SDGs 経営の在り方と具体的な施策

そこが知りたい!gcj MANAGEMENT(145)

各社に合ったキーワードを基に施策を考える

 SDGsが社会に広がり、大企業だけでなく中小企業も必要性を意識するようになってきました。SDGsによって、世代を問わず、人々が商品やサービス、職業、企業などを選ぶ時の基準が変化してきています。
 近年の時代のキーワードを考えてみますと、多様な人々と関わり合いながら新たな価値を「共創」していくという考えが浸透しつつあります。社内では「調和」を保ちながら、それぞれの個性を尊重するようになってきました。これは主に若い世代の働き方に対する考えが反映されつつあるからかもしれません。また、他人の考えに「共感」して支援していくといった「共感コミュニケーション」も広がっているようです。さらに、社員の「健康」を意識した経営や、社員の「心理的安全性」に配慮して高い生産性を目指すことも広がっています。
 一方、社外においては、オーガニックで「自然」との共生を意識して生活するようになったり、「地域」に配慮した商品・サービスで地元を活性化させる動きが出てきたりしています。このようにSDGsに関する取り組みが重要視されるようになり、企業は前述の「」のキーワードを経営理念、社訓・社是、行動指針に盛り込み、SDGsを取り入れた経営を目指すようになりました。
 BtoBを主体にする印刷会社では、今後、「脱炭素」「脱プラ」「環境保全」「CO2削減」「ダイバーシティ」「女性活躍」「長時間労働の改善」などの課題に一層取り組み、解決することが必須になってきますし、大企業のサプライチェーンに含まれる印刷会社では、「CO2排出ゼロ」を中心に、さらにSDGs(ESGを含む)への取り組みの強化が求められてくるでしょう。
 では、印刷会社のSDGs経営とは具体的にどのように進めていき、どんな施策や事業を行っていけばよいのでしょうか。指標とすべきことは、SDGsの17のゴール、169のターゲットを読み込み、自社の事業での取り組みがSDGsへの貢献になっているのかを照らし合わせます。SDGsへの貢献は、本業である印刷業を推進するための経営改善だけでなく、本業以外で取り組んでいることにも通用します。例えば、貧困家庭や不登校の子どもたちを支援する「フードバンク」活動であったり、地域の名産品や農産物を新たに商品開発して地域貢献したりなど、いろいろと挙げられます。まずは自社でできることは何かを洗い出して、その取り組みがSDGsのどの項目に該当・関連するのかを整理します。
 次の段階では、自社で実践することを決定したSDGsの取り組むべき優先課題に対し、具体的な成果の目標を設定します。つまり、売上目標と同じように、具体的な行動内容とそのための具体的な目標が必要になります。
 ここで大切な視点は、世界が求めている達成度と自社の現状の達成度を比較して、できるだけそのギャップを埋めていくことが重要なのですが、世界レベルに合わせる必要はなく、自社らしさを発揮できることに重きを置き、社員が一丸となって考え行動できるような目標を、定量・定性で設定していくのがよいでしょう。そのためには目標を「見える化」していくことが重要になります。

経営者のリーダーシップが最も重要

 SDGs経営は実際の事業の中で当てはめて行動することがポイントになります。そのためには経営者のリーダーシップが欠かせません。経営者である社長自らが強い意志を持ち、「SDGs推進グループ」「SDGs貢献室」などの担当部署を設けて、SDGsに対して事業としてしっかりと取り組んでいることを表明することが大切です。これは社員にSDGsの意識づけを行う意味だけでなく、評価や報酬制度にも関わってくることを意識させる役割もあります。会社の本気度を示すことで、社員に当事者意識を持たせることにもなります。
 印刷に関する研修は実務との関わりからどの印刷会社も必須業務として取り組んでいるでしょうが、これからは紙の印刷だけでは持続可能な経営を望むことが難しくなっています。社員のリスキリングやスキルアップを実施し、IT化、デジタル化時代に対応できる人材を育成していく必要があります。これは社員が新たなスキルを習得できるようにしておくことで、別の企業に勤めることになった時に役立つ社員教育になり、SDGsの目標4に当たる「質の高い教育をみんなに」に関わる取り組みになります。会社のボトムアップになると同時にSDGsの施策にもなり、一石二鳥の取り組みと言えるでしょう。
 また、企業は雇用の確保と組織の活性化を進めていく必要があります。働きやすい職場づくりを目指して福利厚生を充実させたり、子育てへのサポートを推進したりするのも1つの手法です。また、テレワークが可能な職種であれば、なるべくテレワークを実施することで、通勤の時短と交通費の削減、社員の身体的負担の軽減を図ることができます。社員が長く働ける社内環境づくりを進めていくことも、SDGの目標8に当たる「働きがいも経済成長も」に貢献する取り組みと言えるでしょう。
 さらには契約社員を正社員へ登用することも、同一労働・同一賃金に取り組んでいることになり、目標8に当てはまります。女性であれば地位向上にも繋がりますから、契約社員とは個別に面談を行って本人の希望を聞きながら、個々のモチベーションを高めて生産性向上へと繋げていきたいものです。
 ビジネスに直結する商品開発の分野では、脱プラを実践し紙製の商品を改めて推進していくことも考えたいものです。例えば、「ノック式紙ペン」「紙素材のクリップ」「紙製クリアファイル」「新素材のライメックスは石灰石が主原料で作った卓上カレンダー」「ペーパーストロー」「ペーパーボトル」「各種什器」など、実に多くの文房具や雑貨などを紙製にすることができます。これらを果たして顧客に提案できているでしょうか。顧客のSDGsへの取り組みを支援するために、紙製の商品を企画・提案していくことは、SDGsの営業戦略として重要です。これを理解し実践していくことが求められます。

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