有限会社旭プロセス製版■付加価値の高いデジタル印刷需要に応えていく
DTP制作からデザイン、製版のプリプレスを事業展開している有限会社旭プロセス製版。事業再構築補助金を申請・採択され、オンデマンド印刷機と断裁機を導入し、需要喚起を目指す。田中淳社長に話を伺った。
アナログ製版技術を活かしたビジネスへ
有限会社旭プロセス製版は、田中社長のご尊父田中隆氏が昭和21年に創立し、以後、アナログ製版を主体に品質を重視する仕事で市場を開拓してきた。三代目となる田中社長は、デジタル化に着手し、クライアントの要望に対応できるよう企画・デザイン部門を創設し、得意な画像補正・合成加工を強化した。特に特色同士の掛け合わせと高度な画像補正技術で顧客のニーズに応えて、画像処理のプロフェッショナルとして事業展開している。
同社は17名の従業員を擁しているが、その多くが長年勤めてきたベテラン社員だ。デザインやDTPにおいても勤続年数が長い社員が多いことから、アナログで培った製版技術が仕事に活かされており、品質の高い仕事をこなせる点が特長である。
同社は平台校正機を保有しており、画面上やプリンターでは確認しづらい、特色同士の掛け合わせの確認ができる技術を持っている。それを実現できるのも、調色できるスキルを持った職人気質の社員がいるからである。
デジタル化と同時に脱下請けにも着手し、印刷会社からの下請け仕事が全てだった会社を大きく変革し、現在では8割近くが一般企業からの依頼とのことだ。
そんな同社の仕事の主軸は、カタログ制作で、玩具や塗料、ジグソーパズルのカタログ制作を受注している。ある得意先からは数百頁にわたる白衣カタログの制作を請け負って、数千点にも及ぶ写真の画像処理・加工を手掛ける仕事も行っている。
「実際の生地見本が段ボールに入って送られてきます。実物の生地に合わせて写真の色味を調整していくわけですが、白衣なので、ほとんどが白か淡いピンク色です。同じように見える生地であっても微妙に異なりますから、1点1点確認しながら作業を進めていくことになります」と、カラーマネジメントを施した高度なアナログ技術が要求されるという。クライアントへ校正刷りを出して確認してもらい、問題がなければ面付けし演算済みデータを印刷会社に回すという工程だ。
また、カタログのデジタル化も請け負っている。「印刷機を所有していませんから、将来デジタルカタログに全て移行して、カタログを印刷しなくなっても、影響は軽微です」と言う。
他には、最大2m×2mまでスキャニングできる大判スキャメラを設置し、照明ムラや歪みを解消できるスキャニングサービスも行っている。陰影を表す立体的な絵画のスキャニングに適している。
オンデマンド印刷機で小ロット印刷分野へ進出
印刷に関しては印刷機を保有していないため協力会社に依頼しているが、このほど、オンデマンド印刷から後工程まで手掛けるデジタル印刷事業に乗り出した。
「印刷市場は短納期、小ロット化が進み、協力会社への委託だけでは、顧客の要望に応えられなくなってきました。また市場には特色が使用できるオンデマンド印刷機も増えてきているが、使いこなせていない会社が多いと聞きます。そこで、弊社が得意な特色同士の掛け合わせ製版技術を活かせるオンデマンド印刷機の導入で需要開拓することにしました」。
そのため、事業再構築補助金を申請し、新しい機械を導入して新市場に乗り出したのである。同補助金の申請では当初、田中社長自身が苦労しながら申請書を作成し提出したが、受理されなかった苦いエピソードを話してくれた。「何度か自分一人で申請してみましたが、不受理が続きかなりヘコみました。専門家に手伝ってもらい、無事受理され採択されました」と話す。
事業計画名は『特色製版・デザイン技術を生かすオンデマンド印刷機・断裁機導入による新業態開発』で、導入する機械はリコーのカラーオンデマンド印刷機とホリゾンの断裁機である。デジタル印刷に特色をプラスした付加価値の高い印刷事業を目指していくことになった。
「ホワイトトナーをはじめ全7色のスペシャルカラーが使えて、濃い色紙や透明紙上で豊かな表現が可能です。お客様に付加価値の高い提案ができると思います」と期待を寄せている。
新しくオンデマンド印刷機を導入する際には、「オンデマンド印刷から断裁機までの一連の作業工程について、営業や現場の社員全員が作業できるように操作を習得させます」と、多能工化を目指していく考えである。
年内にはオンデマンド印刷機と断裁機が稼働できる状態になるとのことで、「長年培ってきたアナログ製版技術と最新のデジタル技術を融合させて、他社にできない難しい仕事をしていきたいです」とビジョンを話す。
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