カーボンニュートラル編

データは語る

CO2排出量は着実に減少へ

 政府は2050年までに、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指しています。人間は活動すればCO2を排出しますから、CO2の排出量を地球からなくすことはできませんが、排出した分のCO2を植物が吸収してくれれば、地球温暖化の進行を抑えることができるということで、脱炭素社会の実現に向けて取り組んでいます。
 カーボンニュートラルを達成するためにはCO2の排出量の削減並びに吸収している森林保全を推進していく必要があるわけですが、印刷産業も(一社)日本印刷産業連合会(以後、日印産連)が「2050年カーボンニュートラル宣言」を策定しました。これはカーボンニュートラルの実現に向けて、「省エネ活動のさらなる推進」「再生可能エネルギー、新エネルギーの利用拡大」「プロセス・構造の転換によるエネルギー効率の最大化」に取り組んでいくというものです。
 ただし、これらの取り組みは個々の企業が実現しなければならないことです。そもそも印刷業は印刷物を作るのにかなりのCO2を排出しています。だからと言ってCO2の排出量を抑えるために印刷事業を縮小するわけにはいきません。
 現在はペーパーレス化、デジタル化の波という外的要因で、紙媒体が減少しつつあり、それによって印刷産業のCO2の排出量が減少している背景もあります。しかし、印刷産業もカーボンニュートラルに向けてさまざまな技術を取り入れて、成果を上げています。
 日印産連では2030年度までにCO2排出量を2013年度比で55.7%削減(86.7 万トン)の69 万トンの排出量にすることを掲げています。因みに2021年度はCO2排出量が99.2万トンと、前年度比マイナス4.2%の削減となり、これは2013年度比でマイナス36.3%(56.5万トン)の削減となりました。(グラフ参照)
 コロナ禍によって事業活動が低下したことが大きな要因かもしれませんが、近年の印刷会社の省エネ活動やデジタル化が功を奏してきたからだと言えるでしょう。

MISで業務効率化とコスト削減の実現を

 印刷業においてCO2の排出量を最も左右するのが電力使用量です。印刷機をはじめ関連設備を稼働するにはかなりの電力を使用します。しかし、事業活動を行って売上を上げていくためには、それらの設備機械を稼働させなければなりません。
 最近はグリーンプリンティング認定製品を使用したり、デジタル印刷機でオンデマンド印刷にシフトするなど、無駄を出さない印刷を心掛けるようになりました。他にもUV 乾燥、水なし印刷、LED 化などによって、省エネや環境負荷の低減・CO2削減を目指しています。
 2024 年以降は、再び電気料金の値上げが実施されると見られています。日印産連では、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて具体的な施策として、以下の3 項目を提示しています。

  1. 省エネ活動のさらなる推進
     「エネルギーマネジメントシステム(EMS) の導入」「高効率機器、省エネ機器の導入」「LED- UV など乾燥のための低エネルギー技術、機器の導入」
  2. 再生可能エネルギー、新エネルギーの利用拡大
     「電力調達における再生可能エネルギー由来の電力調達」「太陽光発電設備の導入」「熱エネルギー源としての水素、アンモニア等の利用」
  3. プロセス・構造の転換によるエネルギー効率の最大化
     「生産プロセスの転換と適正品質基準の確立により、印刷ロスを極小化」「デジタル印刷機の導入やDX によるジョブシェアリング」「企カーボンニュートラル編画・広告、充填、流通等のバリューチェーンへの拡大」

 この中で特に注目したいのが、3番目の「プロセス・構造の転換によるエネルギー効率の最大化」です。必要とされる印刷物だけを印刷し、極力在庫をゼロにする考えは大切です。そのためにはデジタル印刷技術を駆使し、MIS を導入し印刷工程と社内業務を管理していくことが、当面取り組むべき施策だと言えるでしょう。MIS によって印刷業務の原価管理を行い、コスト削減を図っていくことで設備機器のエネルギー効率の最大化に繋げていくことができるでしょう。

カーボンニュートラル 再生可能エネルギー 月刊GCJ