有限会社高橋写真製版■「人の喜びを創造」する情報価値創造業を目指す
亜鉛凸版の製造技術を有する有限会社高橋写真製版は、アナログとデジタルの両面から事業展開している。「人の喜び創造業」の経営理念の下、SDGsにも積極的に取り組んでいる高橋健一郎社長に話を伺った。
東北で唯一亜鉛凸版の製作を請け負う
高橋社長は大学卒業後、大阪の薬品会社に就職して間もなく、同社を経営するご尊父が体調を崩されたのを機に、印刷業を手伝うことになった。「父親からの要請で戻って印刷の仕事をすることになったのですが、印刷のことは何も分かりませんでしたから、会社に入る前に他社で修行するように言われ、知り合いの伝で東京の(株)帆風さんに入社して、5年程印刷の仕事を学ばせていただきました」と、事業を継ぐまでの経緯を語る。
経営を継ぐことを前提に高橋写真製版に入社した後は、企画営業に注力する高橋社長であったが、決して順調ではなかったという。そこで社員皆で経営理念を策定するために話し合い、一丸となって変革に取り組むことにした。
「我が社は何を作っているのかと尋ねた時に、社員の一人が『人の喜びではないですか?』と言ったのがきっかけで、それに皆が賛同して『人の喜び創造業』を経営理念にしたわけです」と、社員の気持ちを反映した経営理念を策定し、心機一転、事業に邁進していった。
特筆すべきは、同社が東北地方で唯一、箔押し用の亜鉛凸版の製造技術を持って提供していることである。「学校の卒業アルバムや、お酒のラベルなどに使用する箔押しの版を作っているわけですが、亜鉛凸版の版に関しては東北と北海道で弊社だけが製作しています。昨年からはネットでも注文を受け付けるようにしたため、大阪、名古屋の都市圏だけでなく、北陸、九州など全国から注文が来るようになりました。もう亜鉛凸版を製作している会社はほとんどありませんから、弊社が受け皿になっている感じです」とのことだ。
「上製本の表紙などに付加価値を付ける際に箔押しを用いるのですが、亜鉛凸版は、他の版と比べて比較的安価で製作できるため使われることが多いのです」とのこと。もちろん亜鉛凸版だけでなく、熟練の製版技術を持つ職人が樹脂版も製作し提供している。
また、同社は製版のアナログ技術に長けているだけでなく、オフセット印刷機、オンデマンド印刷機の設備を有し印刷も内製化し、さまざまな印刷ニーズに応えている。「企画・デザインから封筒、伝票類の事務印刷、チラシ、パンフレットなど商業印刷全般を手掛けています」とのことだ。
SDGsに取り組み地域社会に貢献も
「弊社の特長をあえて言いますと、営業であればあなたに、DTPや製版であればあなたにというように、名指しで仕事を受けることが結構あり、社員の“人間力“というか、対応力が他社との差別化になっていると思っています」と、個々の社員のマンパワーが差別化の要因だと話す。
そんな同社もネットビジネスで新規開拓に乗り出した。「お客様の名前を入れて、世界に一つだけの絵本をオンデマンド印刷で作っています」と、パーソナルビジネスも始めている。
近年は、印刷の他にホームページ制作にも取り組むだけでなく、ホームページ制作・運用のためのサーバーレンタルビジネスも始めた。「某大手のサーバー会社と契約して、専用の部屋を借りてクラウドサーバーを設置し、お客様のメールやホームページのアドレスを保管・管理しています。契約者から毎月一定の収入が得られますから、今後拡大していければと考えています」と、サーバー事業に乗り出しており、今後が期待される。
現在9名体制ではあるが、設備内容や事業展開の話を聞いていると、一人当たりの労働生産性はかなり高いようだが、「社員は皆一人三役の状態にあって、さまざまな仕事をこなさざるを得ない状況です」と、自ずと多能工化になっていると話す。
また「TAKAHAN 通信」というA4判の広報紙を年4回発行。「お客様目線で企画・編集した記事や、弊社の仕事をお伝えしています。営業のコミュニケーションツールとして使っており、制作は社員が全て行っています」とのことで、社員のモチベーションの高さが窺い知れる。
同社ではSDGsにも積極的に取り組んでいるのも特徴である。一つはエコキャップ活動と言って、社員だけでなくその家族や近隣の知り合い、地元企業の協力を得てペットボトルのキャップを回収し、発展途上国のワクチン代やCO2削減に貢献している。
また、会社周辺の地域清掃活動を毎月1回30 分程度行う、地域貢献活動も実施。印刷では、植物油インキを使用した環境に配慮した印刷物の制作にも注力している。さらに先頃、貧困家庭や不登校の子どもを支援する「フードバンク」活動も開始した。回収箱を社内に設置し、賞味期限が1カ月より長く、常温保存できる食品を募るというものだ。
「地域住民の方や地元企業があってこその弊社ですから、地域に根ざした活動で弊社なりの貢献ができればと考えています」。まさに人の喜びを創造するための具体的な活動を、印刷だけでなく、多方面で実施している。
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