って編集し、TikTok やFacebook、YouTube などのSNSに動画をアップロードするわけですが、最近の動画編集アプリは初心者でも扱えるように操作が簡単になっており、機能も充実しています。しかも撮影から編集、アップロードまで費用は基本的に無料ですから、低コストでの動画制作を望む中小企業にとっては、動画マーケティングをスタートする上で手始めとして最適な手法と言えるでしょう。
 今まで動画制作に携わったことがない印刷会社にとっても、動画マーケティングを事業として始める上で簡単で採用しやすい手法であり、リスクなく開始できる点は利用価値があると言えるでしょう。いま動画市場のニーズは高まっており、関心を示す企業や店舗が増えていますから、印刷会社でも一度動画制作にチャレンジしてみてはどうでしょうか。
 動画は紙媒体よりも多くの情報を伝えられます。文章や写真では伝わりづらい情報でも、動画であれば視聴するユーザーに直接伝えられて、記憶に残りやすい特長があります。また最近は、動画コンテンツをさまざまなSNSメディアを介して視聴する人たちが増えていることから、企業はこれまでの広報・宣伝活動だけでは届けることができなかったターゲット層に、商品やサービスをアピールできるようになりました。
 従来の紙媒体の広告では、ユーザーが内容に興味を持って、能動的に文章を読み進めてもらわなければなりませんでしたが、動画コンテンツは再生ボタンを押すだけで視聴してもらえるのがメリットです。敷居が低く気軽に情報を伝えられる面もあります。
 また、ホームページに動画を埋め込むことで、動画検索からユーザーが流入したり、動画を視聴して滞在時間が伸びたり、ユーザーから被リンクを獲得しやすいといったメリットが生まれます。
 とかく「動画広告となると、スマホで撮影した動画は、所詮個人が趣味で投稿する動画となり、画質や編集は望むべくもない」「動画広告となると、やはりプロに撮影、編集を任せてクオリティの高いコンテンツにする必要がある」と考えがちです。確かに私たち素人が撮影したものと動画制作会社のプロが撮影したものとを比べると、クオリティに差はありますが、今の企業のホームページやSNSの動画広告は、どれもプロが撮影したものばかりではありません。

スマホを使って撮影・編集を

 大手企業がテレビCMやYouTubeに配信する動画広告の場合は、テレビCMと同様に登場人物にタレントや俳優を使ったり、また音楽やナレーションも高品質なものを用意したりして、クオリティの高い撮影と編集力で仕上げることになります。そうなれば当然制作コストもかなりの額となり、しっかりと予算を組んで取り組むことになります。
 そのような本格的な動画広告は、専門の動画制作会社と大手広告代理店の舞台となりますから、そもそも中小印刷会社が参入できるわけがありません。中小印刷会社は自社の宣伝や商品・サービスを、コストを賭けずに1分程度のショート動画にしてホームページやYouTube、Facebookにアップロードする方法を採っていくのが戦略上適していると言えるでしょう。
 そのため、撮影から編集の全てを自ら行う必要がありますが、決して難しい作業ではありません。今日のスマホは品質が向上していて、動画撮影を支援する機能が搭載されていたり、編集アプリも検索サイトから無料のものを使えたりできます。今日の中小企業のホームページやSNSにアップロードされているショート動画は、意外とスマホを使って撮影・編集しているケースが多く、必ずしもプロの動画制作会社に依頼しているわけではありません。
 もはや動画マーケティングは特別なものではなく、だれもが気軽にできるマーケティングだということを認識し、印刷会社も取り組んでいきたいものです。
 では、スマホを使って動画撮影する方法について触れていきます。最近のスマホの画質は向上しており、動画の品質については何の問題もありません。
 最初は細かい編集や音声の調整などはほとんど気にせず、「撮影した動画をそのまま使う」という考えでよいでしょう。ビデオカメラで撮影すると、撮影した動画をホームぺージやYouTubeにアップロードする際に別の手順が求められ、初心者にとっては少々複雑な作業になりますから、スマホでの撮影で十分です。
 まずはスマホのカメラ機能を起動して動画モードで撮影します。例えばUVインクジェットプリンターで直接メディアにインクを吹き付け、プリントする制作工程を撮影するというシチュエーションでは、媒体をプリンターにセットした時点から撮影を開始し、あとはプリンターの動作をそのまま撮影し、印刷が終われば、最後に仕上がった商品をアップで撮影して終了ということになります。撮影時間が長くならないように、1分程度の動画に収めるのが良いでしょう。動画には常にプリンターの機械音が聞こえていますから、そこに音楽を入れたい場合は、BGMを挿入します。
 スマホだけで動画編集する際には、初心者でも操作しやすいCapcut  という編集アプリを使うのがお勧めです。動画を撮影したら、インストールしたCapcutを開いて撮影した動画を一旦保存します。次にGoogleで著作権フリーのBGM素材をダウンロートできるサイトを検索し(例えばDOVA-SYNDROME  などのサイト)、そのサイトから好きなBGMを選んでスマホにダウンロートします。次にCapcut内にBGMを挿入し、BGMに合わせて動画を編集します。操作方法については関連本を見て習得するのが良いでしょう。また、YouTubeで手順を説明している動画もありますから、それらをぜひ参考にしてみてください。

記憶に残りやすい動画をアップロード

 さて、問題は編集した動画をホームページに埋め込む作業ですが、videoタグ※を活用して埋め込む方法がありますが、これはHTMLコードを作成して行うものでWebの知識が求められますから、初心者向けではないと言えるでしょう。そこで比較的簡単なWordPressのエディター機能を使って埋め込む方法がお勧めです。WordPressで作成したホームページでは、既に撮影した動画が収められているメディアライブラリーから新しくアップロードした動画を、エディター画面にドラッグアンドドロップするだけで配置することができます。

※videoタグとは、HTML5で新たに登場したWebサイトに動画をアップロードするためのもので、このタグを使用することで、プラグインを使用せずビデオの再生を行うことができる

 また、社内のサーバーにある動画ではなく、YouTubeなどの動画プラットフォームにアップロードしている自社の動画をホームページに埋め込む方法は、YouTube内の機能にある埋め込みコードを取得し、そのコードをホームページの任意の場所に設置することで埋め込むことができます。
 さて、実際に動画を撮影しビジネスに活用するとなると、視聴してもらい集客や販促を促すための戦略が必要になります。動画は写真と違って伝達量が多いですから、その情報量を活かして商品やサービスをより魅力的に撮影しアップロードしたいものです。ターゲットにするユーザーを思い浮かべたり、市場ではどのような動画広告が受けていたりしているのかなど、市場をチェックしてみて動画の制作手法を真似してみるのも動画マーケティングでは重要です。
 動画は視覚的に記憶に残りやすいメディアですので、自社の商品やサービスをアピールする動画を作成して、自社のホームページやYouTube、Facebook、TikTok などのSNSで紹介しましょう。動画の撮影や編集に慣れたら、顧客にも動画による集客・販促を提案してみてはどうでしょうか。動画マーケティングはいまから始めても十分に可能で、将来性のあるビジネスです。自社の利益だけでなく、顧客のニーズに応えるためにも、ぜひチャレンジしてみてください。

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