有限会社田中凸版■シール印刷をデジタル化し多彩な需要に応える
シール・ラベル印刷に特化している有限会社田中凸版。早くからシール専用のデジタル印刷機を導入しデジタルワークフローを構築、さまざまなニーズに応えてアナログからデジタルに変革しつつある。田中潤一郎社長に話を伺った。
早くからシール印刷のデジタル化に対応
有限会社田中凸版は、1968年にご尊父様が設立し、亜鉛版や樹脂版を専門とする製版会社としてスタートした。長年培った製版技術で難しいシール、ラベル制作を中心に、顧客の印刷会社のニーズに応えてきた。
田中社長は大学卒業後、いったん大阪の印刷会社に就職する。「自宅と工場が一緒でしたので子どもの頃から社員さんの働く姿を見て育ちましたし、将来は父親の後を継ぐことを意識していました。それで先々のことを考えて、印刷全般の知識を学ぼうと総合印刷会社に就職したわけです。5年程経験を積んで自社に入社しました」と、述懐する。
しかし、亜鉛版や樹脂版を使った製版は、人手を有する職人作業で世代交代が難しく、またデジタル化の波が押し寄せ、亜鉛版や樹脂版の需要が減少してきた。
製版事業だけでは今後経営を維持するのも困難になると考えた田中社長は、社長に就いた頃からデジタル化を進めていった。まず、2005年に大判インクジェットプリンターを導入してデジタル印刷事業に進出し、印刷会社との連携を強化した。さらに2年後にはレタープレス用として「Plate Rite FX870」を導入し、樹脂版のCTP化に移行した。
「シールやラベル印刷のデジタル化が進展し小ロット化のニーズが高まってきたため、同業他社よりもいち早く対応しなければと考え、まずは大判インクジェットプリンターを導入しました。その後もっと高機能で高品質の機械を導入することを考えるようになりました」と話す。
きっかけとなったのがIGAS2007だった。エプソンがプロトタイプのデジタルシール・ラベル印刷機を出展したのを見て、「これが製品化されればシール印刷の需要が開拓できると感じたのです。製品化されてすぐにエプソンの営業担当者が弊社に営業に来られて、機械について意見を求められた時に、以前から気になっていた機械だと言って、ちょうどタイミングが合ったわけです。それでエプソン社のショールームでの実機見学会に参加して、機能・品質面を確認してこれなら仕事に使えるということで、2012年に『SurePressL-4033A』を導入することにしました。九州地区では第1号機ということでした」と、田中社長は導入した当時を振り返る。
当初は社長自らがラベル印刷機の操作を行う
「弊社は凸版でシールの製版を製作してきたため、お客様はシール印刷会社がほとんどでした。ですから、小ロットやバリアブルを求めるシール印刷需要に応えていくためには、デジタルシール印刷機が不可欠だったのです。シール印刷のさまざまな需要に応えて、しかも特長のある印刷機で顧客開拓ができる印刷機を探していたわけです」と、『SurePressL-4033A』が同社にとって最適だったと話す。
ところが、同機を導入し稼働させるのに新たにオペレーターを1人雇って教育し、これからという時に、そのオペレーターが体調を崩して出社できなくなったのである。それで急遽、田中社長が操作せざるを得なくなったという。「他の社員はそれぞれの仕事が手いっぱいで任せられなかったので、私が操作しなければならなくなり、体調を崩し自宅に居る社員と電話でやり取りしながら機械の操作を教えてもらいました。それでどうにか操作を覚えて仕事をすることができました。何も知らない私でも動かせるということを改めて知りました」と、思いもしないエピソードがあった。その後は新卒を採用して教育し、同機を担当させることができたという。
同機の導入を契機に、本格的にシール印刷を展開してきた同社は、製版の需要が減少してきたのを受け、2020年に長年続けてきた亜鉛版・樹脂版の製版事業を辞めることにした。「売上が減少していたことは社員も知っていましたから、辞めることに特段反対はありませんでした」。現在は製版の仕事は外注に出しているとのことだ。
その後、得意先のシール印刷会社の自主廃業に伴い、平圧式シール印刷を2台引き取り、さらに2017年には、ものづくり補助金によって小型間欠レタープレスラベル印刷機を導入した。
また、2021年1月にはデジタルラベル印刷機を後継機の『SurePressL-4033AW』にバージョンアップ。「導入して10 年ほどになり、部品の供給が難しくなるため、後継機に入れ替えました。後継機は透明フィルムに白をのせてカラー印刷できる機種で、より多彩なデザインが可能になりました」とのこと。現状は計3台の印刷機で、シール・ラベルのカラー印刷の需要に応えている。
同社は1枚から大ロットまでさまざまなシール印刷の需要に応えて、顧客から厚い信頼を得て確固たる地位を築いている。デジタル印刷のバリアブルや臭わないといったメリットを活かして、さらに市場を開拓していく方針である。
|