株式会社ミヤプロ■印刷からICTまで広く顧客のニーズに応える
培ってきた技術力と高い品質を基に製版・校正の需要に応えるだけでなく、ICT関連サービスも展開し市場開拓し ている株式会社ミヤプロ。新たなビジネスや最新のデジタルコンテンツ制作にチャレンジし続ける宮嵜佳昭社長に、現在の事業内容やビジネスの方向性などについて話を伺った。
インターネットビジネスにいち早く取り組む
四国で唯一、平台校正機をUVインキ仕様に改良して顧客のニーズに応えている株式会社ミヤプロ。企画、デザイン、DTPから本紙校正までのプリプレス事業を主体にしているが、Webサイト制作からデジタルサイネージ、360°コンテンツ制作等のマルチメディアやサーバー運用管理まで、ICT関連のサービスにも取り組んでおり、事業は多岐にわたっているのが特徴だ。
ICT関連事業は業界においてかなり早い時期から取り組んできたが、その背景には、宮嵜社長が新卒後入社したコニカ(株)(現、コニカミノルタ(株))で画像出力関連のシステム開発に携わったことが大きかった。「最後の1年間システム開発に携わって、将来フイルムがなくなると思ったのです。それで27歳でコニカを退社して弊社に入社し、父親にいずれフイルムは無くなるのでデジタル化に向けて動き出したほうが良いと言ったところ、けんもほろろに突き放されました」。
当時はまだバブルも続いていた上に、アナログ製版が真っ盛りで非常に儲かっていた時代で、相手にされないのは仕方のないことだった。その後1990年代半ばになって米国・シリコンバレーを視察した宮嵜社長は、現地でインターネットの普及とホームページ上で動画が再生されている状況を目の当たりにし驚嘆した。
会社に戻って、これからの印刷業は紙の印刷だけに固執していては駄目だと、ご尊父様の考えとは異にするインターネットを使ったビジネスにも取り組むことにした。「当時はまだ製版が儲かっていましたから、弊社だけでなく業界全体でも先のことを考える必要性がなかったわけです」と述懐する。
そこで東京営業所を立ち上げ、システム関係に携わっていた社員がいたので、2人でインターネット関連のビジネスに取り組むことになった。そんな宮嵜社長の先見の明があったからこそ、ICT関連の事業をここまで拡大できたわけで、現在では多岐にわたったサービスを展開し大きな柱になりつつある。
「売上の多くは製版・印刷部門で、ICT関連はまだまだ小さいですが、制作を請け負うに当たって確実に収益を得ることができます。印刷は材料費や人件費がかさみますし、収益性がほとんどなくなりました」と話す。
動画・AR・VR制作に着手し成果を出す
ただし、同社のUV校正サービスは別である。UVインキとUV照射装置を用いて蒸着紙、ミラーコート、PET、シール・ラベルなどの素材に対応した高品質なUV校正は、広告代理店やメーカー各社から好評を博しコンスタントに受注している。
そんな付加価値の高い仕事が同社の真骨頂である。「特色練機とCCM(コンピュータカラーマッチング)によって特色インキの調合をデジタルで行い、高精度なインキ調色を実現していますから、印刷本機での立ち上げが迅速です」とのこと。このように特色のデジタル管理で、従来の職人技を要する特色作りは不要となり、新人でも機器を操作して簡単かつ正確に特色インキを作れるようになったという。
「製版・校正分野の仕事は、印刷産業の縮小化に伴い減少していくことは分かっています。それに市場もお客様もデジタルコンテンツへの関心が高くなっていますから、弊社もその方向にシフトしてお客様のニーズに応えていかなければなりません」とのことで、Web サイトをはじめデジタルコンテンツ制作は不可欠だということで、さらに注力していくと話す。
実際、同社は持ち前の営業力もあって次々とICT関連のビジネスを受注している。直近では香川県小豆島の土庄町から「電動キックボードで巡る せとうち・土庄魅力発見!アドベンチャーツアー」の公式サイトとPR動画制作を受注した。ドローンを駆使した撮影手法や巧みな編集で、クオリティの高い動画を制作し、今後さらなる受注が期待される。
また、AR・VR制作にも取り組んでおり、360°映像を体験できる高性能VRゴーグルを導入し、臨場感のある動画制作を手掛けている。
人材の採用では「DTPやシステムプログラマーを募集する時はそれなりに応募がありますが、製版・印刷となると人が来ないですね。会社は人で成り立っていますから、若い人が入社してくれるようなビジネスを展開していくことが大事だと感じています。その点からも、デジタルコンテンツ制作の企画やデジタルマーケティング施策にますます取り組んでいく必要があると思っています」と、宮嵜社長は話す。
高い品質と技術力を持ってさまざまなアイデアを具体化し、新しいビジネスの創出にチャレンジし続けていく姿勢は、大いに見習うべきものがあると言えるだろう。
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