データ制作から印刷・加工まで一貫生産体制を築く

「文字を通して情報文化の発展に寄与」することを経営理念に、デジタルデータから印刷・後加工まで一貫生産管理し、Web制作やデータベース構築などワンストップサービスを目指している株式会社カネコ。創業者の金子社長を継いで2代目となった秋山武司社長に話を伺った。


株式会社カネコ

〒112-0002
東京都文京区小石川3-9-3
https://kaneko-kk.com/  

代表取締役社長
秋山 武司(GC東京)

豊富な後加工設備を揃えてモノづくりを

 株式会社カネコは1971年に写植業者として創業。90年代にMacをいち早く導入してDTPに移行し、現在ではデータ制作から印刷、加工、発送業務まで一貫生産体制を築き、ワンストップサービスを展開している。

 秋山社長は、以前は製版会社に勤めていたことがあり、その時に仕事を通じて創業者の金子前社長と知り合ったとのこと。「勤務していた製版会社は大日本印刷の社内で下請けの仕事をしていましたが、20年程前に会社の事業が滞り廃業することになった際に、金子社長に声をかけていただき弊社に入社することになりました。金子社長は製版から印刷、後加工分野にも事業を拡げていくつもりでしたが、なかなか協業化する会社が現れないため、一線から身を引かれることにし、ご自身は会長に就いて、私は社内で一番年上ということもあって、社長として事業を引き継ぐことになったわけです」と、同社に入社し社長になった経緯を振り返る。
 秋山社長は前の会社で、前工程の業務管理を経験し組版から印刷まで全工程を熟知していたこともあって、金子会長の意思を引き継ぎ、オンデマンド印刷や後加工にも注力してきた。そのため設備機器が豊富なのが同社の特徴である。

 オンデマンド印刷機3台の他、製本機、断裁機、丁合機、ペーパーカウンター、紙折り機、ミシン機(筋入れ可能)、大判インクジェットプリンター、立体物の印刷が可能なフラットベッドUVプリンター、カッティングプロッター、レーザーカッターと、オフセット印刷機以外、ほぼ全ての後加工が可能と言えるほど、設備を取り揃えている。
 特に後加工では、カッティングプロッターやレーザーカッターでさまざまなメディアをカット加工し、UVインクジェットプリンターで立体物の印刷も行い、顧客のニーズに合ったサンプル作成や販促品を製作している。印刷に関しては、オンデマンド印刷は内製化し、オフセット印刷を要する場合は外注に出しているとのことだ。
 取引先については、「基本的には地域密着型になります。商店街や大学、幼稚園、一般企業、大手印刷会社など都内のお客様が中心です。近年はお客様が自らデータを作成し入稿するケースが増えました。ただ、パワーポイントで作成したものを印刷してほしいという要望などはあります」とのことだ。

オンデマンド印刷のネット店舗も展開

 同社ではインターネットを使って受注作業から発送作業まで、独自の受発注システムを構築している。都内トラックターミナルの倉庫に多種多様の顧客の印刷物をまとめて管理・保管し、棚卸して顧客から依頼があった時に、必要に応じて発送する印刷物のロジスティクスを整備している。「お客様の倉庫の在庫管理をなくし、発送業務のコストダウンが図れるようサポートしています」とのことだ。
 取引先の中には、地域の漁業組合を束ねている全国漁業協同組合連合会や、それら各地域の漁業組合に付随する銀行などもあり、そこからの冊子類や銀行の振込用紙などの印刷も扱っているとのことで、安定した顧客をしっかりと確保している。
 同社は長年DTPを主体にしてきて制作ノウハウも長けているため、パッケージデザインでは実物の紙で抜き型を制作し組み立てたり、3Dソフトで制作したあと、3Dプリンターで立体的な物も手掛けたりしている。ただしこれらは大量生産ができないため収益性は良くないとのことだ。
 実は同社は業界に先駆けてオンデマンド印刷機を導入したという。「20年ほど前にコニカミノルタが初めてオンデマンド印刷機を発売した時に、その第1号機を導入しました。それ以来、コニカミノルタのオンデマンド機を代替わりするたびに使い続けてきました」。
 現在では、オンデマンド印刷機はコニカミノルタ製が2台と、最近になってリコー製を1台追加し、3台体制でオンデマンド印刷を手掛けているという。「リコーのオンデマンド印刷機はホワイトトナーをはじめシルバートナーなど特色を含め8色のトナーが使えますから、オンデマンド印刷に付加価値の高いカラー表現ができるのがメリットです」とのこと。

 また同社では『プリント一番星  』という名称で、オンデマンド印刷のネット店舗の運営も展開している。「大手通販会社のような設備を構えて大規模な運営をしているわけではありません。店舗で使うオリジナルのヘッダー印刷であるとか、クーポン冊子、チケット類など小ロットのお客様のオリジナルな要望に応えるもので、メールや電話で注文を受けて発送しています。これからは弊社でモノを企画・製作し、ネット店舗で販売していく方向にも注力していく考えです」とのことで、オンデマンド印刷によるネット販売に意欲を示している。


一貫生産体制 GC東京 Fellowship