株式会社フォレスト■仕事は顧客の潜在ニーズに応えて先回りをする

書籍DTPを主体にCTP出力まで請け負っている株式会社フォレスト。学習参考書などのノウハウを要するDTPを得意としている。茂木徳久社長に制作状況から重要視する人材育成について話を伺った。


株式会社フォレスト

〒102-0072
東京都千代田区飯田橋4-5-13
https://www.kforest.co.jp/  

代表取締役社長
茂木 徳久氏(GC東京)

DTP新人育成では設定基準をクリアさせる

昭和26年、東京の飯田橋で創業した株式会社フォレストは、学習参考書、ビジネス書、文芸書、語学書、辞典、各種定期刊行物などの書籍のDTP専門会社である。特長は数式や欧文が混在した複雑な組版を確実にこなせて、出版社のニーズに応えられるDTPが行える点である。そのことは、得意先の出版社と長年にわたって取引が続いていることから想像がつく。
具体的には、英語、中国語、フランス語、韓国語などの外国語の検定試験用参考書、数式を使った複雑な組版を要する学習参考書などのDTPが得意分野である。そんな高度な組版技術が活かされる分野で差別化を図り、活路を見出している。
同社が最も大事にしていることは、DTPに携わる人材教育である。得意先のDTPの仕事を確実にこなせるように、若い世代に技術を伝えていく必要があるからだ。
「弊社が受注している書籍DTPは人手による専門性を要するものが多く、自動化することは困難です。だからこそ仕事に携わる人の能力が問われるので、社員教育には力を入れています」と、茂木社長は人材育成の重要性を指摘する。
本来DTPは、人手を使わずに自動化したほうが利益は出しやすいものであるが、複雑な組版技術を要する専門書などは、チラシやカタログと違って自動組版ソフトを使って効率化することはできない。ノウハウを持っている経験者でないと任せられないのである。
そのため、同社では新人の人材教育では万全を期している。中途採用にしても新卒にしても入社の際は、研修期間を設けて基準をクリアした一定の能力を有する人材を育てている。
「いきなりDTPの仕事をさせることはできません。入社1ヵ月くらいは基本となる入力作業をしてもらいます。弊社ではタッチタイピングの習得の他に、入力における誤字脱字の比率を0.3% 程度以下に、また、入力スピードも決められた速さを達成するよう指導しています」と、研修期間中にクリアすべきスキルを決めているという。
新卒に関しては、4月の入社時点である程度基準をクリアできるようにして、入社後は次の段階となるDTPの技術的な勉強に移行するという。

先読みして効率化とコストダウンを図る

「基準がクリアできるまで研修は続けます。と同時にDTPの仕事を行うためのレクチャーを始めます」と、人材教育を着実に実施し仕事に就かせている。そして、書籍DTPであれば、テキスト中心の簡単なものから始めて、経験を積ませてから数式が混在する複雑なDTP 制作へと、段階に応じてDTPの仕事をレベルアップさせている。
「出版社や書籍ごとに独自の組版ルールやレイアウトデザインが決まっていることが多いですから、まずはそれを理解し把握することがDTP 制作を行う上で重要になります。それと出版社から直しが必ず入るので、予め修正しやすいように制作方法を統一しておくことがポイントです」と、DTP制作での顧客対応のポイントを説く。
出版社からの直しを事前に察知して、先回りをしてお客様に提案することで、余分な直しをせずに済むわけである。それによって自社の仕事の効率化が図れるだけでなく、顧客もコストダウンを実現できるメリットが生まれるというのだ。
「受注した時に、お客様はどのような仕上がりを望んでいるのか。原稿の状態を吟味して、今後の作業でどのような問題が発生するのかを先読みして仕事に取り掛かるようにしています」と、トラブルが発生しないよう先を見越して、事前に対処していくことは自衛手段でもあるわけだ。
また、DTPに関しては、社員だけでなく外部スタッフとして結婚や出産で退職した元社員を在宅で雇って人材を確保しているという。経験があるスタッフは即戦力となっているようだ。
また同社は、2002年に印刷業務管理システム(MIS)を導入した。現在でもデータベース化してデータが必要になれば引き出せるようにしているとのこと。現在は(株)ムサシの「M BOOSTER」を採用し使用している。
「どの作業工程にどのくらいの時間が掛かっているのかを分析し、過去と同じような案件と比較して、作業時間が増えていれば、その原因を探り改善して作業の時短化を進めています」と、MISを有効活用し、社員一人ひとりの作業を管理し労働生産性の向上に努めている。
厳しい経済環境下ではあるが、確固たるDTP技術を持っているからこそ、顧客から厚い信頼を得ているわけである。それは、社内でDTP 技術の標準化を進めて、着実に若い世代に伝えていることが大いに関係している。プロフェッショナルとしてのDTP技術・制作のノウハウを身に付けることの大切さが窺い知れる。



学参 CTP DTP GC東京 Fellowship