近代プロセス株式会社■独自の高精細スキャニングで市場開拓に注力

蓄積した製版技術を駆使して顧客のニーズに応えている近代プロセス株式会社。高精細の大型スキャナーを導入し、高付加価値の印刷・デザインを提供している。その取り組みを中心に話を伺った。


近代プロセス株式会社

〒114-0014
東京都北区田端3-9-5
https://www.kindaiprocess.co.jp/  

代表取締役
岡野 義雄氏(GC東京)

さまざまな素材を高解像で立体的に撮影する

同社は、DTP から印刷、加工・配送までワンストップで事業を展開しているが、プロセスという社名が示すように中核事業は、あくまでも製版である。特に高解像度のスキャニング、色調の再現、色補正技術など、製版技術には定評がある。
得意先の多くは印刷会社の同業者ということもあって、製版の品質管理には特に注力し、日々品質の向上に努めている。プルーフについては、オフセット印刷機による本紙校正、平台校正機、インクジェットプリンター、カラーレーザープリンターと、顧客の多様なニーズに対応している。
そんな同社は 2019 年 2 月に、高精細のスキャニング市場の開拓を目指すために、ニューリー株式会社の「SCAMERA-FACE」を導入した。コロナ禍で思うような営業ができていなかったが、業種ごとに提案書を作成し、広報宣伝に力を入れていく方針を打ち出している。
「『SCAMERA-FACE』はさまざまな素材の立体表現を高精細にスキャニングできます。絵画ですと、スキャニングし色補正をかけて高解像度のデジタルプリンターで出力すれば、ジークレー版画を制作することもできます。このスキャメラを同業者の方に使っていただくだけでなく、広告・デザイン業界、SP・販促業界、アート・文化財業界、建材製造業界などさまざまな業界や、美大やデザイン専門学校の学生さんなどにも利用していただけるようアプローチしていく予定です。実際にスキャニングしたものを見ていただくと、その品質のリアリティさを感じてもらえるはずです」と、岡野社長はさまざまな用途に向けて訴求していくと述べた。
同製品はマルチフォーカス方式で凹凸のある原稿を光学解像度1,090dpiでスキャニングし、画質、被写界深度は従来機を上回っており、多彩な用途に活用できるスキャナである。営業次第で需要を喚起できそうであるが、まずはこのスキャメラの高画質性を周知することが大事だとし、スキャニングのみであるが初回限定の無料お試しを行っている。

ジークレー版画の制作やアーカイブに最適

チーフディレクターの鳥飼義行氏は「弊社オリジナルのスライド式テーブルを設けて、原稿サイズをA0サイズまで撮影可能にしました。本来の最大読取有効サイズは700mm×1,000mmですが、スライドさせて原稿を水平移動することが可能になり、2回に分けて撮影した後でPhotoshopなどの専用ソフトで合成すれば、最大1,300mm×1,000mmまで撮影することができるようになりました」と、カスタマイズした設計になっている。
実は同製品を導入する際に、元々備わっていた原稿回転台では読取サイズが小さいということで、原稿回転台の上に前述のスライド式テーブルをメーカーに提案したという。
さらに、「お客様の中には、金色や銀色をはっきりと撮影したいというニーズがあるのですが、通常のスキャニングですと、写り込みが発生して金箔や銀箔を施した熨斗袋や蛍光色で描かれた絵画の色が黒くなってしまうわけです。どこを改良し撮影すれば色を再現できるかは経験から分かっていましたから、私からメーカーさんに改良点を提案させてもらいました。それで格段に色の再現性が改善された製品にカスタマイズできたわけです」と、鳥飼氏からの提案で実現できた市場で唯一のオリジナルスキャメラだと話す。
また、鳥飼氏は機能について「従来のデジタルカメラと違って、同機は対象物に対してカメラが近接して15mm幅ぐらいで移動しながら撮影しますから、撮影スピードはどうしても遅くなります。しかし、テレセントリックレンズを使用し、フォーカスを変更することで最大 30mmまでピントを合わせたスキャニングが可能になりました。それで歪みが発生せず、隅々までしっかりとピントが合った撮影が行えるようになりました」と、最大 30mmの被写界深度と独自のレンズがもたらす優位性について説明する。その機能によって額縁が 30mm以下であれば、額縁ごと絵画を撮影することができるほか、料理もそのまま撮影できるため、立体的でよりリアルな撮影が可能となり、多岐にわたって使用できるのが特長である。
今後の課題について岡野社長は、「このスキャメラのメリットを分かっていただき、多くの方々に利用してもらうための営業をどうすればよいのか。これから各業界の企業はじめ、団体、学校などにスキャニングの特長を伝えていく予定です。一度使っていただいたお客様は一様に、その高画質性に驚かれます。デジタルアーカイブとして、また付加価値の高い印刷・販促物として使っていただければと思っています」と、同機によるスキャニングの市場開拓に期待をかけている。



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