有限会社東広告製版■総合コミュニケーション企業として顧客をサポート
宮城県仙台市で製版業を主体に、各種印刷物を制作している有限会社東あずま広告製版。早くから製版のデジタル化に着手し、フィルムレスに移行した。現在「印刷を核とした総合コミュニケーション企業」を標榜し、印刷を通じて顧客のさまざまなニーズに応えている。東成映社長に話を伺った。
プリプレスを主体に幅広い印刷物を受注
有限会社東広告製版は、1971年に東社長のご尊父の東光彦会長(GC東北前理事長)と伯父様の2人で創業した、新聞広告の製版を主として始めた製版会社である。1980年には現住所に4階建ての自社ビルを建て今日に至っている。
「当時はご存じのように好景気で印刷業界も右肩上がりで成長しており、弊社も製版業だけで会社がやっていけた時代です。私自身は当時を知らない世代で、弊社に入った時は既にバブルが崩壊し景気が低迷し始めていた時でした」と話す。
東社長は地元仙台市内のコンピュータ情報処理の専門学校を卒業し、地元のコンピュータソフトウェアの会社に就職した。「東京に支社がある会社で当初より東京支社に勤務していたのですが、父親から直接話はなかったものの会社を手伝ってほしいという気持ちを感じとっていました。もう30年以上前のことになります。業界では製版機器のデジタル化がスタートした時期で、まだまだコンピュータを使った業務ではなくアナログの仕事でした。父親の気持ちを察したというか、将来のことを考えて5年間勤めた会社を退職し、弊社に入ることにしたわけです」と、入社までの経緯を振り返る。
入社した当時はソフトウェアの会社に勤務していたこともあって、印刷業務のことは知りませんでしたから、営業など外回りの業務を中心に行っていたが、その際に知識を活かして、顧客や同業者の間でデジタル化や出力上の問題を解決・修復したりしていたという。
社内でも90年代後半になってMacを導入し、製版のデジタル化を進めて次々と新しい機器を導入し、ワークフローのデジタル化を構築していった。
また、2001年には菊半裁オフセット4色機を導入し、本機校正だけでなくカラー印刷の内製化により各種商業印刷物の制作を手掛け、顧客のさまざまなニーズに応えていく体制を築いた。「それまでは印刷の仕事を受けておらず、製版業のみの経営でした。最初は本機校正による色校正刷りとして使っていましたが、そのうち印刷物も受注するようにしました」とのことで、菊全サイズ対応のCTPセッターを導入し、効率的な出力作業を進めていった。
2015年に代表取締役に就いた東社長は、「印刷を核とした総合コミュニケーション企業」をモットーに、原稿制作から印刷までを請け負って顧客のニーズに応えていく経営方針を打ち出した。
訪問営業で顧客のニーズをくみ取る
現在同社は、チラシ、パンフレット、DM・ハガキ、ポスターなどの商業印刷物全般の印刷と、のぼり旗・横断幕の素材からデザイン制作を手掛けるまでになっている。
エプソンの大判インクジェットプリンター「PX-10000」と富士フイルムのオンデマンド印刷機「Versant」が色校正機としての役目や小ロットカラー分野の印刷を担っており、オフセット印刷は外注に依頼している。
特筆すべきは、2007年に導入した昇華転写プリント方式ののぼり旗出力機「TEXPRESS」である。出力幅が大サイズであるため、のぼり旗やタペストリーなどの小サイズだけでなく、横断幕、縦幕GCJ組合員企業紹介の大サイズまで、1枚から製作でき多様なニーズに応えることができるのが特長である。
「弊社ではデザイン制作から生地への出力とポール取り付けのチチ加工までは行いますが、実際にはお客様が現地で取り付けられることが多いので、取り付けに関してはお客様の要望に合わせています。のぼり旗は立て看板と比べて安価ですし、取り扱いも容易な上インパクトがあって目立ちますから、店頭での集客には適していると思います。1枚から小ロットの製作を希望され、広告・販促用に効果を発揮できる点が、お客様への訴求ポイントになるでしょうか。弊社ではのぼり旗からタペストリー、横断幕、懸垂幕などの製作を中心に受注しています」とのこと。
顧客は地元企業の他に、関東や関西に本社を構えている仙台の支社や営業所で、納入先のほとんどは宮城県内の企業、事業所になるとのことだ。
「弊社は小規模ではありますが、製版・印刷の枠を超えてお客様の困りごとや問題を解決できるよう、Faceto Faceの営業を重視しています。日ごろから1件1件の仕事を大切にし、お客様のニーズをくみ取るソリューションカンパニーを目指しています」と話す東社長。
そのような経営理念の下で、事業の方向性についてはデジタルコンテンツの市場拡大に伴い顧客の要求も多様化していることを受けて、「なかなか難しい課題ですが、全社的に少しずつでもデジタルの知識を身につけて、ネットワークを構築したり、他社と協業したりして、デジタルコンテンツにも対応できるような体制をつくっていきたいと考えています」と語った。
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