株式会社栄光堂写真製版所■ニッチ分野の顧客の要望に応えて信頼を得る
紙以外の印刷を得意とし、ニッチ分野で事業展開している株式会社栄光堂写真製版所。既存客を中心にスクリーン印刷を必要とする顧客のニーズに応え続けている。
株式会社栄光堂写真製版所
〒108-0073 東京都港区三田4-19-19
https://www.minato-ala.net/s_company2/company/0634.html
代表取締役
宮島 栄一氏(GC東京)
各種製版・ネームプレートの専門会社
株式会社栄光堂写真製版所は、各種製版、ラベル印刷、スクリーン印刷等の特殊製版・印刷を得意としており、1939 年に港区泉岳寺で創業して今年で 82 年を迎えている。紙以外の材質への印刷を事業にし各種製版、ネームプレート製作の専門会社として確固たる地位を築いてきた。
宮島社長は「ソニー株式会社の前身に当たる東京通信工業株式会社の創業者である井深大氏や盛田昭夫氏から、直接機械のネームプレート用写真の製作を受注したこともあったと聞いています」と、述懐する。
40 年ほど前に建てた自社ビルは玄関までのアプローチ階段が当時のモダンさを醸し出しており、古さを感じさせない。現在は上階にピアノ音楽教室と学習塾がテナントとして入っている。
「印刷業界の中にあっても弊社の仕事はニッチな分野になりますから、固定客を作るためにお客様と強い繋がりを持つようにしてきました。ですから、営業は既存のお客様を中心に展開しています」とのことだ。
コロナ禍は同社の営業にどんな影響をもたらしているのか。「お客様はリモートワークをされていない企業がほとんどのため、問題なく訪問営業をさせてもらっています。お陰様で売上はさほど落ちずに維持できています」と、訪問営業ができる強みが活かされているようだ。
ところで、宮島社長は昨年 4月にお父様に代わって社長に就任したとのこと。大学を出て別の業界の会社に就職し3 年半ほど勤めた後、同社に入ったという。「学生時代から将来は会社を継ぐことになるだろうと思っていました」。ご祖父様が始められた同社の三代目となったわけであるが、学生時代に既に使命感を持ち将来を見据えていたわけである。
スクリーン印刷はモノが作られる限り需要がある
「ステンレスの板に印刷することはデジタル印刷機にはできません。そんな紙以外の素材に印刷するスクリーン印刷のニーズは、これからも必ずあり続けるはずです」と、デジタル化が進んでも、スクリーン印刷の需要は決して色褪せないと話す。
地域に根ざした経営を営んできたことで、昔からの固定客がついている。「何十年も前から仕事をいただけるお客様が結構います。むしろ、そういうお客様で成り立っているのが弊社です。要望にお応えできるよう確固たる技術で仕事に取り組んできましたから、今でも発注していただいているのだと思います」と、顧客から信頼される仕事を続けてきた。
「スクリーン印刷はどんなものでも印刷できますから、モノが作られるたびに必要とされます。同業の製版会社が廃業されるのは寂しいですが、それを機に弊社に仕事を発注されるお客様が少なくありません。それは既存のお客様の口伝えによるところが結構あるかもしれません」と、顧客が顧客を紹介するという状況もあるようだ。
仕事で宮島社長自らも使用しているダイヤミック株式会社の完全プロセスレス「Thermal Digiplater TDP459Ⅱ」は卓上型で、直接感熱による完全明室で作業できるのが特長だ。
「7年ほど前に導入したのですが、日々の仕事によく使っています。ただし最大記録幅が 360mmなので、それ以上のサイズのものが出力できないのが難点です。ダイヤミックでは菊半裁サイズ幅までカバーできる機械を発売しているので、それを新たに導入しようと考えています」と、新しい製版機の導入に意欲を示している。
また、最近になって手書きの原稿を持ち込まれた顧客の図面を、大型カメラで撮影して模型機関車の部品のエッチング原版として納めたこともある。「未だに手書きの原稿を持ち込まれるお客様もいらっしゃいます」とのことだ。
ところで、驚いたことに宮島社長は日々の出力データを制作するのに25 年は経過していると思われる「PowerMacintosh7500/100」を 今でも使っている。「扱っているデータが軽いですから、このMacで十分なんです」と答える表情には、モノを大切にする心と機械への愛着が感じられ、そこに職人気質が見て取れる。
また同社では、40 年以上は経過している製版カメラやスクリーン印刷機を保有し実際の仕事に使用しているが、現代でもそれらの機械を使って仕事ができることに、写真製版やスクリーン印刷の確立された技術は不変だということに気づかされ感慨深いものがある。
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