株式会社ミカド■後加工を充実させ多種多様な小ロットに対応

先頃、後加工機を4台導入し、DTPから印刷、製本まで小ロット多品種の内製化を図り、ワンストップサービスを強化した株式会社ミカド。青柳恵介社長に経営の考え方について話を伺った。


株式会社ミカド

〒101-0064
東京都千代田区神田猿楽町2ー7ー7
https://mkd.jp/  

代表取締役社長
青柳 恵介氏(GCJ常務理事)

後加工機を4台導入し量産化目指す

株式会社ミカドは、今年創業90年を迎えた千代田区で老舗の印刷会社である。三代目になる青柳社長は、前工程が写植からDTPに移行する激動の時代を乗り越え、ご尊父から事業を引き継ぎ来年で20 年になる。現在はオンデマンド印刷に主軸を置きつつも、Web制作にも対応するマルチメディア事業を展開している。
先頃同社は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の交付を受けて、筋入れ・ミシン・シートカット加工をワンパスで行うホリゾン製の「SmartSlitter SMSL-100」と中綴じ製本システム「FC-P9」(丁合機接続)、それに株式会社江東錦精社の自動カット機能付きマルチラミネーター「DC-XII」を導入した。
「経営コンサルタントの方に依頼し、申請書を作成したのが今年3月で、審査を受け6月に交付されました」とのこと。
また今夏には、既に水性ニスコーターを導入して、新たに抗菌・抗ウイルス加工を施したチラシやパンフレット等の商業印刷物の制作を開始しており、今年は機械を4台も導入したことになる。それに伴い、新たな既存客への需要喚起と新しい市場の開拓に意欲を示している。
青柳社長は「以前から後加工、製本加工はコンパクトサイズながら機械を保有していて仕事を請け負っていましたが、今回、小ロット物とはいえ、オンデマンド印刷からの量産化を図っていくために、ものづくり補助金を活用してバージョンアップした後加工機を3台揃えたわけです。デザイン、DTP制作から製本加工まで、お客様の印刷に関する困りごとをワンストップサービスで支援していくことに注力していきます。オンデマンド印刷からの後工程を内製化することで、痒いところに手が届く仕事を請け負ってお客様の細かなニーズに応えていくつもりです」と、後加工機を強化したことで、新たな経営方針で臨むとのことだ。
「小回りの利くビジネスで、お客様の多種多様なさまざまな商業印刷を扱っているわけですが、小ロットのためどうしても単価の安い仕事ばかりになってしまいます。後加工機を揃えたことで、今後は付加価値・収益性の高い仕事を受けていけるよう新規開拓を目指していきます」

営業力を強化するツールで見える化を

オンデマンド印刷機は6年前に導入した「Versant2100 Press」を使用しているが、品質的には問題なくまだまだ使えるとのことで、新台への切替えは来年度以降になる見通しである。またオフセット印刷のデータ制作も受注して、製版・印刷は同業者の仲間に外注に出して対応しているという。
今では紙だけでなくスマートフォンやタブレットなどの端末からデジタルデータで出力するマルチメディア時代ということを意識して、同社では印刷物のアウトプットに付加価値を提供するために、電子ブックの作成をはじめ、QRオンデマンドコードやARの利活用、WordPressを使ったWebサイト制作など、さまざまなデジタルツールを使ったマルチメディア展開を図っているのも特徴である。
青柳社長は、個人ではFacebookで情報発信を毎日欠かさず続けていて組合内では有名であるが、会社でもクラウドサーバーの利用、チャットツールの活用などクラウド化やデジタル化を熱心に進めている。
そんな中、このほど、営業支援ツールであるSansanの法人向けクラウド名刺管理サービスを導入した。テキストや画像データを人物に紐付けてデータベース化し、営業における顧客とのやり取りや関係者間の情報共有など盛りだくさんの機能が備わっているツールである。
「結局のところ営業力をつけることが重要であり、そのためにはスタッフの仕事の状況が把握でき、社内で顧客情報を共有化することが不可欠です。個々のスタッフは能力があるのですが、不在や休みの際は、他のスタッフが代わりを務めることが困難でした。それは担当者が顧客情報を抱え込んでしまうという属人的な営業になっていて『見える化』 ができていなかったのが原因でした。お客様の情報を共有し 『見える化』 を進めていくことで、お客様の担当者が代わってもスムーズに引き継ぎできるようになり、お客様からの信頼感も一層得られるのではないかと考えています」と、営業支援ツール導入で営業力の強化に乗り出したと話す。
導入に当たっては社員から反発もあったが、青柳社長は営業力を強化するにはデジタルツールを活用して情報共有し、顧客情報や案件の進捗、新規開拓状況を管理することが不可欠だと判断し、導入の必要性を訴えたことで社員が納得し導入することができたという。
やはり新しいツールを導入し実際に活用していくには、ボトムアップもさることながら、経営者が自ら必要性を感じてトップダウンで進めていかなければ、デジタル化を社内で構築させるのは難しいのかもしれない。しかし、同社の場合は青柳社長自身が社内で最もインターネットやツールに精通していることもあり、その牽引力を発揮して社員を導いているのが見て取れる。
今後事業がどのように展開され発展していくのか楽しみである。



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