費用対効果の高い高付加価値印刷に注力する

社屋内再生エネルギー100%電力を実現し、作業・製品環境負荷を削減し、顧客のメディア制作に貢献している株式会社ユーホウ。特に高精細印刷による高品質な印刷物や、付加価値の高い販促物で高い評価を得ている。同社を創業し牽引している増子光晴社長に話を伺った。


株式会社ユーホウ

〒335-0001
埼玉県蕨市北町5-10-28
https://ciz.co.jp/

代表取締役社長
増子 光晴(GC東京)

試行錯誤を重ねて印刷技術を身に付ける

 株式会社ユーホウは、1982年6月に写植と製版を生業に創業した会社である。「以前は製版会社に勤めていましたが、知人の勧めもあって同僚と2人で弊社を立ち上げました。まだ20代半ばという若さで、昼間は営業をして夕方以降は制作の仕事を行う日々でした。今日まで会社を維持できているのは、節目節目でいろいろな方々に助けていただいたからだと思っています」と、増子社長は振り返る。
 90年代末になり社員も増えDTP事業に注力し、DTP出力センターを開設。2000年には現所在地の新社屋を入手したのに伴い、CTP出力機とハイデルベルグ社の菊全判オフセット印刷機「SM102-4P」を導入し、印刷業に進出したのである。
 「drupa2000を見学した際に、パントンヘキサクローム技術を目にし、いち早く特色を加えた6色のプロセス印刷に着目しました。印刷機を動かしたことがない素人集団でしたので、印刷の常識というかルールを知らないまま、独自の方法で試行錯誤を重ねて印刷技術を身に付けていきました」と、高品質印刷に舵を切ったのである。
 現在は、DTPからCTPデータを出力し、最大4800dpiという高品質な印刷環境を構築し、高い品質の写真集をはじめ各種印刷物を顧客のニーズに合わせて提供している。
 以後、高付加価値と環境に配慮した印刷を展開していった同社は、11年には世界1号機の小森コーポレーションの四六全判HUVオフセット印刷機「LITHRONE LS-644」を、14年には新たにハイデルベルグ社のUV印刷機「CD-102-4P」を導入した。同機には徹底した印刷濃度管理を実施し、AM900線の高精細・高輝度印刷を実現している。また、全印刷機にカメラを4台搭載し、詳細な履歴を取って印刷品質に努めている。「印刷用紙を1枚ずつナンバリングすることで、最小異物混入用紙が何枚目か?どの箇所に不具合やエラーが出たかが、一目瞭然に判明できるようにしています」と、厳密な品質チェックを行うことで、エラーの所在を明確にできるようにしている。
 要するに、異物発見に止まらず1job内の履歴を全て残し、極力印刷情報を残すことでNG物を取り除き、顧客要望に沿った印刷物をプリントアウトしている。さらに、印刷時の濃度補正用抜き取り用紙も大型スキャナーで画像化し、別の検査ソフトにて確認をして後工程での抜き取り確認時の情報として利用している。
 「お客様が使用する紙媒体や紙製品の価値を印刷面から高めて、お客様に費用対効果のある印刷提案をする
ことを経営方針にしています。また、印刷は単に刷って配るだけではなく、そこに視覚的な効果を加えることで付加価値を高め、より売れる製品になると思っています」と増子社長は話し、エコ印刷と品質向上を両立させる印刷ビジネスに取り組んでいる。

社屋内再エネ100%電力を実現する

 営業品目は、印刷物全般からB1判までのポスター、情報誌、会社案内、商品説明書、各種パンフレットやチラシなどの各種商業印刷物の他に、立体感のあるレンチキュラー印刷、特殊印刷、販促物、楽しく学べる印刷物など、多彩な印刷技術と表現力を駆使して、企画・デザインから印刷・後加工まで展開している。
 同社は独自で印刷技術を磨いてきた経緯から、当初から高い印刷品質の提供に努めてきたため、印刷基準であるJapanColor の標準印刷認証は即座にクリアしたとのこと。「もはやJapanColorの色差内で印刷することは至極当然であり、高品質を求める弊社やお客様の間ではより高い数値で印刷しているのが実情です」と高精細印刷に取り組んできた。 
 現在は4C高輝度印刷のKaleido®や6C表現のヘキサクローム、さらにはデジタルマイクロスコープを使ってオフセット印刷の撮影・解析を行い、網点の測定・均一化を図っている。
 特筆すべきは21年1月に「再エネ100宣言RE Action」に参加し、同年4月に社屋内電源を全て再生エネルギーに100%切り替えて、顧客におけるスコープ3での負荷削減と、同社内でのスコープ2での環境を整備したことである。今後ますます求められるCO2対策や、VOC削減対策によるエコ印刷に積極的に取り組んでいる。
 また昨年は、非化石エネルギーの利用を証明するための文書である「CO2フリー電力購入契約証明書」を取得した他、12月には「グリーンプリンティング工場認定証」を取得した。さらには、グレーを正確に再現できる印刷管理を実施していることを証明する世界の印刷認証制度の「IdeallianceG7 Professional」を取得している。
 増子社長は印刷業界について「厳しい環境下にありますが、切磋琢磨をする関係の中で、各社が得意な分野を伸ばし、自社で不得意とする仕事を受注しても、それを得意にしている仲間に任せることで、結果的に高品質でお客様が満足できるものを作ればよいと考えています。全て自社でやる必要はなく、信頼できる仲間同士が連携して仕事をする仕組みを構築すれば、自社が受注し責任をもって納品まで完結すればよいわけです。そのような業界を望みます」と話す。


高付加価値印刷 GC東京 Fellowship