ニーズに合わせた高品質の抜型で顧客に貢献
ベニヤ板を主体に曲げ加工した刃物を埋め込んだ抜型を製作している有限会社山元抜型製作所。紙を抜き取って紙器や什器などを作る上で欠かせない製造工程である。顧客のニーズに合わせて経験豊富な職人が製作する同社の抜き型事業について、平賀政勝社長に話を伺った。
有限会社山元抜型製作所
〒065-0023
北海道札幌市東区北23条東18-2-30
TEL 011-781-8179
FAX 011-782-4795

代表取締役
平賀 政勝(GC北海道)

札幌市の抜型製作の受け皿的存在に
有限会社 山元抜型製作所は1975年に創業し、今年で創立50周年を迎えた企業である。事業はGCJの中では異色の抜型製作業になるが、箱や段ボールなどを製作する際に必要となる箱の設計図(展開図)の抜型を製作している。
平賀社長は前職では看板業界に従事していて、何とGC北海道の酒井理事長の日本標示株式会社に勤めていたという。山元抜型製作所に転職するきっかけとなったのは、営業をしていた時である。「ステッカーを作る仕事が入り、その型を抜く作業があったので山元抜型製作所に外注先として発注した際に、現在の山元会長に気に入られて、『ウチに来ないか』と誘われたのがきっかけです」と、平賀社長は二十数年前のことを述懐する。
抜型を製作する企業は北海道では淘汰されつつあり、今では4社しかないとのこと。「北海道の菓子メーカーさんの商品箱の抜型はほとんど当社で作っています」と、札幌市で唯一の抜型製作所として、同社は業界の受け皿的な存在になっている。
業務は、「お客様からサンプルの抜型で了承をいただくと、CADシステムでデータ作成し、製版会社にデータを送信。製版会社ではデータに基づいて版を作り、印刷データを印刷会社に渡すという工程を経る。「そのため製版会社や印刷会社との連携が重要になってきます」と話す。
「当社のメインのお客様は印刷会社になるのですが、お客様が保有されている抜型機に合わせた抜型を作るため、さまざまな要望にお応えしていくことを重要視しています。ベニヤ板にレーザー加工を施し刃物を曲げて入れていく作業になりますが、ニッチな分野の仕事だと言えるでしょう」と話す。
実際の商品になるものだけでなく、普段はサンプルや試作品の抜型も作っている。商品によっては抜型1つで何万個、何十万個も箱を作ることになるが、同社の収益は抜型1つの製作料ということで、ロット数の多さと比例して製作料が増えるというものではないとのこと。その点が印刷業と大きく異なる点と言えるだろう。「ただし、大判の中に例えば3面の抜型をレイアウトするのであれば、3個の抜型を製作する必要がありますから、その数の製作料はいただけます」。
印刷業界との共通点は前工程のものづくり
同じ紙に抜型の形が異なるものを複数組んだり、変則的なはめ込みをしたりする場合は、紙の取り方が複雑になるため正確なデータづくりが求められる。「いかにお客様に正確な抜型を提供しお客様のビジネスに貢献していくかが、当社の経営方針です。ニーズに合わせて高いスキルを持ったベテランの職人が製作に励んでいます」と職人技がものを言う仕事である。
抜型業界も時代の移り変わりで技術変革をしてきた。「この十数年間でインクジェット機やカッティングプロッターが普及したため、500 個くらいまでは小ロットのオンデマンド生産で可能となり、そのことが抜型業者の淘汰に繋がった1つの原因になっています。新商品のパッケージを作る際は最初にサンプルを作る必要があるため、カッティングプロッターを使って白紙でサンプルを作り提案しています」と、オンデマンド化が進んでいると指摘した。
また、「後加工を請け負っているお客様に対しては、箱の加工部分で人手をかけない機械貼りが行える手法を薦めて、コスト削減の提案をしています。納品先のお客様からの信用度も違ってきますから、それを踏まえて当社ができることをその都度お客様である印刷会社に提案させてもらっています」とのことだ。
営業は得意先へのルート営業が中心で新規開拓は行っていないという。そのため、売上は顧客の箱作りの需要状況によって同社の仕事が左右されるため、顧客が商戦期になると繁忙期を迎えるとのことだ。
抜型業界も人材不足で、若い社員が業界に入ってこないのがネックになっている。「職人技が求められる仕事ですが、将来を考えますと、若い人材を育てていく必要があります。ただ育つまで若い社員は在籍してくれないのが実態です。今後はWebサイトで若い人たちに業界をアピールしていく必要があるかもしれません」と、若い人材を取り込むことが経営課題の1つだ。
GC北海道の組合員とも仕事で繋がっているとのこと。「異業種とは言え、GC北海道の組合員さんとは、商品を作る前工程の仕事では共通しており、ミスやロスをなくして高品質を追求するという点で一致しているのではないでしょうか。つまり、ものづくりに対する考え方は同じだと思っています」とのこと。
また、抜型を作っている機械をいかに他の分野に利用して、新たな商品づくりをしていくかを模索しているという平賀社長。新規開拓に注力していく考えを持っている。




|