ビケングラフィック株式会社■ECサイトで自社商品を販売する新事業を開始
1984年の設立以来、製版会社として技術を磨き、顧客のニーズに応えてきたビケングラフィック株式会社。二代目となり跡を引き継いだ小倉健社長に事業承継から新事業に関することまで話を伺った。
設備を絞ってアナログからデジタルに移行
今年5月、GC 東京に新規加入したビケングラフィック株式会社は、写真製版を主体に、企画、デザイン、色校正、印刷、出版、販促物の制作を事業展開している。
同社を率いる二代目の小倉社長は、大学を出てIT会社に就 職し、システムプログラマーとしてシステム開発に携わった。しかし、他社に勤務していても父親が築いた会社を継ぐかどうかの選択を、いずれは行わなければならないことは分かっていたという。「1年ほど経った頃、父親から会社を継ぐ意志があるのであれば継いでほしいという意向を受けて、話し合った末に跡を継ぐことを決断しました。それで IT 会社を1年半で退職し、弊社に入る前に印刷のことを学ぼうと、修行のつもりでオフ輪の印刷会社を探して途中入社したのです。そして、1年間勤務した後、2007年に弊社に入社しました」と、社長は同社に入るまでの経緯を話す。
同社は 2002年に、美健製版株式会社からビケングラフィック株式会社に社名変更してからデジタル化を進め、それまで 保有していた CTPやフィルムセッター、スキャナなどの製版関連設備を順次外に出していったという。
「機械を抱えて制作しても、作業効率を考えたり、低料金を強いられたりすると、機械を保有するメリットがなくなってくるわけです。それで思い切って機械を出して協力会社に外注することにしました。逆に言えば、協力会社の皆さんが安価で引き受けていただけたので、設備を維持していくコストを考えますと、保有する意義もないという判断になりました」と、外注を使うことで固定費の削減、得意業務を集中化していった。
現在はUVインクジェットプリンター2 台の他に、オンデマンド印刷機、カッティングプロッター、色校正機としてのインクジェットプリンターなど多用する機械のみを保有し、MacによるDTPで企画・デザインを主体とするカラーグラフィック制作に注力している。
「フラットベッドのUVインクジェットプリンターはかなり高画質で使い勝手があります。アクリル板や厚手の紙を印刷し、販促 POP や什器製作に使用しています」とのことだ。
得意先とコラボし独自商品の販売に乗り出す
同社の得意とするものは、1つはアナログ時代から培った製版技術を活かして、高度な要求に応える色調補正や画像修正が挙げられる。また、パッケージや什器の設計・デザインも顧客のイメージやコンセプトを汲んで制作し信頼を得ている。
「顧客は広告代理店やパッケージ制作会社、紙器・什器の加工会社、アセンブリも行う総合印刷会社、販促物を作っている会社などからの依頼が多いです。具体的にはゴルフ関連、化粧品、日用品、雑貨などの販促物の制作に携わっています。また、地元の蔵前には玩具メーカーが多いですから、玩具のパッケージ制作なども受注しています」。
コロナ禍ではあるが、景気の見通しについては、「オリンピックが終わり、広告代理店を通じて新商品や新しい販促物の制作が動き始めてきているため、秋口から業績が回復してくるのではないかと期待しています」とのこと。
また同 社 は、EC 事 業 部 を設けEC サイトを立ち上げて自社商品を販売する新事業に乗り出した。現在、商品を企画している段階で、一つひとつサイトにアップして販売していくという。ECサイトの仕組みは市販のものを導入するとのことだが、「商品は BtoC 向けで、全て社内でアイデアを出して企画・制作し、オリジナル商品を販売します」とのことだ。
商品について尋ねたところ、「既にいくつか商品案は出てきていて、後はサンプル品を作って撮影する段階です。お客様の中に複雑な紙製品の展開図などを具現化してくれる設計会社がいますから、そこと協力体制を築いて商品開発を進めていくつもりです」と、紙製のオリジナル商品案に触れた。
「設計会社はお客様であり、協力会社でもあるという関係ですから、弊社から相談もできますし、お客様の事業の特徴も知っていますから、設計の仕事が入ってきた時に依頼しやすいこともあります。連携が取りやすいのがメリットです」と、顧客とWin-Win の関係を築いて新事業への意欲を示す。
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