漫画の電子書籍化

GC東京

ワンソース・マルチユース

日本の漫画やコミックは電子出版・電子書籍の普及という意味では世界で先駆けて進んだ分野です。第2次大戦後の少年漫画週刊誌の登場以降、漫画の制作技法の多様化に対応して製版技法も発達してきました。漫画用のフォントも多く登場しました。

日本の写真製版業界でもこれらに対応することで、日本の戦後の漫画の歴史に沿って発展を遂げましたが、とりわけ1990年代に製版工程をいち早くデジタル化したところは、出版社の版下データの一元管理ができるようになり、漫画出版ビジネスが広がることにつながりました。

デジタルでの版下データ一元管理サービスは、出版社にとっては再版時の時間短縮とコストの削減に寄与しました。漫画は一般には最初に週刊誌に掲載され、後日に単行本として出版される折には判型はそのつどいろいろな大きさに変わりますが、解像度が高いデジタル版下がデータベース化されていると、いつも原画と同じレベルのクオリティの高い出版物を提供することができるからです。

漫画の原稿は漫画家からストーリーを絵にして仕上げた原画として入稿され、それに吹き出しの文字の書体指定をして配置します。その際に出版に必要なクオリティになるように原画を補足・加工して、出版物のサイズに合わせて面付けします。週刊誌では入稿から下版まで最短距離のタイトな時間に多量処理をすると同時に、今日では紙の漫画に対しても電子書籍に対しても、また双方同時にデータ加工を行うことも要求され、ますますデータ管理やワークフロー管理が制作上の大きなカギとなっています。

電子書籍の広がり

2006年くらいから携帯電話での漫画コンテンツ配信が流行りはじめて急速に伸びたのも、前述の版下のデータベース化が行われていたからです。パソコン向けの漫画配信は紙のページと同じイメージで行われましたが、携帯電話は小さな画面なので、漫画紙面をコマ送りに分割するような加工がされていました。

しかし2012年ごろから電子書籍リーダを利用した漫画配信によってページ単位で見るように変わりつつあり、再びデータベースからパソコン向けの漫画配信データを活用するワンソース・マルチユースが威力を発揮するようになりました。

この折にはデータベースからEPU B3に対応したフォーマットにすることで、いろんな電子書籍端末や電子書籍リーダーで見られるようにできます。以前の携帯電話の時代には各キャリアごとに取り決めがあり、また各種個別フォーマットに対応せざるを得なかったのが、2013年に政府から電子書籍制作に対する補助金がついたことにより、急激に出版物の電子化が進み、同時にフォーマットもEPU B 3に集約されていき、電子書籍の分野全体がワンソース・マルチユースになりました。

電子書籍端末向けの配信の元となるEPU B 3は日本のタテ組に対応するだけでなく、さらに爆発的に普及したスマホにおいても標準的電子書籍フォーマットとなり、電子書籍の分野は第2のブームになってきました。そこで漫画・コミックの出版においても、紙の本と電子書籍が平行して提供されるような状況となりました。

これには漫画出版社だけでなく、SN Sやゲームの会社もコラボレーションして、お互いの顧客を結びつける試みがいろいろ始まっており、しかも携帯電話の時代の国内市場だけでなく、EPU B 3の特徴を活かして英語も中国語も同時配信するものも増えつつあります。

海外市場に向けて、漫画で外国語を学ぶ試みを、「エデュケーション・コミック」として行った二葉企画・二葉写真製版の例があります。外国人が日本語を覚えるのに漫画が使われたことがあったので、日本の有名な漫画の吹き出し文字部分を韓国語で表示できるようにし、またその部分を日本語の音声で聞けるような仕組みです。こういった多言語漫画の仕組みは英語やいろいろなアジアの国で検討される時代になっています。

ワンソース・マルチユースが可能な電子書籍にするために、最初からEPU B 3の仕事も増え始め、これからは多言語化で世界に日本のコンテンツが売られる試みが増えていくとみられます。今まで日本の出版社や出版制作による出版物の海外展開は、紙の媒体では進みませんでしたが、電子書籍になることで大きな可能性が生まれたといえます。

お問い合わせ先:株式会社二葉企画

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