株式会社スモト■DTPを主体にクリエイターの作品で新分野も開拓
会社を引き継いで4年が経ち、「利より信」の理念の下で日々奮闘している前本陽子社長。印刷会社を顧客とし、DTP制作を主体に広告デザインのデジタルサポートを掲げている。今後はクリエイターとも仕事をしていくという前本社長に話を伺った。
株式会社スモト
〒730-0814
広島県広島市中区羽衣町8-25
TEL:082-241-9926
代表取締役社長
前本 陽子氏(GC中国)
「利より信」の精神で向上心を持って経営を
前本陽子社長が株式会社スモトの代表取締役に就いたのは、平成30年6月1日である。平成24 年にご主人である前本直樹さんがお父様の後を継ぎ社長になったものの、癌が発覚しわずか1年後に逝去されたのである。翌25年7月に、お義父様が再度社長となり5年間務めた後、事業を継承することになり、ご不幸を乗り越えてこられた。
社長に就いた時に不安があったに違いないが、「長く勤めていただいている社員が多く、仕事に関しては安心して任せています。そんな社員の皆さんとお客様に支えてもらっています」と、感謝の意を表す前本社長。
ところで、前本社長は平成5年に大学を卒業した後、アパレル商社に入社した。ブランド化や高級品と低価格品の二極化が進み始めた時代である。翻って印刷業界はDTPへの移行に伴いアナログ製版が減少し始めた頃である。結婚後はご主人が家業を継ぐために2007年に広島に移り住むが、畑の違う業界ではあるが、前本社長も印刷の仕事を手伝うようになった。
「実は私の祖父が不動産業を始めたのですが、後を継いだ父は『利より信、仕事の前に何でも相談される人になれ』という言葉を残しました。現在、その不動産業はその理念とともに兄が後を継いでいますが、私自身も印刷会社の代表者として、『利より信』はとても大切なことだと思っており、経営理念にしています。そのために必要な知識を学び、向上心を忘れることなく人間力を高めていくことを信条に日々取り組んでいます」と話す。
同社は、チラシ、ポスター、カタログ、冊子、DM、広報誌などのDTP 制作を主な事業にしており、それに伴う広告デザイン、編集を得意としている。印刷まで請け負っているが、印刷機は保有せず外注に出している。設備は校正紙を出力するプロダクションプリンターを保有している。社長に就任して既に4年が経過したが、このコロナ禍でご多分に漏れず同社も売上が落ちたという。
現在は現状を打開すべく新しい事業に取り組むために、広島県の山間部にある安芸太田町で、陶芸工房を営んでいる岡上多寿子さんの作品で商品を手掛けることにした。
クリエイターの作品から新商品を開発
岡上多寿子さんは、陶芸作品はじめタペストリー、イラスト、散文など、20年以上にわたって幅広い創作活動をしており、毎年のように広島市内で展覧会を開催していた。現在は自宅を活用してカフェとギャラリーを融合させたスペースを設営し、作品を展示している。前本社長は岡上さんとの個人的なお付き合いから仕事に結びついたという。
「さまざまな印刷物やポストカード、オリジナルのカレンダーの制作を請け負う予定です。イラストをたくさん描かれていますから、それらのイラストを使っていろいろな商品を作っていこうと、現在思案しているところです」と、今後はクリエイターの作品を扱うことで、小ロット分野で独自色を出していく考えだ。
現在、同社ではホームページを開設していないが、それには理由がある。「弊社のお客様は印刷会社がほとんどですから、作っているものをホームページ上で紹介するとなると、印刷会社さんとその先のお客様に許可をとらなければなりません。そのため具体的にこういう印刷物を作っていますということが謳えないのです。ただし、今日では仕事に関する問い合わせやご相談はホームページを通じて行われるのが一般的ですから、作った方が良いことは分かっています。まずはこれから提携するクリエイターの方の作品をいかに商品化し販売していくかに注力するつもりです」。
また、「私自身書道を学んでいたこともあり書くのは好きなので、書をアート作品としてグラフィック加工し作品として展開していこうと思っています」。
商品を販売するとなると、ネット通販が求められるため、いずれはWebサイトを開設する方針だという。「将来はいろいろなクリエイターの方の作品を扱えるようになればと考えています」と、新たな事業への意欲を示す。
これからは、長年培ってきたデザインやDTP 技術を基にクオリティの高い商品を作成して顧客に提案していくことを重視すると共に、広告デザインではデジタルでサポートしていくことを掲げている。「印刷物を手に取るお客様の立場に立ち、予測し、準備をすることを忘れずに制作に打ち込むことで、スモトにしかできない仕事を目指していきます」と、顧客を第一に考える精神で臨んでいる。GCJでは女性経営者が少ないこともあり、ダイバーシティ経営の観点からも前本社長の活躍に期待したいものである。
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