株式会社学術写真製版所■高度な凸版製作技術で顧客のニーズに応える

凸の金属版の箔押し加工やエッチング加工を行っている株式会社学術写真製版所。職人による伝統的な技術と最新技術を駆使して、凸版の写真製版事業を展開している。多彩な凸版製作力でアイデアの具現化をサポートし、顧客のニーズに応えている金原善行社長に取材した。


株式会社学術写真製版所

〒112-0001
東京都文京区白山2-11-16
http://www.gpec.co.jp/  

代表取締役
金原 善行氏(GC東京)

箔押し加工はじめ多様な金属凸版を製作

株式会社学術写真製版所の前身となる安藤写真製版は、明治40年に大阪で創業し学術書や医学書の写真製版業を営んでいたが、太平洋戦争で社屋を消失したため、戦後東京で再興し、昭和31年に社名を現在の名称に変更し事業を再開した。
以後、銅版、亜鉛版、真鍮版の金属凸版の製作・エッチング製版、活版印刷、箔押版などの写真製版に特化し、一般の製版会社が持っていない技術で確固たる地位を築いている。都内で金属版の凸版製作では同社が第一人者であり、また同業者も姿を消しつつあるため、同業の製版会社から外注先として依頼されることも少なくない。
今日では、フレキソ製版や低コストの樹脂版、あるいは強度のあるマグネシウム版を使った製版にも従事し、一定の需要が出てきているが、NC 彫刻機を導入し、デジタル化にも対応している。
3年ほど前には、ザイコン社製のフラットベッド方式による簡単な操作で高品質出力が可能なUV露光CTP「basysPrint UV-SETTER」を導入した。「ネガとポジの両方のプレートを出力できますが、ネガを扱っている弊社では大いに利用価値がある出力機です。インキと水のバランスが理想的で、シャープで高品質に再現できて耐刷力があります。自動プレート搬送機能も装備しています」とのことで重宝しているという。
同機は1ビットTIFFインターフェイスを装備しているため、DTPで画像加工したデータを印刷ワークフローシステムのUVセッターとして活用することも可能である。
以前は、1階のフロアでは金原社長と事務の社員数名が仕事をしていたが、数年前に廃業した製版会社の社員何名かと協力し、新たに事業を拡大するために人員を増やしたことで、現在社員は18名になっている。

高品位なエッチング製版やデジタル加工処理も

一人ひとりの社員のデスクにパソコンが置かれ、DTPによるデジタル製版作業を行っている。「エッチング製版ではデザイナーが制作したデータをそのまま焼き付けることはできません。Illustrator のソフトを使って、細い明朝の横棒や細かな線が焼き付けた時に飛ばないように処理する必要があります」。
「これまでは豪華本や上製本の表紙や薄紙の箔押しなどの仕事が多かったのですが、最近はアーティストの CD やDVD、あるいはゲームのパッケージ印刷などで金・銀やホログラムの箔押しを施す仕事が入ってきます。光沢感や高級感を演出して付加価値を出すために箔押しが求められているようです」という。
それら箔押し加工の仕事は、音楽事務所やゲーム会社からの依頼が広告代理店を経て、箔押しができる製版会社ということで回り回って同社に行き着くとのことだ。このように仕事が入ってきているのは、箔押し加工の高い技術力があるからこその証でもある。
「ただし、仕事は細部にわたって注文されることが多く、完成するまでに結構時間を要します。弊社には熟練のスタッフによるアナログ作業で1個ずつ凸版を製作しますが、1つの版を製作した料金しかいただけません。単価を上げても利益は知れていますから、少しでも受注を増やして、いろいろな版を作っていくしかありません」と、アナログ製作と凸版製作ならではの課題も示す。
今や、凸版の製作を事業として行っている製版会社は非常に少なく、都内でも片手で数えるほどしかないと言われている。それゆえに、書籍の製本加工で凸版を使った加工を求めている顧客にとっては、なくてはならない製版会社と言えるだろう。「ますます金属凸版を製作できる企業が少なくなりましたから、その分弊社の存在価値が高まってきているのかもしれません」。
「お客様は商品のパッケージで差別化を図り、少しでも手に取って買っていただけるようにいろいろなデザインを施すわけですが、箔押加工はパッケージに輝きを与えますから、化粧品をはじめ高額な商品のパッケージに最適です。中身の商品のレベルを引き上げる要素にもなります」と、金原社長は箔押加工のメリットを話す。
今日では、消費者の心理を掴むために、箔押し加工やエンボス加工、あるいは両方を組み合わせた特殊加工などの多彩な手法が要求されている。同社はそんなニーズに応えられるアナログ技術と最新技術を持っており、顧客の商品の差別化に貢献している。
さまざまな箔押し技術を提案し、高級感を必要とする印刷物やパッケージを提供できる同社は、その技術を必要とする顧客がいる限り、受注を維持し続けるであろう。「今後はデジタル製版も進めていき、アナログ製版との棲み分けを図っていくつもりです」とのことだ。



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