株式会社一真社■商品撮影と高品質データの作成に特化する
社内に商品撮影スタジオを設置し、ハイクオリティのレタッチ作業で得意先のニーズに応えている株式会社一真社。本紙校正とインクジェット出力を主軸に、高品質データの作成に特化している。中田辰悟社長に話を伺った。
ゼロから製版を覚えてデジタル化に移行
昭和46年に創業した株式会社一真社。中田辰悟社長は二代目としてハイクオリティの製版会社として顧客から高い評価を得ている。中田社長が24歳の時に、プロゴルファーを目指して勤めていたゴルフ場を辞めて新たに仕事先を探していた矢先、一真社が主催するゴルフコンペで、社長のお父様からオブザーバーとして参加するよう言われてプレーした。「順当に優勝したのですが、優勝スピーチをした際に『息子がこのたび帰ってまいりました。皆さん、よろしくお願いいたします』と、父親が紹介してしまったのです。私としては寝耳に水でしたが、取引先のお客様がたくさんいる場で否定することもできず、結局、入社する流れになったのです」と、入社についてのエピソードを話す。
当然、製版業の知識は全く持っていなかったため、ゼロからのスタートになった。「レタッチから始めて、次にスキャニングに移り、その後工務の仕事を経て営業というように、全ての仕事に就きました」という。
入社当時はアナログ作業であったが、DTPに移行し、早い段階からデジタル化したという。「サイテックス社のCEPSのワークステーションを導入し、DTPと繋げて製版のデジタル化を進めました。今では考えられないほどの膨大な設備投資でしたが、そのシステムを導入していなかったら今は無かったと思います」と、デジタル技術の構築の立役者になった。
同社はオンデマンド印刷やレーザー加工機、カッティング加工機も保有し、さまざまな販促品の製作を行っている。ゴルフ場の顧客には高級感のあるデザインのネームプレート、オリジナリティ溢れるボールマークなど、さまざまなゴルフ関連のグッズ製作を請け負っている。また、ゴルフグッズ以外にも、トートバック、ノート、ウェア、各種コースター、革製品、卓上カレンダーなどさまざま素材を使って多彩な販促品を製作している。
「いろいろな業界の人たちとコミュニケーションをとることで、普段とは違った情報が得られて仕事に繋がっています。営業は好奇心を持たないと、仕事の幅が広がっていかないですから。現在はコロナ禍で難しいですが、営業スタッフには、休日には趣味を持ち、外に出ていろいろな人たちと遊んでコミュニケーションを図るように言っています。やはり人と人との繋がりが一番大切だと思います」と、営業でのコミュニケーションの重要性を話す。
カメラマンの撮影方法を見て覚えて習得する
お客様から仕事を受注しても、外注に出していては利益がほとんどありませんから、社内一貫生産で社内利益をしっかりと確保できるようにしていくことが重要だと考えています。それと、弊社にしかできない特殊性のある仕事を広げていくことがこれからの課題です」と、経営方針を述べる。
また、インクジェットプリンターは、小ロットのポスターやペラ物の制作で使う他に、制作物の変更前と変更後を比べる差分チェックとしても使っている。ハイクオリティのデータを納品するためには、不備やミスによって間違ったデータを納品することはできないからだ。
同社では現在、商品撮影とデータの画像処理が仕事の主体になっているが、中でも腕時計の撮影は大得意先から安定して受注している大事な仕事だ。そのため、これからも撮影に注力していく方針だという。
撮影の仕事を始めたきっかけは、得意先を通じて腕時計の撮影をしていたベテランのカメラマンと知り合って、撮影の仕事を引き継ぐことになったのが始まりである。カメラマンの撮影スタジオに伺い撮影の仕方を見て学んだという。「学ぶと言っても具体的に撮影方法を教えてくれるわけではなく、撮影している端から見て覚えるというものでした。とにかく撮影ノウハウを身に付けて、その仕事を引き継ぎ主力事業にしたかったという一心でした」と中田社長は述懐する。
そして、3年前に会社を移転した際に社内に撮影スタジオを設置し、社内のスタッフと共に試行錯誤を繰り返して撮影方法を構築し軌道に乗せている。主な撮影が腕時計であることから、ライティングの仕方が特に重要になるとのこと。特殊な撮影機材を手作りし、まるで職人のような精緻さで撮影を行っているのが特徴だ。
「商品撮影の仕事自体はこれからもあり続けていくでしょうから、当面はそのノウハウを活かして撮影の領域を拡大していくつもりです。自社にしかできない高品質データの制作という強みを継続し、お客様を第一に考え、細かいニーズに応えていくことを心掛けていきます」と、商品撮影を強化し高品質データ制作に注力していくとのことだ。
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