デザイン力を活かして顧客の課題を解決する
山形県内を商圏にデザイン力を掲げて、企画から印刷、サイン計画・施工までビジネス領域を広げている株式会社いづみ企画。顧客とのコミュニケーションを重視する地域密着型の営業で顧客の課題を解決している。事業内容について長岡巌社長に話を伺った。
「街のデザイン屋さん」として親身な対応を
株式会社いづみ企画(1999年4月に株式会社に移行)は、1970年に印刷会社に勤めていたご尊父が独立し、写植版下製作で創業した会社である。当初は地元の新聞社や印刷会社から写植の仕事を受注していたが、現在でもそれらの企業と取引は続いているとのことで、DTP制作を主体に地域に根差したデザイン会社として事業展開している。
長岡社長は以前、東京都文京区にある(学)日本プリンティングアカデミーに1年間在籍し、その後、東京都墨田区にある総合印刷会社に就職し2年間勤務していた経歴を持っている。山形市に戻ったのは、ご尊父が病床についたため、会社を支える必要性が生じたからだと話す。
「3年間という短い期間ではありましたが、印刷に関する知識やスキルを身に付けられましたので、実家に戻ってすぐに仕事に従事することができました」と振り返る。
同社が写植からデジタル化に移行したのは90年代半ばだった。当時地方としては早い段階でDTPへ移行したと言えるだろう。「取引先の新聞社さんがMacを導入することになり、システムを合わせる形で弊社もMacを導入しDTPによる制作に切り替えました」と述懐する。
当時はデザイン制作や組版が主体であったため、ソフトウェアはIll ustr at orとQuarkXPressを駆使して仕事をしていた。地元山形市内の企業や団体を中心に営業展開した同社は、親身になって対応することで、受注した顧客や取引先からの口コミで顧客を紹介されることもあり、次第に顧客も増えて今日に至っているという。
長岡社長が代表取締役として事業を継承したのは、今から20年ほど前のことである。「父親に代わって一時期母親が社長に就いていた時がありましたので、社長としては3代目になります」とのことだ。
営業方針としては、「地域密着型をモットーに、いろいろな方たちとお会いし会話をする中で、仕事の話をさせていただき業務に繋げていく感じです。デザイン会社と銘打っていますが、親しみのある街のデザイン屋さんとして、いつ何時でも親身になってお客様の課題に応えて解決していくようにしています。そんな気軽に相談できるデザイン会社であることを心掛けています」とのことで、長岡社長の顧客との関係を築く営業力が大きいことが窺い知れる。
人材の確保については「仕事柄社員個人の力量に頼らざるを得ませんから、社員とは良好な関係を築いて、長く勤めてもらえることを一番に考えています。現在は残業しないようにし、午後6時には終業するようにしています」と、社員が働きやすい職場環境を心掛けている。
サイン製作はデザインから一貫生産体制で
設備は、大判インクジェットプリンターとカッティングプロッターを保有しているが、CTPや印刷機など後工程の設備は保有しておらず、製版・印刷は全て外注に出している。
同社が得意にしているのはDTPによるデザインである。「お客様の想いやイメージをしっかりと受け止めて、コミュニケーションを密にとりながら具体的なカタチを提案するようにしています。弊社では印刷物以外にサイン・看板などの企画・製作も事業の柱になっていますので、ヒアリングを重ねて最適な企画・デザインを提案させていただいています」。
サイン製作については、企画から施工に至るまでトータルで請け負う一貫生産体制を敷いているため、細かな要望に即座に応えられる点が同社の特長だ。
「私は営業を任されていますので、お客様と制作する社員の橋渡しをきちっとしなければなりません。制作担当の社員がお客様に聞きたいことを、私が想定して代わりに聞くことになります。一方で、お客様の要望を正確に社員に伝えなければなりません。中にはお客様に具体的な案を示すために、その場で絵を描いてお客様に確認をとることもします」と、自らラフデザインも手掛けているという。
また、サイン・看板の仕事を受注する時には、必要と思われる紙媒体を勧めたり、その逆に紙媒体を製作する際に、サインや看板の話をしたりするケースもある。サイン製作では市内のさまざまな業種の顧客の仕事をしており実績を上げている。まさに自然な形でクロスセル営業を行い、LTV(顧客生涯価値)を高めている。
今秋には郵送料の大幅な値上げが予定されていることから、定期刊行物を郵送している顧客は痛手を被ることが予想され、同社の仕事にも影響が出ることを懸念している長岡社長。印刷物の受注が減少傾向にある中、「データ制作は今後も必要とされるビジネスですから、デジタルデータの加工・処理などを重視した営業を考えています。他社とのコラボレーションを図りながら、お客様とともに考え、ともに行動し、ともに栄えていけるよう頑張っていきます」と話す。
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